極東軍管区
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極東軍管区(きょくとうぐんかんく、Дальневосточный военный округ;略称ДВО)は、ソ連軍、ロシア連邦軍のロシア極東地域における軍事行政単位、統合部隊。冷戦時代は、対日戦、対中国戦を想定していた。現在、カムチャッカ地域は、北東軍集団として、ロシア海軍太平洋艦隊の作戦統制下に入っている。軍管区本部は、ハバロフスクに位置する。
軍管区の多くの部隊は、本部と保障部隊のみから成る。管区と保管基地には、戦車×3,900両、装甲車両×6,000両、火砲×3,000門、ヘリ×85機が装備されている。
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[編集] 歴史
[編集] 戦前
極東軍管区の歴史の起点は、ウスリースク戦線の赤軍大隊がカウリスキエ高地、シュマコフカ及びスパスク地区において白衛軍を撃破した1918年7月31日と考えられている。しかし、白衛軍は主導権を奪回し、1918年8月、ザバイカル地区で攻勢を開始した。年末までに、ザバイカルと極東のソビエト権力が打倒された。1918年9月から1920年3月まで、日米干渉軍に対してゲリラ戦が展開された。
1920年2月、ロシア共産党(ボリシェヴィキ党)中央委員会とロシア・ソビエト連邦社会主義共和国人民委員会議の決定により、ザバイカル州、アムール州、沿海州、サハリン州、カムチャッカ州と東清鉄道の収用地から成る極東共和国が緩衝国として建国された。同時に、赤軍に準じた人民革命軍(народно-революционная армия;略称НРА)が組織された。
1922年秋、人民革命軍は、白衛軍のコサック部隊を掃討し、日本のシベリア出兵に対してゲリラ戦を展開し続けた。1922年11月16日、全露中央執行委員会幹部会は、極東をソビエト・ロシアの一部であると宣言した。人民革命軍は、第5赤旗軍(本部:チタ)に改称されたが、1924年6月、第5軍は解散され、所属部隊はシベリア軍管区に編入された。
東清鉄道に対する中国側の挑発と関連して、1929年、極東の部隊は、シベリア軍管区の編成から外され、独立部隊となった。1929年8月6日、ソ連革命軍事会議令により、特別極東軍(Особая Дальневосточная армия;略称ОДВА)が創設された。1930年1月1日、ソ連中央執行委員会決定により、特別極東軍に赤旗勲章が授与され、事後、特別赤旗極東軍(Особая Краснознаменная Дальневосточная армия;ОКДВА)と称されるようになった。1935年5月17日、特別赤旗極東軍に基づき極東軍管区が創設されたが、同年6月2日には再び特別赤旗極東軍に改編された。
1938年7月1日、日本との軍事的緊張の増大と関連して、特別赤旗極東軍は極東戦線(Дальневосточный фронт)に改編された。日本軍との間では、1938年に張鼓峰事件、1939年にノモンハン事件が発生した。
[編集] 第2次世界大戦
第二次世界大戦時、極東戦線は、部隊編成・兵員訓練のための後背地として機能し、極東から送られた部隊は、モスクワの防衛等において活躍した。
1945年春のドイツ降伏後、第1極東戦線と第2極東戦線が編成され、同年8月8日のソ連対日宣戦布告と共に、満州、南樺太、千島列島へ侵攻した。
[編集] 戦後
終戦後、再編成が行われ、極東戦線の代わりに、ザバイカル・アムール軍管区(本部:ハバロフスク)、沿海軍管区(ウスリースク)、極東軍管区(ユジノサハリンスク)の3個軍管区が編成された。
1947年5月、ザバイカル・アムール軍管区局に基づき、極東総司令官局(управление главнокомандующего войсками Дальнего Востока;ハバロフスク)が編成された。総司令官局には、極東、沿海及びザバイカル軍管区、並びに太平洋艦隊とアムール小艦隊が従属した。
1953年4月23日、極東総司令官局に基づき極東軍管区の再編が行われ、旧極東・旧沿海軍管区は軍級部隊となり、ザバイカル軍管区が独立した。
1967年6月17日、ソ連最高会議幹部会は、旧特別赤旗極東軍の赤旗勲章を極東軍管区に継承することを決定し、同年8月10日、管区軍旗に勲章が授与された。
1995年からチェチェン共和国に部隊を派遣。
[編集] 編成
極東軍管区は、2個軍、1個軍団と直轄部隊から成り、空軍の1個航空軍、鉄道軍の1個鉄道軍団が配属されている。
[編集] 第5軍
ウスリースクに軍本部を置く。
- 第81自動車化狙撃師団:ヴィキン
- 第121自動車化狙撃師団:シビルツェヴォ
- 第129機関銃・砲兵師団:バラバシュ
- 第127機関銃・砲兵師団:セルゲーエフカ
- 第130機関銃・砲兵師団:レソザヴォーツク
- 第20ロケット旅団:スパスク・ダーリニー。トーチカ装備
- 第305砲兵旅団:ポクロフカ。2A36装備。
- 第719ロケット連隊:ポクロフカ。ウラガン装備。解散?
- 第958対戦車砲連隊:ポクロフカ。シュトゥルム-S装備
- 砲兵偵察大隊:ポクロフカ
- 第5506保管基地:クラースヌイ・クート
- 第58工兵連隊:ラズドリノエ
- 第650架橋工兵連隊:ダリニェレチェンスク
- 第86独立通信連隊:ウスリースク
- 第94独立電波技術大隊:ウスリースク
- 第317独立電波偵察連隊:セルゲーエフカ
- 第612独立電波偵察連隊:ウスリースク
- 第304独立電波電子戦連隊:ポクロフカ
[編集] 第35軍
ベロゴルスクに軍本部を置く。
- 第21自動車化狙撃師団:ベロゴルスク
- 第270自動車化狙撃師団:ハバロフスク
- 第128機関銃・砲兵師団:バブストヴォ
- 第165砲兵旅団:ベロゴルスク。D-20
- ロケット連隊:ベロゴルスク
- 対戦車砲連隊:ベロゴルスク。シュトゥルム-S装備
- 砲兵偵察大隊:ベロゴルスク
- 保管基地:ライチヒンスク
- 工兵連隊:ベレゾフカ
- 第161独立通信連隊:ベロゴルスク
- 第1719独立通信大隊:ベロゴルスク
- 第156独立電波技術連隊:ベロゴルスク
- 第1889独立電波技術連隊:ベロゴルスク
- 独立電波偵察大隊:ベロゴルスク
- 兵站旅団:アルハラ
[編集] 第68軍団
ユジノサハリンスクに軍団本部を置く。
- 第33自動車化狙撃師団:ホムトヴォ
- 第18機関銃・砲兵師団:択捉島、国後島
- 保管基地:レオニドヴォ、ポロナイスク
- 工兵連隊:ユジノ・サハリンスク
- 第166独立通信連隊:ユジノ・サハリンスク
- 第553独立通信大隊:ユジノ・サハリンスク
[編集] 軍管区直轄部隊
- 第83特殊任務旅団:ウスリースク。スペツナズ
- 第14特殊任務旅団:ウスリースク。スペツナズ
- 第107ロケット旅団:ビロビジャン。トーチカ装備
- 第203高射ミサイル旅団:ビロビジャン。S-300V装備
- 第109高射ミサイル旅団:スレドネベーラヤ。ブーク装備
- 砲兵旅団:ウスリースク。D-20装備
- 第338ロケット旅団:ノヴォシソエフカ。グラード×54基、ウラガン×27基装備
- ロケット旅団:ビキン。グラード×48基装備
- 第129独立訓練センター:ハバロフスク
- 保管基地:クラスノズナメンスク。戦車を保管
- 保管基地:ノーヴォエ
- 工兵旅団:ハバロフスク
- 第3架橋工兵連隊:ハバロフスク
- 第8独立通信旅団:ハバロフスク
- 第104独立通信旅団:クニャゼ・ヴォルコンスキー
- 第105独立通信旅団:ベロゴルスク
- 第106独立通信旅団:ダリネレチェンスク
- 第8独立通信連隊:ガロフカ
- 第158独立訓練通信連隊:ハバロフスク
- 第104独立通信大隊:ハバロフスク
- 第76独立電波技術旅団:コムソモリスク
- 第38独立電波技術連隊:ハバロフスク
- 第92独立電波偵察旅団:アルセニエフ
- 第16放射線・化学・生物学防護旅団:ガルキノ
[編集] 他軍種
[編集] 準軍隊
戦時には、軍管区内に駐屯する他省庁の軍事組織も作戦統制下に置く。
[編集] 歴代司令官
職名 | 氏名 | 階級 | 在任期間 | 出身校 | 前職 |
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司令官 | ユーリー・ヤクボフ | 上級大将 | 1999.8- | ハリコフ親衛戦車学校 | 極東軍管区第一副司令官 |