李さん一家
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短編の多い作者の代表作である『ねじ式』や『紅い花』、『無能の人』の様に名前が知られている訳ではないが、最後の終り方と台詞は作家意識を刺激するらしく数限りない漫画家が作品の中で模倣していることで知られる。
[編集] あらすじ
主人公の家の二階に在日朝鮮人と思われる李さん一家が引っ越してきて日常的に起こる事件の描写である。『ねじ式』のように不条理な話が進行するわけではなく、理解の範囲内の出来事である。
[編集] 続編
1970年に、作者は双葉社・刊「現代コミック」創刊号に続編の『蟹』を掲載している。続編として新たに構想されたものではなく、雑誌の創刊が急に決まったために、『李さん一家』構想段階で使用しなかったアイディアを漫画化したものと作者は語っている。突然主人公の家の縁の下に蟹が住みついたことがもたらす小さな騒動を、前作以上に淡々とした日常の中に描いている。 前作ではわけのわからない闖入者として描かれていた李さんが、こちらでは蟹の生態に関して独特の理論を展開して主人公を唸らせるという、すっかり主人公の生活の師と化しているところに、両作品の間に『紅い花』や『ねじ式』を通過した作者の境地が垣間見られるようにも思われる。 実際、この直後に描かれた『やなぎ屋主人』以降、作者は夢と不安と自己否定の方向へと進むことになり、そういう意味でも『李さん一家』の続編として描かれた『蟹』は、井伏鱒二の文学や旅から影響を受けたユーモラスな作風に別れを告げる作品といえる。
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