整備文
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整備文(せいびぶん)は、カナダ人イアン・アーシー(以下「アーシー」という。)がその著書『政・官・財(おえらがた)の日本語塾』(1996年中央公論社刊、以下「本書」という。)の中で提唱した文章の概念であり、霞が関などで用いられる官公庁文書や、法律・条例等に特有の表現スタイルで書かれた文章を批判的に捉えたものである。
「整備」をはじめとする限られた漢語を多用するため、堅苦しく抽象的であり、まわりくどい。ために一般庶民は読む気を失うことが多く、国民の政治的無関心を目的として使用されているのではないかとアーシーは疑っている。俗に「霞が関ことば」または「お役所言葉」とも呼称される。
アーシーが「整備文」の概念に到達したのは、本書によれば「何々候」というかたちで「候(そうろう)」を繰り返す「候文」(江戸時代に多用された)からの類推であるとされる。
[編集] 整備文の特徴
- あらゆる行為を「整備」と表現する。(例:道路を修繕する=道路整備、パソコンを購入する=パソコンの整備、事業を推進する=事業整備)
- 調査する、考えることなどの行為を指して「検討する」を愛用する。「配慮する」「考慮する」などと同様に否定動詞的に用いられ、検討もしくは考慮するだけで何もしないことを意味することもある。
- あらゆる建造物・場所等を「施設」と表現する。
- 「…性」「…化」といった、言葉の抽象性を高める接尾語を愛用する。(例:活性化、充実化、低廉性)
- 接続助詞には「や」「と」などの代わりに「又は」「及び」「並びに」などを用いて音節を増やすことがある。
- 「が」「に」「で」といった格助詞の代わりに「については」「を中心として」という表現を使うこともある。
- 「ノーマライゼーション」「アカウンタビリティ」といった多音節のカタカナ語を所々に使用する。
- 列挙・例示の際には必ず「等」をつけ、例示したもの以外のものを幅広く対象に含めることができるように配慮する。
[編集] 参考文献
- 『政・官・財(おえらがた)の日本語塾』(イアン・アーシー、中央公論社)