候文
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候文(そうろうぶん)は日本語のうち中世から近代にかけて用いられた文語の文体の1つであり、文末に丁寧の助動詞「候」(そうろう、そろ、歴史的仮名遣いではサウラフ)を置くことを特徴とする。
「候」(古くはサモラフ、サブラフなど)は元来、貴人の傍に仕える意の動詞であったが(「さむらい」もこれに由来)、平安時代に「居り」の謙譲語、さらに丁寧を表す補助動詞あるいは助動詞に転じた。平安末期には現代語の「ですます体」のように口語で盛んに用いられたらしい(平家物語の語りの部分に多くの用例がある)。
鎌倉時代には文章としても書簡などに用いられ文語文体として確立した。室町時代には謡曲(能)の語りの文体としても用いられた。この頃には口語としては廃れたらしい(ただし「です」は「にて候」に由来するとされる)が、文語としてはさらに普及し、江戸時代には公文書などにもよく用いられた。明治時代にも書簡体として用いられたが、言文一致体の普及や古文教育で取り上げられなかったことなどから廃れた。