指定校推薦
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指定校推薦(していこうすいせん)とは推薦入学の方法の1つであり、日本ではそのほとんどが私立大学で実施されている。大学・短大・専門学校等が、指定した高等学校に対し推薦枠を与え、高等学校内で希望する生徒に対し学内選抜を行い、大学は選抜されたその生徒に対して試験を行い、合否を判定する入学試験の制度の一つ。公募推薦に比べて、学校間(高等学校と各種学校間)同士に信頼関係がある上での土台がある上で成り立っているのが特徴。現状としては、指定校推薦は学校からの推薦を受ければ、ほぼ合格であるために付属校からの合格者と同様、一般入試者と比べ学力が劣ることが多い。そのため、大学側は入学前の春休み等に課題を出すことがある。
[編集] 推薦条件
大学や短大、専門学校は、それぞれ指定先の高等学校に対し推薦基準を示す。一般的な推薦基準は評定平均条件を課すものがあり、各高等学校の生徒が一定の基準以上であるかを条件として受験者を絞り込む。一般には、1学年の総合評定平均・2学年の総合評定平均・3学年1学期の総合評定平均の総合平均を出し、それが一定の評定基準だった場合、条件が満たされる。また、特定の科目の評定平均の条件を課す例もある。また出席日数などの基準を設ける大学もある。
指定された高等学校側は、これらの条件を満たした生徒と進路希望を確認し、学内会議を重ねて、推薦する生徒を決定する。指定校推薦での受験は原則的に専願受験になるため、試験に落ちた場合やり直しが効かず、大学進学を希望する場合には一般入試を受けることになる。最終的に推薦された生徒は、各種学校(大学・短大・専門学校)での独自試験(書類審査や面接など)によって合否が判定される。書類に特別な不備があったり(出席日数が足りないなど)、面接の態度が悪かったり受験しなかった場合は、ごく稀に不合格となる場合があるが、普通に面接を受ければ合格はほぼ確実であるのが一般的である。
公立大学の場合、その地域内の高等学校を指定校とする推薦入試を実施することがあるが、これは私立大学等の指定校推薦入試と違い必ずしも合格が保証されてはいない。そのため、これはその地域に住む高校生の「地域枠」ととらえることもできる。
[編集] その他
- 大学のレベルに対する指定校推薦枠を与える高校のレベルは大体比例しており、レベルの高い大学がレベルの低い高校に指定校推薦枠を与えることはほとんどない。以前は推薦基準が非常に高く、一般入試で合格するよりも難しいとも言われていたが、1990年代半ば以降は少子化の影響で指定校推薦の形態に変化が生じており、定員割れの危惧を受けている大学はレベルの高い高校から低い高校まで幅広く指定校推薦枠を設けている。一般入試では定員の学生を集められないために指定校推薦を使って学生を手早く集めるのが目的であるが、一般入試を通らないためレベルの低い学生が集まると危惧される一因となっている。
- 大学内では追跡調査を行い、途中で中退や学業成績の不振、などの事態があった場合などは次年度からはその高校への指定校推薦を取り下げる場合があるため、指定校推薦で大学に進学する場合は入学後に辞めないことを前提としなければならない。従って途中で中退したり、学業不振に陥ったりした場合、高校の大学進学実績を上げにくくなり、高校側、特にその学校を狙おうとする後輩たちに迷惑がかかるとされている。しかし大学入学後の進路は学生自身の判断に委ねられるので、直接学生本人が不利になることはない。
- 一般入試を通らないため、基礎学力が身に付いていない学生が入学してくる危惧がある。そのため大学入学するまで基礎学力を徹底させないと、特に理系大学や理工系大学の場合、基礎科目の単位取得に影響を及ぼす場合がある。
- 工業高等学校や商業高等学校などの職業高校では一般受験対策用の普通教科に属する科目の授業数が少ないので、一般入試による大学受験は不利であると考えられている。そのため積極的に指定校推薦による大学進学を強化している。これゆえに普通科の高校に比べて、自校に定員を設けるよう私立大学に依頼したり、私立大学との関係を強化するなどの対策に熱心である。
- 北陸大学は、国内すべての全日制高校・高等専門学校5238校を2007年度から指定校に指定した。