押し屋
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押し屋(おしや)とは、鉄道の朝夕のラッシュ時に、列車の扉に挟まりかかった人を車内に押し込む人、およびその職業のことである。
新宿駅で初導入された当時は旅客整理係と呼ばれ、学生アルバイトが中心であった[要出典]。駅員が行う場合と、アルバイトが行う場合がある。多くの場合、駅のホームの端(線路側)に立ち、乗客の誘導や安全確認も行う。京王井の頭線のように、特定の車両に乗客が集中しその車両だけがラッシュ時並の混雑となる場合も、駅員が「押し屋」も兼ねて配置されることもある。
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[編集] 押し屋の業務手順
- 列車の入線前には安全確認を行う。
- 列車が到着すると乗客の乗り降りを見守る。
- 発車直前になると乗り切れない客を空いている扉に誘導する。
- 列車の扉が閉まると、扉に乗客の体や荷物が挟まっていないかを確認する。
- もし挟まっていたら押しに行く。
- 自分の担当区域が終わったら別の区域に手伝いに行く。このとき、かばん、特にリュックサックの紐が扉に挟まり、その側の扉が当分は開かないためなかなか降りられないというケースがあるので、押し屋たちは特に気をつけるところである。無理に乗ろうとしている客を剥ぎ取る「剥ぎ取り屋」も兼ねている。
- 扉を閉めることができたあと、旗を揚げるか、手を挙げるか、ランプをあげるかの方法で車掌に知らせる。車掌は運転士に発車するよう合図を送る。
扉を閉めることに困難をともなうのは乗車率が200%を越えたあたりからであるが、乗車率が120%程度になった時点でホームの整理をかねて押し屋が配置されることが多い。列車は混んでいなくても始発電車待ちの乗客が多くホームが混雑する場合や、列車の発車ホームのパターンが複雑であったり変更があったりする時は、押し屋ではなく「ホーム整理員」として駅員が配置される。
[編集] 放送
乗客を捌くために押し屋のうち1人が放送を行う。この放送には、(1)遅延防止、(2)積み残しの減少、といった効果がある。様々な例を以下に挙げる。あくまでも一例で、駅によって多種多様である。なお、一日中、客数が極端に多い駅では、昼間にも駅員がホームに立ち、案内放送を行っている。
- 電車の到着前に分散乗車の呼びかけ
- 「お客様にご案内いたします。次の急行電車は大変混雑いたします。お時間に余裕のあるお客様は、少しでも空いております各駅停車をご利用下さい。また、前寄りの車両は比較的空いております。前寄りの車両をご利用願います。」
- 「お客様にお知らせいたします。今度参ります急行電車は、混雑のため、ただいま3分ほどの遅れをもちまして運転しております。当駅への到着にも遅れが見込まれます。通勤、通学でお急ぎのところ、お客様には大変ご迷惑をおかけしております。申し訳ございません。」
- 「今度の電車は、35分発、急行の××行きございますが、この電車の編成中程、4~6号車付近は、満員の状態で到着いたします。電車が到着いたしましても、ご乗車いただけないことがございます。恐れ入りますが、前より、後ろ寄りにお移り下さい。」
- 電車の入線時にスムーズな乗降の呼びかけ
- 「電車が入っております。白線の内側をお歩き下さい。…お待たせいたしました。ただいま2番線に到着の電車は急行、××××行きです。この電車は大変混雑しての到着となります。降りる方のために、扉の前は広く開けてお待ち下さい。電車の一番後ろの車両は女性専用車です。皆様のご理解、ご協力をお願いいたします。」
- 電車の扉が開いてから分散乗車の呼びかけ
- 「おはようございます。○○、○○に到着です。~~線はお乗換えです。お降りのお客様がお済みの扉より、前の方に続いて車内中程にお進みください。2番線に停車中の電車は、急行、××××ゆきです。当駅を出ますと、次は△△に停車いたします。☆☆には止まりません。…列後方のお客様、左右をご覧になり、少しでも空いている扉にお回り下さい。」
- 発車ベルにあわせて
- 「無理をなさらず、後続の電車をご利用下さい。急行電車、まもなく発車いたします。お荷物、お体を強くお引き下さい。扉を閉めさせていただきます。閉まる扉にご注意下さい。」
- 発車後
- 「電車が動いております。黄色い線の内側をお歩き下さい。…ただいまの急行電車をお見送りいただいたお客様、ご協力、ありがとうございました。次の電車は、各駅停車××行きです。」
これらの放送は、大手私鉄の混雑路線の中で、ある郊外の駅でいつも行われているものである。かなり停車時間に余裕がある場合で、実際はもっとパワフルに、ハイスピードに放送が行われることが多い。扉が開いた瞬間に発車ベルが鳴り始めることもしばしばある。そうなると、いきなり上の4つ目のステップに行ってしまうことが多い。
[編集] 押し屋の苦労
- 冬は厚着のため乗客1人あたりの占有体積が大きく、押すのが非常に大変である。
- 4月は乗客が多いだけでなく、新社会人など満員電車に乗り慣れない人たちが他の人の乗り降りを阻害してしまうこともあり、押し屋は頭を悩ませている。
- 乗客の自尊心
- 最近では乗客の自尊心に配慮し、体や荷物が扉に少し挟まった程度ならば、乗客の身体や荷物に直接手を掛け押し込むのでなく、押し屋は力ずくで少し扉を開けてその間に乗客が体や荷物を引き、押し屋はうまく扉を閉めてしまうというパターンが多い。
[編集] 乗客の観点から
- 押し屋が活躍する時間帯の利用者の多くは通勤・通学客である。遅刻すると給料や成績に悪影響が出るので、遅刻しないように急ぐものである。しかしながら、列車が超満員で乗れない、ということも多いので、そのようなときは、体の一部、具体的には手や足だけを無理やり車内に入れて、扉が閉まりかけてから、体を押し屋に押し込んで貰うことがある。そのような時には、非常に有難い存在である(しかし、このような乗客の行動が電車の遅れにつながるとも解釈できる)。
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