常用漢字
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常用漢字(じょうようかんじ)とは、日常の使用に必要なものとして選ばれた漢字をいい、以下のようなものがある。
- 1923年(大正12年)、文部省臨時国語調査会が指定した漢字1962字とその略字154字。
- 1931年(昭和6年)、「常用漢字表及仮名遣改定案に関する修正」にて上記常用漢字表中の147字を減らし45字を増やして修正した1858字。
- 1945年(昭和20年)、国語審議会が作成した常用漢字表1295字案。この案は採択されず、これを修正した1850字が当用漢字として公布された。
- 1981年、公布された常用漢字表1945字。以下、詳説。
常用漢字(じょうようかんじ)は、現代日本の漢字であり、文部省国語審議会(現文部科学省文化審議会国語分科会)の漢字をめぐる政策による当用漢字の後継漢字。1981年10月1日に内閣告示第1号「常用漢字表」により発表された漢字使用の基準。「法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等、一般の社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字を収め、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安」(同告示)を示す。1945字からなる。
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[編集] 当用漢字との違い
字数の上では以下の95字が増加した。削除された文字はない。
猿 凹 渦 靴 稼 拐 涯 垣 殻 潟 喝 褐 缶 頑 挟 矯 襟 隅 渓 蛍 嫌 洪 溝 昆 崎 皿 桟 傘 肢 遮 蛇 酌 汁 塾 尚 宵 縄 壌 唇 甚 据 杉 斉 逝 仙 栓 挿 曹 槽 藻 駄 濯 棚 挑 眺 釣 塚 漬 亭 偵 泥 搭 棟 洞 凸 屯 把 覇 漠 肌 鉢 披 扉 猫 頻 瓶 雰 塀 泡 俸 褒 朴 僕 堀 磨 抹 岬 妄 厄 癒 悠 羅 竜 戻 枠
字体を改めた字。
当用漢字の「燈」が「灯」に改められた。
音訓が加わった字。
栄 はえる 憩 いこう 香 かおる 愁 うれえる 謡 うたう 露 ロウ 和 オ
音訓が削られた字。
膚 はだ 盲 めくら
[編集] 法令における使用
法令では常用漢字のみを使用することを原則として、常用漢字外の字は、語そのものの言い換えが行われるか、その字のみ平仮名書きするか、常用漢字外の字を使用しつつ初出の箇所にのみ振り仮名(ルビ)を振る運用がなされる。
語そのものの言い換えは、戦後の当用漢字策定期に多用される。例えば「抛棄」を「放棄」と改める例などである。
平仮名書きは、機械的に行えるために多く使用されてきたが、同音異義語がある場合や、「駐とん地」(駐屯地)など語の一部のみ平仮名書きされる不自然さがあり、また講学上は漢字を使用するのが通常なため、次第に避けられるようになりつつある。
初出箇所にのみ振り仮名を振る方式は、常用漢字使用の原則に沿いつつ、自然な記載をなしうるため、法令の条文の記載において、多く用いられるようになりつつある。平成に入って口語化された刑法・民事訴訟法等はいずれもこの方式によっている例である。
[編集] 問題点
別項「日本語の乱れ」・「日本語の変化」でも述べているように、言葉は生きた人間が使うものであるから、それ相応に時代に即して変化するものである。常用漢字は、あくまで初頭・中等教育で学ぶことが必須とされる漢字の指針であり、実社会に出ても恥ずかしくないように得ておくべき最低限の一般常識である。したがって、世間一般ではそれだけにとどまらない発展的な知識が必要であるが、常用漢字のセオリーにとらわれすぎて、上記のような問題が出てくるのは必然である。たとえば、「経」という漢字の訓読みは、常用漢字表では「経る(へ-る)」である。しかし雑誌などで広く用いられる「経つ(た-つ)」は認められていない。これが若者の間では、「経つ」というのが常用外で、逆に「~を経て」などという形では知っていても、元の「経る」という読みを知らないというケースがあるという。
[編集] 見直し
2005年2月に国語分科会が「情報化時代に対応するために常用漢字のあり方を検討すべき」であるとした報告書を文化審議会に提出した。これを受けて、同年3月、中山文部科学相は常用漢字表の見直しの検討などを文化審議会に諮問した。同年9月から文化審議会・国語分科会の漢字小委員会が常用漢字見直しの審議に入った。同年2月2日付けの日本経済新聞によれば、常用漢字の見直しについては5-6年後をメドとしている。