寿命
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寿命(じゅみょう)とは、生物の生命。またその長さ。単純には、生まれてから死ぬまでにかかる時間のことである。転じて、工業製品が使用できる期間など、様々な物質や物体の消滅、あるいは破壊までの時間を言うこともある。
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[編集] 一般的用法
一般には、人間が生まれてから死ぬまでの時間のことを寿命という。しかし、この長さには非常に個人差があり、生まれてすぐ死ぬ人間もいれば、100年も生きる人間もいる。しかし、極端に短い場合、大抵は事故であったり、病気であったりと不本意な理由があるから、「あれさえなければもっと生きていたろうに」というふうに考えるものである。したがって、人間は特に問題がなければ老人になって衰えて死ぬものだとの考えから、老衰で死ぬことを寿命と言うことが多い。80歳の人が死ねば、大抵は「寿命だからね」と言われる。
[編集] 生物学的用法
我々の見る生物の個体はすべて老化して死ぬものであるから、人間と同じように寿命を考えることができる。ただし、単細胞生物などではこれが当てはまらない場合がある。少なくとも多細胞生物は寿命があると言っていいだろう。その長さは様々であるが、もっとも長いのは多分樹木である。
老化に至る時間は生物の種によって大きく異なるが、それぞれにほぼ一定である。条件を整えてやればより長生きするにせよ、それにも限界はある。したがって、その限界をもって寿命と考えることができる。
ただし、生態学ではそういう風には考えない。たとえばアユを海水で育てると2年以上生き延びることが知られている。そこで、アユの寿命は実は2年くらい、というのは確かに正しいのであるが、実際の河川では、アユはほぼすべて1年で死亡する。その限りではアユの寿命が2年というのは実現されない数値であり、意味がないと考えられる。そこで、条件を整えてやった場合に実現する寿命を生理的寿命、その生物が実際に生活している場で見られる寿命を生態的寿命として区別する。
[編集] 単細胞生物の寿命
たとえばゾウリムシの場合、栄養条件が良ければ細胞の中ほどからくびれて二分裂を行なって繁殖する。この場合、分裂前の個体と分裂後の個体を親子関係と見なすのは難しい。どう見ても同じ体が二つに分かれたように見える。ゾウリムシでは、数を増やす方法としてはこの方法以外には知られていないので、その発祥からこれを繰り返していたのだと考えた場合、そして今後もこれを続けるのだとすれば、寿命は無限大ではないかとも考えられる。ただし、分裂だけを無数回続けられるわけではなく、時に接合を行なうので、これを区切りと見る考えはある。しかし、それを寿命と考えた場合、非常に違和感がある。
[編集] 人間の場合
人間の寿命は寿命を示す細胞によって決まるといわれており、それによると最長で150年とされる。しかしいまだに150年生きた者はおらず、ジャンヌ・カルマンの122年164日が最長である。そのため、120年前後ではないかとする説もある。 また、心拍数によって決まるという説もある。これは心拍数に上限があり、その上限が人間を含めたほ乳類は20億回で、それに達すると寿命だという。
[編集] 平均寿命
平均寿命はある集団に生まれた人間が平均して何年生きられるかの期待値であり、0歳児の平均余命であるとも言える。 具体的な計算法は、各年齢の人間の年間死亡率を求め、今年生まれた人間の人口がこの死亡率に従って毎年どれだけ死亡するかを求める。このシミュレーションでそれぞれの死亡した年齢を平均したものが平均寿命となる。
平均寿命は一般に先進国の方が発展途上国より長いが、これは発展途上国の新生児死亡率が先進国よりはるかに高いことが原因と考えられる。 新生児死亡は死亡年齢の低さから平均値を大きく引き下げる働きがあるからである。 また、戦争などで一時的に若者が多く死亡した場合、一時的に平均寿命が低くなる。 若年層の死亡率がその時期だけ高くなり、同じく平均を強く引き下げることによる。
平均寿命の長さが長くなっても肉体の老齢化の進み具合はあまり差が出てこないため、労働人口が増えるわけではなくむしろ増大した高齢者の生活を若年層が支えていくために負担が大きくなる傾向にある。平均寿命の延長は「老齢時代の長期化」に近い。
[編集] 国別平均寿命ランキング
世界保健機関(WHO)による調査(2004年時点)
- 日本の平均寿命は、82歳で世界一。他にモナコとサンマリノも並ぶ。
- 日本の男性の平均寿命は、79歳で世界一。他にサンマリノとアイスランドも並ぶ。
- 日本の女性の平均寿命は、女性86歳で単独世界一。
- 平均寿命が最短なのは、ジンバブエの36歳。他にシエラレオネの41.5歳もある。
猫の平均寿命は7歳。犬は10歳。