家族法
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家族法(かぞくほう)とは、家族内の紛争の解決基準を規定した法規範をいう。
[編集] 日本における「家族法」の概念
日本では、一般的に民法(明治29年法律第89号)の「第4編 親族」と「第5編 相続」を合わせて家族法と呼ぶことが多い。具体的には、婚姻や離婚、養子縁組、離縁やこれらに伴う財産関係の整理、子の親権・養育・親子関係(嫡出子、非嫡出子に関する規定など)、相続、遺言などに関する規定が置かれている。つまり、親族法と相続法の上位概念として使われている概念である。
もっとも、以上のような理解に対しては、体系上の疑問もあがっている。日本国憲法が施行される前の日本民法は、親族法は家制度を主とし、相続法は家督相続を主とした制度を採用し、両者は家という概念を通じて不可分の関係にあった。そのため両者を統一的に把握するのが自然であり、そのための上位概念が生まれる余地もあった。なお、親族法と相続法の上位概念として身分法という用語が使われていたが、封建的身分を連想させる等の理由により家族法という用語が使われるようになった経緯もある。
しかし、日本国憲法の施行に伴う民法改正により家制度が廃止され、現在では、親族法と相続法との不可分性が希薄になった。また、比較法の観点からも、親族法と相続法とを一体として捉えることは珍しい。特に相続法の位置付けについては、財産法と親族法の交錯領域と捉えたり、財産取得の態様の一つに関する法として捉える傾向にある。以上のような問題意識から、親族法に相当する部分のみを家族法と呼ぶべきとする見解も有力に主張されている。
実際、親族法と相続法を一体として捉える思考は比較法的には異例である。例えば、フランスでは相続は単に財産取得の一態様として理解されているし、ドイツでは、相続法は親族法と財産法を架橋するものとして理解されている。
[編集] 家族法をめぐる状況
時代の変化に伴い家族の在り方も常に変化しており、法的安定の要請(法規範が常時変転すると社会生活を送る上での判断基準が不安定になり、自由な行動を阻害してしまうおそれがあるから、法規範を変更することには慎重でなければならないという発想)と社会情勢の変化との衝突が最も鮮明に現れる法分野の一つともいえる。21世紀初頭現在では、内縁(法律婚を経ない事実上の夫婦)や夫婦別姓に対する肯定的世論、不稔や不妊に関する医療技術の発達、延命医療技術の発達などをふまえて、日本を含む各国で改正やその議論がなされたりしている。