宮島達男
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
宮島達男(みやじまたつお 1957年1月16日 - )は、日本の美術家。
東京都江戸川区出身。東京藝術大学修士課程卒。東北芸術工科大学副学長・デザイン工学部長。発光ダイオード(LED)のデジタルカウンターを使用した作品で知られ、コンピュータ・グラフィックス、ビデオなどを使用した作品もある。21世紀の日本の美術作家のうち、国際的にもっとも評価されている一人である。
彼の作品制作のテーマは作品と観客などとの関係性、作品の表現する永遠性である。以下の3つの言葉に彼の哲学が集約されている。
- それは変化し続ける
- それはあらゆるものと関係を結ぶ
- それは永遠に続く
[編集] LED作品群
宮島は、藝大在学中から作品発表を開始し、1980年代には街頭でのパフォーマンスや家電製品などを利用したインスタレーションなどを行っていた。LEDを使用した作品を最初に発表したのは1987年である。1988年、ヴェネツィア・ビエンナーレの「アペルト88(若手作家部門)」に出品した作品 "Sea of Time" が高い評価を得、国際的に知られるようになった。"Sea of Time" は、暗い部屋の床一面に発光ダイオードの数字が明滅するものであった。以後、世界各地で作品を発表し、1999年のヴェネツィア・ビエンナーレには日本代表として出品。この頃から世界的に高い評価を得るようになった。
宮島の典型的な作品は、暗い部屋に置かれたLEDのデジタルカウンターが、「1」から「9」までの数字を刻むものである。デジタルカウンターは数千個単位で用いられることが多い。注意すべきことは、デジタルカウンターの刻む数字は「1」から「9」までであって、決して「0」(ゼロ)を表示しないことと、その明滅する速度が一定ではなく、個々のLEDによって異なることである。これは、人間が生まれ、死に、そして再生する「輪廻」の東洋的な思想を現代のテクノロジーを用いて表現したものだという。東京都現代美術館に設置された作品『それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く』(1998年)は、関係性、永遠性といった宮島のテーマを作品名に如実に表わしたものである。 この作品は展示場所(東京都現代美術館)を考慮して制作したもので、暗い部屋で展示されることが多い宮島の作品には珍しく明るい展示室に置かれている。
[編集] デス・シリーズ
"Death of Time"(1990年-1992年)、ヴェネツィア・ビエンナーレ出品作の"MEGA DEATH"(1999年)、そして"Deathclock"(2003年)の3作品は生と死をテーマとした三部作「デス・シリーズ」を構成している。
"MEGA DEATH"は部屋を囲む壁面全体に無数のLEDが数字を刻み、入ってきた観客がある特定の場所に立つと、すべてのLEDが一瞬で消え、数分後に徐々にLEDが動き出すまで暗闇が訪れるものである。戦争や災害による大量死を髣髴とさせ、見たものを慄然とさせる作品である。
"Deathclock"は200部限定で販売した、CD-ROMによる作品で、作者と購入者が共同で制作する作品である。購入者は、自分の「死の時」を各自設定し、入力する。そして作品購入時の自分の顔写真を撮影する。コンピュータのスクリーンの上では、購入者の顔写真にオーバーラップして、デジタルカウンターがカウントダウンを始める。カウントダウンは数字が「0」になるまで、すなわち、購入者が入力した「死の時」まで続く、というものである。
[編集] 時の蘇生・柿の木プロジェクト
また、長崎市で原爆によって被爆した柿の木から採取した種を苗木に育て、展覧会場などあらゆる場所で配り、また世界中の子供たちと植えてゆく「『時の蘇生』柿の木プロジェクト」を展開している。