国家総力戦
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国家総力戦(こっかそうりょくせん、total war)とは、戦争状態にある国家が、戦争遂行に対して持ちうる能力(国力)を総動員して行わねばならない状況及びそのような形態の戦争をいう。
近代的兵器が登場するまでの戦争においては、軍(軍隊)の量・質が戦争の結果を左右するものであり、戦争に対して産業や民衆は距離をおくことが可能であった。
近代的兵器が登場することにより、戦闘の結果として
- 弾薬・燃料の消費量の増大
- 兵器の消耗の増大
- 戦闘員の消耗の増大
という状況が生まれた。戦争は長期にわたる持久戦となることが予測され、この状況において戦争を継続するために欠乏したものを補給する能力を確保することが必要となる。1)2)について銃後は持ちうる生産能力の多くを戦闘継続のために振り向けることが必要となり、同時に振り向けることが可能であることが求められる。3)は兵の質に対しても求められるものであり軍において求められるような能力を平時から養うことが必要とされる。運用する兵器が高度になるにつれ兵に求められる能力はより高くなっていくこととなる。このことは基礎的な教育もさることながら国家における機械化の度合いと一般市民の習熟度も大きく関係する。
この状況において相手国の国力を下げるための行動として、戦略爆撃、通商破壊が行われることとなる。そのため必然的に兵士だけでなく民間人も戦闘に巻き込まれる確率が増え、「銃後」などの言葉が生まれた。
又、日々進化する兵器の開発の為に技術者も動員され、研究などについても制限を受けることとなる。端的な例として、第一次世界大戦におけるドイツでの化学兵器(毒ガス)の開発、第二次世界大戦においての核兵器の開発があげられる。
第二次世界大戦においてはアメリカ合衆国といえども国家総力戦の態勢でのぞみ、多くの産業が戦争に加担することとなった。日本においては協力しない企業は皆無に近い状況であり、多くの企業が戦争協力をしたために、戦後、GHQからの追求をうけ、更には財閥解体を招いた。