四酸化オスミウム
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四酸化オスミウム | |
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IUPAC名 | オスミウム(IV) オキシド |
別名 | |
組成式 | OsO4 |
式量 | 254.23 g/mol |
形状 | 無色から淡黄色の固体 |
結晶構造 | |
CAS登録番号 | 20816-12-0 |
密度と相 | 5.0 g/cm3, 固体 |
水への溶解度 | 6 g/100 mL (25℃) |
融点 | 42 ℃ |
沸点 | 130 ℃ |
出典 | ICSC |
四酸化オスミウム(しさんか―、Osmium tetroxide, OsO4)はオスミウムの酸化物。分子量 254.2、融点 42 ℃、沸点 129.7 ℃。CAS登録番号は 20816-12-0。
無色から淡黄色の固体で、オスミウムを加熱すると容易に生じる。沸点より低い温度でも気化・昇華しやすく、特有の刺激臭を持つ。加熱すると分解し、オスミウムと酸素を生じる。 強酸化剤であり、可燃性や還元性の物質と反応する。毒性が強く、吸い込んだり皮膚に触れると危険。
化学工業で反応速度を速める触媒としての用途がある。放射性物質と異なり、環境中にまき散らされても、除去はそれほど難しくない。
[編集] 有機合成における応用
有機合成分野において四酸化オスミウムは、オレフィンを 1,2-ジオールへと変換する重要な酸化剤として用いられる。機構としては二重結合に対して四酸化オスミウムがシス付加して6価の環状オスミウム酸エステルを生じ、これが加水分解されてジオールを生ずると考えられている。この反応は入手容易な官能基であるオレフィンから不斉点2つを一挙に導入することができ、ジオールはさらに他の官能基へと変換することも容易であるため、有機合成上重要である。
普通に反応を行うと四酸化オスミウムはオレフィンに対して等モル量が必要であるが、再酸化剤を反応系に加えてやると6価のオスミウム酸が8価の四酸化オスミウムに酸化されるので、危険なオスミウム試薬の使用量を触媒量に減らすことができる。再酸化剤としては N-メチルモルホリン-N-オキシド、過酸化水素、フェリシアン化カリウムなどが用いられる。
[編集] 応用
触媒量の四酸化オスミウムに加え、過剰量の過ヨウ素酸ナトリウムを加えておくとこれが再酸化剤として働く上、生成したジオールを酸化開裂させてカルボニル化合物2分子が生成する。これはオゾン分解の代替反応になりうる。
また反応系にクロラミンTなどを共存させておくことにより、アミノアルコールを合成することもできる。2等量以上用いれば 1,2-ジアミンへと誘導することも可能である。
オスミウム酸化の際にキニーネの誘導体を共存させておくことにより、キラルな 1,2-ジオールやアミノアルコールを得る手段がバリー・シャープレスらにより開発されている。項目シャープレス不斉ジヒドロキシ化に詳しい。