反重力
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反重力(はんじゅうりょく)は物質に加わる重力の力を無効にしたり、調節する技術。現実の物理学では理論的に不可能であり、全く架空の技術とされる。多くはSF作品に宇宙航行の基礎技術として登場する。
[編集] 概説
宇宙に出て星々の間を行き交うには、地球から飛び出す必要があり、その為には人が搭乗し、さらに多くの貨物を積んだ機体に脱出速度を与えなければならない。その上、宇宙空間を光速ほど、あるいはそれ以上の速度で移動しなければならない。お伽話ならなんでもよいが、いやしくもSFというからには、少なくとも現在の基礎的な科学知識(の印象)を納得させなければならない。その際に、重力をどうこうする技術があれば、何となく多くの問題が誤魔化せる気がするのである。最初のくそ真面目な月旅行企画であるヴェルヌのそれは、真面目に大砲で脱出速度を得たから、現在では余りにも突っ込みどころ満載であるが、お気楽な月旅行企画のウェルズの方は、重力遮断物質ケイバーライトを用いて軽々と月に行ってしまった。
現在の物理学的知識の元では、いかなる方法で加速したとしても、恒星間を行き来し、あちこちの星を回るには、人間の生涯に比べてあまりにも時間がかかりすぎる。それに則って、数世代をかけて星から星へと移動するSFもあるが、それよりはあっという間に星から星へと移動できた方が面白い。それを求める作品では、宇宙航行には反重力やそれに類する技術か、さもなくばワープ航法が使われる。この項ではこれを中心に述べる。
[編集] 具体的方法
先にも述べたように、反重力やそれに類する技術理論はSFにおいては物語世界を成立させる基礎技術であるが、それそのものが主題になる物ではない。したがって、しっかりとした理論はもとより期待できないし、できるわけもない。むしろ、そのあたりは軽々とスルーするのもSFの醍醐味ではある。完全に偶然で発明してしまう例や、いっさい由来は不明とする例(レンズマンシリーズなど)が結構ある。
真面目に力学の方から考えると、重力というのは天体の上にある物体に働く、様々な力の合力として表れる力である。これを要素に分けると、大抵は物体と天体間の万有引力が大きい。結果としてその物体が天体に引きつけられる力となる。したがって、反重力という言葉そのものにも問題はある。ただし、引力そのものを重力という場合もあるから、言葉としてはぎりぎりセーフであろう。
- 万有引力は離れた二つの物質の間に働く力だから、何らかの方法で、その間で伝達をさえぎってやれば、その影響を脱することができるという考えに立つものもある。先に述べたウェルズのそれは、ケイバーリットなる重力遮断物質で、これを地球側に敷けば、地球からの引力が働かなくなり、その代わりに宇宙からの引力が働くから、そのままそっちへ移動できてしまう。
- また、万有引力は質量の存在によって生じるから、その物質の質量に何らかの形で介入することができれば、引力が調整できるかも知れないと考えるものもある。この場合、質量を増やすことによって重力を増やすこともできる。また、質量が0になれば慣性の法則による制約を破れるうまみもある。レンズマンシリーズには無慣性航行というのが出るが、これもそれに近いようである。
- 重力波そのものを作り出すという考えもある。そうすれば、既存の重力を打ち消すことも可能になるだろう、というものである。
ドラえもんではのび太と鉄人兵団のサンダクロスの操縦室などがその例で登場する。また、設定ではタケコプターも反重力を利用しているとされている。