原爆死没者慰霊碑
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原爆死没者慰霊碑(げんばくしぼつしゃいれいひ)は、広島市の広島平和記念公園内に設置されている慰霊碑の名称。
[編集] 概要
当時の東京大学助教授であった丹下健三が設計。記念公園の敷地内の記念資料館と原爆ドームを結ぶ直線上に設置されている。原爆犠牲者の霊を雨露から守りたいという気持ちから、屋根の部分がはにわの家型をしている。中央の石室には、国内外を問わず、亡くなった原爆被爆者の名前を記帳した名簿が納められている。
この慰霊碑のデザインは、当初コンペによって募集され、日系2世の前衛彫刻家イサム・ノグチの案に内定したが、日系2世という出自から難色を示す意見が各所から出たため、ノグチ案を生かしたかたちで丹下がデザインしなおしたという経緯がある。
初期のデザインでは、原爆ドームをのぞむ巨大なアーチであったが、当時の広島市の資金難により、現在のデザインに変更された。
広島大学教授雑賀忠義の筆である。
原爆死没者慰霊碑に納められる"原爆死没者名簿"は、関係者の申し出により毎年書き加えられている。記載数247,787人(2006年8月6日現在)という数字は確認された「死没者総数」であり、新規登録者数の推移から存命する原爆体験者が少なくなりつつあることがわかる。しかし、この数字は原爆を直接原因とする厳密な"犠牲者数"ではない。
原爆による死者・行方不明者:広島14万±1万人(1945年12月末まで)/1976年11月 国連報告
たとえば国連報告に記載された犠牲者数は、被爆から数年後に発症し死亡した白血病患者を含まない。
[編集] 事件
慰霊碑への心無い悪戯は何度か繰り返されている。2005年7月26日にも、27歳の右翼の男が、慰霊碑の碑文「安らかに眠って下さい 過ちは 繰(くり)返しませぬから」の「過ちは」の部分にハンマーで傷を付ける事件が起きた。戦後60年を経てもなお癒えない、原爆という災禍の日本に与えた複雑な影響を内外に知らしめることとなった。