単純ヘルペスウイルス
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単純ヘルペスウイルス(たんじゅん-、Herpes simplex virus)とはウイルスの一つ。
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[編集] 種類
- HSV-1(Herpes simplex virus type 1)=学名:HHV-1(human herpesvirus-1)
- HSV-2(Herpes simplex virus type 2)=学名:HHV-2(human herpesvirus-2)
150Kbpのゲノム全長を持ち、80種類以上の遺伝子をコードしている。宿主の細胞質を自身のエンベロープとして保有し、その内側にテグメントタンパク質、更に内側にカプシド、カプシド内にウイルスDNAが詰め込まれている。成熟粒子は100〜150nm(1ナノ=1ミリの100万分の1)の大きなウイルスである。
皮膚や粘膜を介してヒトに感染したウイルスは、エンベロープを宿主細胞膜と融合(fusion)させることで細胞に侵入する。細胞内にはテグメント(tegument)およびヌクレオカプシド(nucleocapsid)が放出される。核内でウイルスタンパク質合成、DNA合成が進み子供ウイルスが作られ、最終的に細胞外へと脱出する。ここでまた隣の細胞に感染することもある。
ウイルスは神経にそって上行し、脊髄神経節や三叉神経節に潜伏感染する。
潜伏感染時にウイルスDNAやタンパク質は合成されず、LAT(latency associated transcript)とよばれる転写産物だけが検出される。
[編集] 臨床像
- HSV-1(Herpes simplex virus type 1)は主に口唇ヘルペスを生じ、ヘルペス口内炎,ヘルペス角膜炎、単純ヘルペス脳炎の原因となりうるとともに三叉神経節に潜伏感染する。
- HSV-2(Herpes simplex virus type 2)は主に性器ヘルペス、新生児ヘルペス、ヘルペス髄膜炎、ヘルペス脊髄炎の原因となりうるとともに脊髄神経節に潜伏感染する。
- 一般的にHSV-1は性器ヘルペスを起こさないと思われているが、実際はHSV-2同様原因となりうる。性習慣の変遷とともに必ずしもHSV-1が口、HSV-2が性器といった完全な棲み分けは成り立たない。
- 初感染したHSVは局所にて病巣を生じたのち、または不顕性感染のまま上記の神経節に潜伏感染する。免疫低下時や免疫抑制剤などの投薬時に再活性化され局所に痛みを水疱、びらんなどの症状を伴って現れることがある。これらの水疱を採取してトリパンブルー溶液などで染色、顕微鏡下で観察するとballooning-cellと呼ばれる巨細胞をしばしば認める。
- 再発性が高く、同じ場所に病巣が再発することが多い。
- ヘルペスひょうそう:手指などに単純疱疹が多発し、相当な痛みを伴う。看護婦などの医療関係者、重傷のアトピー性皮膚炎の患者などに起こることがある。
[編集] 治療
- ヘルペスウイルスなので、アシクロビルが有効。潜伏感染しているウイルス対してアシクロビルは無効である。アシクロビルはウイルスのDNA複製を特異的に阻害するため増殖中のウイルスに対してのみ効くとされている。よって、再発を繰り返す。
- 角膜への感染にはイドクスウリジン(IDU)を点眼する。
- 米国では、再発性ヘルペス患者に対し毎日アシクロビルを一年ほど服用させることでその後の再活性化を抑えようという治療が認可されている。
- 日本でも、再発性ヘルペス患者に対し毎日アシクロビルを一年ほど服用させることでその後の再活性化を抑えようという治療が2006年9月より認可されている。
- ヘルペス後神経痛:ウィルスの頻繁な再発等で感染した部位を中心に広範囲な神経痛(痛み、痺れ、疼痛)が後遺症として残る場合があり、その神経痛を和らげるためには長期間の治療が必要となる。
[編集] 関連
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