匍匐
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匍匐(ほふく)とは、伏せた状態で移動することをいう。
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[編集] 概要
これは直立せず、胴体などが地面に接触する形で手足を使って「這う」という、低い重心での移動様式を指すが、一般に脊椎動物の四足歩行全般は匍匐とは呼ばれず、特に胴体が伸ばした足の上に乗っていて、高重心のまま移動する四足歩行をしている動物に対しては、「這う」の範疇にも含まない。
ヒトの乳幼児は生まれて運動が出来るように成ると、いち早く這って移動する事を覚える(俗に「ハイハイ」とも)。乳幼児の場合、手足を使うという点では四足歩行に似るが、後足の末端ではなく中間である膝をつける点で、動物一般の四足歩行とは大きく異なる。なお匍匐を乳幼児がいち早く覚える理由としては、重心が低く地面との接触面積が広いため、安定性が良く、転倒し難いためである。
脊椎動物でも、爬虫類・両生類等やハイギョ等の陸上(水辺)で活動することの多い原始的なものでは、腹を付いて這って移動する物が多い。これも安定性の上での利点による物と考えられる。
しかしこの移動方法は、必然的に腹をこする形となるため、地面との摩擦が大きく、余り高速で移動できない。この問題において多くの動物は腹をこすらないでも移動出来るように足で胴体を懸架(支えて持ち上げる)ように変化している。
ただ水辺では泥により摩擦が軽減(潤滑)されることから、ワニのような大型動物でも匍匐している。もっとも、ワニは体を持ち上げて歩行することもできる。この場合は、足を使って体を地面から持ち上げるものの、移動には体全体をくねらせて短い足の可動範囲以上の歩幅を作り出している。
その他、足の短い多足類やイモムシ、腹面がすべて脚として機能するカタツムリやヘビなどや、体の表面全体が移動器官であるミミズも這うという。
[編集] 植物
植物において匍匐性と云う場合には、成長に於いて余り垂直方向に枝葉を伸ばそうとせず、水平方向に地面の上に伸びる性質の植物を指す。プロストラータともいう。これら匍匐性の植物では、地面を覆うように伸びていく。
ローズマリーには匍匐性の品種と、直立性の品種が見られる。
[編集] 軍隊に於ける匍匐
軍隊に於いては、匍匐前進と呼ばれる移動方法がある。これらでは、隠密性や遮蔽性の効果があり、敵に発見されにくく、また飛来してくる銃弾の被害を抑える。歩兵にもとめられる基本的な技術の一つである。
直立状態や中腰に比べて移動速度は遅くなるが、物陰に隠れやすく、前方投影面積が減るため被弾率は格段に減少する。大抵の軍隊では移動速度重視の高姿勢での匍匐や隠蔽重視の低姿勢での匍匐など、複数パターンの匍匐を使用している。