共鳴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
共鳴
- 物理現象としての共鳴:本稿で詳述する。
- 化学における共鳴:量子力学的共鳴を「共鳴」と略称し、これにより化学結合について説明することが多い。共鳴理論に詳しい。
- 天文学における共鳴: 軌道共鳴を見よ。
- 仮借としての共鳴:他人の思想、信条に共感することを物理用語を仮借して「共鳴する」と日常的に言い表す。つまり「共鳴」は「共感」の比喩的表現である。
共鳴(きょうめい)とは、ある物体の振動エネルギーが他の物体に吸収されて、その物体が振動することを言う。日本語では扱う対象によって共振と言うことがある。[1]
振動する物体には固有振動数(自由に振動させたときに得られる物体ごとの特定の振動)というものがある。その振動数と 等しい振動が外部より物体へと加わると、振動が増幅される、または振動を開始する現象を「共振」という。音波におけるそれの場合は、音として耳に聞こえるために共「鳴」といわれる。 このとき、元の振動エネルギーの振動数と被振動体の固有振動数が近ければ、より大きな共鳴を得ることができる。遊具のブランコを動きの調子に合わせて、力を加えると次第に揺れが大きくなる様子が参考になる。
楽器にあっては、共鳴によって、発音体の振動エネルギーがより大きな物体(共鳴体、共鳴腔)に伝えられ、効率よく音に変換される。すなわち、発音体が単独の時よりも、より大きな音を得ることができる。そればかりでなく、音色が変えられ、楽器によっては共鳴によって安定した音高を得ることができる。
素粒子に関する加速器による実験では特定の衝突エネルギーのところで、反応の頻度(反応断面積)が急激に大きくなることがある。この際には生成した複数のハドロンや中間子が複合した状態を形成していると考えられる。この状態を共鳴状態にあるという。これらの状態は非常に短寿命であり、強い相互作用によってより寿命の長いハドロンや中間子へと崩壊する。
量子力学的共鳴
量子力学においてはある状態がエネルギーの期待値が近い2つ以上の状態の線形結合で近似できるとき、2つ以上の状態が量子力学的共鳴状態にあるという。この考え方はヴェルナー・ハイゼンベルクによってヘリウム原子の状態について提唱され、ライナス・ポーリングにより化学結合全般へと拡張された。