仮設住宅
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仮設住宅(かせつじゅうたく)は、地震や水害、山崩れなどの自然災害などにより、居住地がなくなった人たちに対し、行政が貸与する仮の住居。主にプレハブ工法によるユニットハウスが用いられる。
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[編集] 概要
阪神・淡路大震災では多くの人が倒壊や焼失などにより居住地を失い、仮設住宅に移り住んだ。単に「仮設」と呼ぶ略語が生まれたのもこのときであり、その後の新潟県中越地震等において設置された際にも一般にはこの略語が用いられている。
避難生活初期には、集団で公共施設に寝泊りしている被災者は、隣人と毛布一枚・段ボール一枚で隔てられているだけの事が多く、長期に及ぶとプライバシーの問題やゆっくり休めない事から来る疲労が蓄積するため、これを予防するために応急的に建てられるこれら建物は、松杭の土台の上に組み立てられる。
仮設住宅提供の根拠となるのは憲法に保証された人権によるものだが、「健康で文化的な生活」がどの程度の物を指すかという解釈により、その設備面で様々な議論がある。
[編集] 仮設住宅の社会問題
両震災においては、仮設住宅は公園や学校の校庭、その他様々な理由で生じている空き地に設けられる事例が多く見られた。いずれの場合も本来の居住地から遠く離れる事例が多く、本来の居住地におけるコミュニティが分断・消滅してしまう問題が起こっている。また壁や窓が簡素な物であることからプライバシーの問題も指摘されている。
だがその一方で、地域に関係無くこれらの建物に収容された人々は、住み慣れた地域の社会に根ざしたコミュニティという基盤を失い、この中で孤独死の問題も発生、問題視されている。プライバシーは大事だが、その一方では隣家に干渉しない事から疾病などによるトラブルが発生した際に助けを求める事を遠慮してしまい、肺炎をこじらせて亡くなるケースも多発している。
[編集] 居住性の問題
これらの住宅は風雨を防ぐだけの機能は在るものの、断熱効果は低く、室内温度は外気温度に影響されやすく、居住環境はけして快適とは言いがたい。このため高齢者や怪我人を中心に体力を消耗して健康を害する可能性があり、一時的な避難所としては集団避難生活よりは快適とされるが、それでも長く続く内に心身の疲労が蓄積し易い。
避難生活が数ヶ月に及ぶ場合に提供される事もあるこれら住宅だが、特に四季の変化のある日本では夏場は非常に暑く冬場は隙間風が入ったり底冷えするなど、体力が落ちている人が病気になりやすい。これをエアコン等を導入する事で改善する事も可能ではあるが、このエアコン設置で「健康で文化的な生活」の保証範疇内か否かが問題となるケースも発生している。
特に近年の都市部では、ヒートアイランド現象に拠らずとも夏場の気温は(特にプレハブ住宅では)厳しい物があり、古くから言われて居る「雨風の防げる建物」だけで充分と言えるかどうかは微妙な問題を含んでいる。