事大主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
事大主義(じだいしゅぎ/サデジュイ)は、大きい者に付けばよいという考え、行動を表す語。特に朝鮮のそれを指す。
事大は『孟子』にある「以小事大」(小を以って大に事(つか)える)が語源。孟子には越が呉に仕えた例が知恵として書かれている。
[編集] 韓国/朝鮮
冊封体制による外交を「事大外交」と呼ぶ場合があり、新羅・高麗・李氏朝鮮など朝鮮半島に生まれた国家の多くは、中原を征した国家に対して常に事大してきたとみられている。特に、李朝の政策は事大交隣といわれ、事大主義が確固たる外交方針となっていた。そのため、李氏朝鮮末期においてもなお清皇帝を天子として仰いで事大し、日本などの介入による「開化」に反対したものを事大党などと呼んだ。
この事大主義に関連して、中国に近い国ほど文明が進んでおり、遠いほど未開であるという思想が生まれた。17世紀、女真族の清朝が漢族の明朝に取って代わり中原支配を確立させると、李氏朝鮮の儒者たちは朝鮮が中華を継承したと主張した。これを小中華思想という。
歴史的に朝鮮半島は常に中国や異民族の圧迫を受けていたためにこれに事大することによって国を保つという外交を長い間繰り返さなければならなかったとされる。李氏朝鮮の時代に儒教(特に朱子学)を積極的に取り込み、上下関係の考えを積極的に取り入れたために社会制度の中に定着したとしている。事大主義が李氏朝鮮末期において近代化を妨げる大きな要因となったことは疑いようの無い事実である。
[編集] 利点・欠点
事大主義においては、いくつかの特徴的な利点、欠点が存在する傾向がある。
- 利点
-
- 強者からの攻撃がなくなり、自らを守ることができる。
- 強者の保護を受けることができる。
- 強者からの指示に従うだけでよく、自らが決定する必要がない。
- 欠点
-
- 上下関係を必要以上に意識するため、弱者には強く、弱者に対し徹底的に攻撃する。
- 強者からの強制的な搾取にも応じなければならず、搾取によって自らの発展に投資する資源が奪われる。
- 強者からの指示が必要となり、自ら意志決定がする自由を奪われる。
- 意思決定権の剥奪により、自立心に乏しくなり、他者依存傾向が進む。