並行複醗酵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
並行複醗酵(へいこうふくはっこう)とは、醸造酒の製造過程で起こる醗酵の一種であり、麹の酵素によってデンプンがブドウ糖に変化する糖化と、ブドウ糖が酵母の働きによってアルコールに変化する醗酵とが、同一容器中で同時に行われることをいう。「醗」の字が常用漢字にないので、並行複発酵と書かれることも多い。
並行複醗酵によってだけ、度数が20度に近い高濃度のアルコールが生成できる。これは、糖化の結果できたブドウ糖を、アルコール醗酵によってただちに消費するからである。もし、洋酒のように、まず糖化をしてから次にアルコール醗酵を行う単行複醗酵をすると、20度のアルコールを造るためには高濃度のブドウ糖液にならざるをえず、薄い水飴のようになって、酵母が活動できなくなってしまう。
なお、麹菌は好気性菌なので、日本酒のもろみの容器中では繁殖できない。糖化には、麹が作った酵素が使われる。いっぽう、酵母菌はもろみ中で繁殖できる。したがって、もろみに原材料の蒸米と水を追加するときは、同時に麹を追加する必要がある。
並行複醗酵によって醸造されるアルコール飲料は、中国の紹興酒に代表される黄酒と、日本酒だけである。
[編集] 周辺事実
ビールやウィスキーの製造過程においては、糖化とアルコール醗酵の両方が同時ではなく別々に行なわれるので、単行複醗酵(たんこうふくはっこう)という。
また、ワインのように初めから原料中にブドウ糖が含まれている場合は、糖化を行う必要はなくアルコール醗酵だけでよいので、単醗酵(たんはっこう)という。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
食品工場探訪・日本酒蔵元編 東京都健康安全研究センター