ワールドアドバンスド大戦略 ~鋼鉄の戦風~
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『ワールドアドバンスド大戦略~鋼鉄の戦風~』はセガが1995年9月22日に発売したセガサターン用のゲームソフトである。
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[編集] 概要
本作品はメガドライブ版アドバンスド大戦略の直系の後継作品にあたるウォー・シミュレーションゲームである。
第二次世界大戦を舞台にする等の基本的な設定やシステムはメガドライブ版と同様であるが、プレイヤーはドイツ軍のほか、大日本帝国軍及びアメリカ合衆国軍をも担当できるようになっていることが最大の特徴である(続編の『~作戦ファイル~』ではソビエト連邦軍を担当するキャンペーンも追加された)。加えて、メガドライブ版での難易度が高すぎるという声に対し、ユニット(兵器)の簡略化、難易度とプレイヤー負担の引き下げが図られている。このためアドバンスド系はマニア向け、ワールドアドバンスド系は万民向けと言われる。
また、ハード性能向上によりコンピューター側思考時間の大幅な短縮が成され、本作品から3Dグラフィックスによって描かれた兵器による戦闘シーン等が使用されている。
[編集] ゲームの特色
本作品は、他のアドバンスド大戦略シリーズとは異なる以下の特色がある。
- キャンペーンモードにおいてドイツ軍以外の陣営も担当できること(後述)
- 3Dグラフィックスによる兵器の描写
- 「首都」の概念がなく、その代わりに複数の「司令部ユニット」が存在していること
- 「変形」概念の導入
3Dグラフィックスによる兵器の描写については、戦闘シーンを中心として完全に3D化された兵器による迫力のある戦闘を楽しむことができるようになっている。特に航空戦においては、航空機の優雅な動きを堪能することができる。また、各兵器のスペックを参照できる画面では、3D化された兵器を回転拡大縮小してあらゆる角度から見ることが出来るようになっており、眺めて楽しむというプラモデル的な楽しみ方も可能で、高水準の3Dグラフィックとも相まって兵器自体への興味をかきたてるものとなっている。
加えてオープニングデモにおけるティーガー、大和及びB-29の美麗な3D画像は、当時の新世代のゲーム機の実力を誇示するのに十分な品質と意気込みを伴っていたといえる。
ただ、美麗な3D画像を表示する設定にしていた場合、戦闘ごとにCDの読み込み処理を行うため時間がかかり、ゲームのテンポは非常に悪くなる。 これがもとで大半の人は常に3D表示をOFFにしてプレイするため、兵器同士の戦闘シーンはカットされる結果となり、この点は前作と比べてマイナスと言えない事もない(一応、設定で自軍ターン時のみ3D表示にするという緩和措置はある)。
「司令部ユニット」の概念については、「首都」のそれよりもプレイヤーの戦略を正攻法に近いものとさせている。それは、「首都」概念を持つ他のアドバンスド大戦略では遷都(敵軍に迫られた或いは占拠された場合、首都が後背都市へ移動する)をさせずに短期決戦を仕掛ける奇策として遷都対象都市への歩兵単独占領行動がしばしば用いられることに対し、本作品の「司令部ユニット」は反撃する上に多くの護衛ユニットを従えていることから歩兵単独攻略はほぼ不可能であるため、プレイヤーは一つずつ丁寧に「司令部ユニット」を撃破していく必要があることに由来する。
また、首都が1つしか無い場合は、敵軍を殲滅しない限り歩兵を司令部に近づけるのは事実上不可能であり、かつ、そうしないと占領できないことに対し、司令部ユニットへは爆撃機の集中投入による奇襲や艦砲射撃、戦車の砲撃、それらの複合でも撃破できるため、戦術に大きな幅を持たせている。ただし、システムとしては一つの「司令部ユニット」を撃破するとその隷下のユニットは全滅することになっているため、ゲームの難易度としては下がっている面が大きい。
「変形」概念については、ユニットの簡略化とゲームの難易度の低下に大幅に寄与している。これは自動車化歩兵や各種牽引砲等がトラック等に搭載された状態に「変形」できるというもの(その逆も然り)であり、これによりトラック等の輸送用ユニットを手駒に抱える必要がなくなった。また、搭載物を降ろした後はただの的にしか過ぎない輸送用ユニットを歩兵や牽引砲に「変形」させることができることは、それらの防衛に余計なユニットを充てる必要がないということでもあり、輸送ユニットの搭載量に悩む必要もないことから、プレイヤーの負担を低減させることに貢献している。さらに、また、対象ユニットは移動後に「変形」することが可能となっており、プレイヤーの迅速な戦略の構築にも一役買っている。
[編集] 日独米の各陣営について
上述のとおり、本作品ではプレイヤーはキャンペーンモードにおいて日独米の各陣営を担当することができるようになっている。これにより本作品では第二次世界大戦をドイツ軍の視点以外で楽しむことができるようになっている。なお、各陣営における特色は以下のとおりである。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] アメリカ合衆国軍
太平洋での日本軍との戦闘で開始される。当初はワイルドキャット等の性能の悪い兵器で零戦等に対抗しなければならないので、一見困難に思えるが、圧倒的な資金により次々とコストパフォーマンスに優れたユニットを生産できるので、実は全陣営のなかではかなり簡単な方である。
途中で対日戦と対独戦を選択することができるが、どちらを選んでもユニットを生産し続ければ物量で押し切ることができる。空中要塞B-29が生産可能となると、相手国の都市を徹底的に爆撃することができるようになり、これによって相手国を生産さえ不可能な状態に追い込めることができる。さらに、このシナリオでは、バルジの戦いでも気候が熱帯に設定される(天候が悪くならない)など、米軍に異様に有利な構成となっている。
これらのことから、難易度は本作品の中では初級者向けである。
[編集] ドイツ軍
いきなりフランス攻略戦から開始され、バトル・オブ・ブリテン、独ソ戦と急ぎ足で展開する。スペイン内戦やポーランド、北欧侵略のシナリオは存在しない。経験値の少ないユニットでしのぐ必要のある序盤が重要であり、特に2戦目のバトルオブブリテンに勝利できるか否かがその後の展開を左右する(これに勝利しモスクワも攻略できればアメリカ侵略シナリオとなる)。
序盤においては陸上ユニットは他国に比べて貧弱なので、爆撃機による電撃作戦をいかに成功させるかが勝利の鍵となっている。しかし大戦末期になるとMe262や駆逐戦車パンターといった無敵のユニットを(それまでの展開にもよるが)大量に保有可能となるので、ドイツ敗北シナリオに進んだとしても米ソ連合軍を圧倒する展開となる。
ドイツ軍の兵器は他陣営と比較しても圧倒的に強力(特に大戦末期)であるため、難易度は本作品の中では中級者向けである。
[編集] 大日本帝国軍
ノモンハン事件から開始され、その後対米戦に突入する。初期の海軍の強さは圧倒的であり、特に零戦21型の能力は爆撃機以上の絶大な航続力と米軍機とサシで戦っても圧倒的勝利を得られるほどの戦闘力を持つため、かなり強力である。これで制空権を確保し、高い性能と長い航続距離を持つ攻撃機・爆撃機で敵地上部隊を叩く。戦闘車両は見るも無残だが、歩兵・野砲は強く占領と防衛には十分。所有空母の数も多く、慎重にシナリオをこなしていれば、ミッドウェイでも負けないだけの戦力を保持することも可能。
しかし、相手国の兵器は進化してどんどん性能を向上するのに対し、日本は兵器開発、特に主力戦闘機がかなり立ち遅れるため徐々に苦しくなる戦闘に加え、インド上陸作戦やカリフォルニア上陸作戦と貧弱極まりない陸上戦力で攻略せざるを得ない作戦が続くので、後半以降は極めて厳しい展開が続くことになる。また、日本敗北シナリオに進んだ場合、初期配置の友軍ユニットが極端に少ない中で、物量にまかせた米軍に翻弄される展開が続くことになる。
尚、日本軍ユニット独自の仕様として、駆逐艦や潜水艦に陸上ユニットが搭載可能である。史実に於いて行われた「ネズミ輸送」を反映したものと思われる。
兵器の能力の極端なバランスの悪さにより、本作品では最も難易度の高いシナリオとなっている。
なお、ボーナスマップとして用意されているインドでの日独戦シナリオはボードゲーム版『レッドサン ブラッククロス』とシチュエーションが酷似しており、マニアの間で盗用を疑われている。