ロープワーク
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ロープワークとは、ロープの取り扱い方のことである。
もともと英語の"ropework"にある意味は、「縄をなったり、それを補修すること」であり、その上で結び方(ノット)などのロープの取り扱いを含めるものであった。
また、プロレスにおけるリングのロープを利用した動き全般も、ロープワークと呼ぶ。
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[編集] 先端処理
ロープの末端はほつれが生まれやすく、ロープの劣化の原因となる。これを防ぐためにロープの先端を固めることがロープワークでは必須である。
簡単に先端を固める場合はビニールテープなどで巻くことで済ませる。接着剤で固める方法や、(合成繊維の場合は)火であぶって融かし固める方法もある。本格的には、糸で縛ったり縄を編み込んだりして処理する。
ビニールテープを使用して先端処理を行う場合は、切ってからビニールテープを巻くと、奇麗に巻けないか、巻けてもすぐに剥がれ、ほつれを生みだしやすいので、あらかじめロープを必要な長さに切断する際に切断点を中心にしてビニールテープをきつく巻いてから、ビニールテープを巻いた部分の中間を切断することで処理する方法をとると良い。
[編集] 用途
ロープワークの用途はさまざまであり、その用途に適した結びが考案されている。同様の用途であっても、船舶や登山などの特殊な環境に適した結びが考案されている。結びの用途には、物の固定用途が主なものといえようが、古代インカのキープ(Khipu)に代表される結縄による文字や数字の記録及び沖縄地方に伝わる藁算に代表される計算という用途もある。また、ネクタイやリボンのように装飾を用途とする結びもある。
用途に対応する方法としては、結びの他にロープの素材も重要な要素となる。
- 1本の紐の片端、もしくは中間にこぶを作る。
- 紐の脱落防止や、紐を引く際の助けとするための結びである。一重8の字結び(シングル・フィギュア・エイト・ノットsingle figure eight knot)、止め結び(オーバーハンド・ノット overhand knot)。
- 紐で環を作る。
- 紐を杭などにかけたり、ものを釣ったりする際に用いる際に行われる結びである。簡単に作れること、力をかけても環が広がったり狭まったりしないこと、簡単にほどけることなどが要求される。もやい結び(ボーライン・ノットbowline knot)、二重8の字結び(ダブル・フィギュア・エイト・ノットdouble figure eight knot)、テグス結び(フィッシャーマンズ・ノットfisherman's knot)、よろい結び(ハーネス・ループharness loop)。
- ものを縛る。
- 紐が動かないようにものに結びつけたり、ものが動かないように紐に結びつけたりする際の結びである。力をかければ環を縮めやすいこと、環を縮めたら元に戻りにくいこと、場合によっては簡単にほどけることなどが要求される。フレンチ結び(クレイムハイスト・ノットklemheist knot)、ハーフヒッチ half hitch、自在結び(トートライン・ヒッチ tautline hitch)、巻き結び(クローブ・ヒッチ clove hitch)、外科結び(サージェンズ・ノット surgeon's knot)。
- ロープ同士をつなぐ。
- 簡易的に紐の継ぎ足しをする際の結びであり、またものを縛る際にも使われる。テグス結び(フィッシャーマンズ・ノット fisherman's knot)、蝶結び(ボウ・ノット bow knot)、本結び(リーフ・ノット reef knot)。
- 自動車を牽引する。
- 故障した自動車を他の自動車で牽引するための結びとしては、牽引時の強度とともに使用後に容易に解けることも要求される。フックにロープを通し、50cm程の間隔を置いてハーフ・ヒッチ、更に50cm程の間隔を置いてハーフ・ヒッチ、更に50cm程の間隔を置いて変形ボーラインを設ける方法がある。二つのハーフ・ヒッチを設けることによって、変形ボーラインの結びが堅くなり過ぎず、使用後に解くことを容易にする効果がある。
- 荷台の荷物を固定する。
- 荷台の荷物を固定し、移動中などの荷崩れを防ぐための結びとしては、固定する際に締める機能や運搬時の強度とともに荷下ろしの際に容易に解けることも要求される。結び始めには、ラウンド・ターンとトゥー・ハーフ・ヒッチの組み合わせ、クローブ・ヒッチとハーフ・ヒッチの組み合わせ、ボーラインを用いる。結び終わりには、ワゴナーズ・ヒッチまたはトラッカーズ・ヒッチtrucker's hitch を用いる。
[編集] ノット
ノットとは、ロープワークの際の結び方を言う。
様々なノットを集め、1つにあつめたものをノットボードというが、ノットボードは教育用として用いられるだけでなく、工芸品もしくは屋内装飾品などの観賞用としても用いられている。
[編集] 主なノット
詳細は結び目を参照。
- もやい結び(ボーライン・ノット bowline knot)
輪をつくる結び方。基本的な結び方の一つ。簡単に結ぶことができ、なおかつ強度的に優れている。解くのも比較的容易。一度作った輪は大きさが変わらない。基本となるノーマル・ボーライン・ノットと応用形態となる変形ボーライン・ノットがある。変形ボーライン・ノット(variation of bowline knot)は、最も信頼性及び安全性が高い結びのひとつで、命綱にはこの結びを用いる。
応用範囲の広い結び方であり、船舶関係のみならず、登山やキャンプ、レスキュー、工作など、幅広い分野で使用されている。
ノーマル・ボーライン・ノットの結び方は右図。下方向への負荷に強い輪ができあがる。しかし、それ以外の方向への負荷を断続的にかけることで、輪がほどけてしまうことがあるので、運用時には配慮が必要。そのため、もやい結びの基本形は登山での自己確保用としてはほとんど使用されていない。
- 8の字結び(フィギュア・エイト・ノット figure eight knot)
コブを作る結び方。簡単に結ぶことができ、ほどけにくい。結び目が8の字に見えることからこう呼ばれている。シングル・エイトとダブル・エイトがある。シングル・エイトは、ロープに瘤を作ることを目的とする結びであり、ダブル・エイトは、輪を作ることを目的とする結びである。
フィギュア・エイト・ノットという名称は長いため、略してエイト・ノットと呼ぶことがある。また、2重8の字結び(ダブル・フィギュア・エイト・ノット)を略して単にエイト・ノットと呼ぶこともある。
- 2重8の字結び(ダブル・フィギュア・エイト・ノット double figure eight knot)
ロープを二つ折りにした状態で、8の字結び(エイト・ノット)にする結びである。結び目が二重の8の字となることから、このように呼ばれる。輪を作ることを目的とする結びの一つである。非常にほどけにくく、登山においてはハーネスとロープを結びつけるなど安全性が重視される場面でよく使われる。輪の大きさは、結び目を緩めた状態で複雑に調整することとなり、濡れた状態や堅く締まった状態での輪の大きさの調整を要する用途には適さない。
略して「ダブル・エイト・ノット」、単に「8の字結び」などと呼ぶこともある。
誤った末端処理によって、結び目がフリップしてほどけてしまう事故も起こっている。
参考 : エイトノットがほどける事故に関する注意(遭難対策常任委員会)
- 本結び(リーフ・ノット)