ランチア・ストラトス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ストラトスとはランチアが作ったスポーツカー。世界ラリー選手権(WRC)で勝利することを目的に開発されたスーパーカーである。
フェラーリ・ディノやフィアット・ディノに使われたものと基本的に同じ、フェラーリの2418ccのV6エンジンをリアミッドシップに横置きし、後輪を駆動する。
当時の常識では、ラリー競技はあくまで市販車両をレース用に改造して出場するものだった。グループ4も市販車両の競技用特別仕様を想定したものである。しかし、ランチアはグループ4のホモロゲーション取得のための生産義務台数が「連続24ヶ月間に500台」と少ないことを利用し、サーキットを走るような、リアミッドシップにエンジンを積んだレーシングカーをラリーに持ち込んだのである。
ただ、グループ4の承認は1974年10月におりたが、審査の時点では規定台数(500台→400台に変わっていた)を製造するための部品がある、または発注済みである、というレベルでしかなく、規定台数には程遠く、プロトタイプや競技用車両すら台数に含まれており、実際に規定台数が製造できたのは80年代に入ってからと噂される。このような生産台数に関する疑わしさは、グループB時代のラリー037やデルタS4においてもつきまとった。
ランチアはストラトスその他で1974、1975、1976年の世界ラリー選手権製造者部門のタイトルを獲得した。(1974年はフルビアやベータ・クーペでのポイントを含んだ結果)
世界ラリー選手権での初勝利は、グループ4ホモロゲーション取得直後の地元イベント、1974年サンレモ・ラリー。
最後の優勝はフランスのプライベートチーム、シャルドネによる、1981年ツール・ド・コルス。
[編集] ホイールベースとトレッド
ホイールベースとは前後輪の距離、トレッドとは左右輪の距離の事である。通常、ホイールベースが長いほど直進安定性が良いとされている。ストラトスのリヤのトレッドは日産・スカイラインGT-Rに近い数値なのに対してホイールベースは現在販売されている軽自動車のホイールベースよりも短い。これは「前後に短く左右に広い」ということであるが、つまるところストラトスは直進安定性が極端に悪いことを意味している。
しかし、その不安定さはミッドシップのエンジンレイアウトの効果もあり、抜群の回頭性を生んだ。その回頭性によって得たコーナーリングスピードはライバルを圧倒し、ストラトスを優勝へと導き、伝説級の車へと押し上げたのである。その人気は現在でもストラトスを第一級のコレクターズアイテムとして存在させている。
直線を捨て、コーナーに全てを捧げた車。それがストラトスという車である。