ユークリッド空間
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ユークリッド空間(Euclidean space)は、エウクレイデス(ユークリッド)が研究したような幾何学の場となる平面や空間、およびその一般化であり、そのような平面や空間はそれぞれ、2次元、3次元ユークリッド空間に当たる。また、ユークリッドの意味の平面などであることを明示してユークリッド平面などともいう。
[編集] 定義
負でない整数 n について、n 個の実数の組全体の集合 Rn の二点 a = (a1, a2, ..., an), b = (b1, b2, ..., bn) に距離
を考えている時、Rn のことを、n 次元ユークリッド空間といい、En または単に、Rn と表す。また、このような距離のことをユークリッド距離という。
[編集] 性質
定義から、ユークリッド空間は完備距離空間であり、従って位相空間でもある。またユークリッド距離はピタゴラスの定理を基にして定義される距離であり、したがってユークリッド空間では常にピタゴラスの定理が成立する。
n 次元ユークリッド空間は n 次元(位相)多様体の原型的な例であり、可微分多様体の例ともなっている。n が 4 でなければ n 次元ユークリッド空間に同相な位相多様体は、可微分構造まで込めて同相(微分同相)である。しかし n = 4 のときはそうならないという驚くべき事実が、1982年にシモン・ドナルドソンによって証明された。この反例となる(すなわち 4 次元ユークリッド空間と同相だが微分同相でない)多様体はエキゾティック4次元空間 (exotic 4-spaces) と呼ばれる。
ユークリッド空間の位相的性質について、Enの部分集合は、それがある開集合に同相となるものならばそれ自身が開集合である。また、n ≠ m であれば En と Em は互いに同相でない。これは明白な事実のようであるが、それでいて証明するとなるとそれは容易ではない。
n 次元ユークリッド空間は幾何学的ベクトルによるアフィン構造も備えており、原点と座標系を固定して(数)ベクトル空間と考えることもできるが、さらに内積
- a · b = a1b1 + a2b2 + a3b3 + … + anbn
を考えると、ヒルベルト空間になることが分かる。