マジャル人
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マジャール人(マジャールじん、ハンガリー語 magyar(magyarok=複数形)は、ハンガリー国家の根幹をなす民族。ハンガリー人(英語 Hungarian)とも言うがこの場合ハンガリー国籍を有する人という意味になるので注意が必要である。言語的・系統的にはウラル語族(サモエード諸族)に属する。言語はハンガリー語(マジャール語)。多くの民族集団を含み、またルーマニアの200万人をはじめとして、全人口の1/3はハンガリー以外に居住している。
[編集] 概要
一般的にはマジャール人の起源は以下のように説明される。 マジャール人はウラル山脈の中南部の草原で遊牧を営んでいたが、9世紀にヨーロッパへの移住を開始し、黒海北岸に到達。さらにアールパード王に率いられハンガリー平原に移住した。彼らはヨーロッパを荒らしまわったが、レヒフェルトの戦いにおいてオットー1世に敗れると、ハンガリー平原に統一国家を建設するに至った。 10世紀後半にはアールパード家のイシュトヴァーン1世がキリスト教に改宗し、教皇からハンガリー王の戴冠を受け、ハンガリー王国が成立した。 しかし、「ハンガリー人」は歴史的に、多くの民族の影響を受けた(フン、アバール、ゲルマン、ケルト、キンメリオス人、サルマート、スキタイ、カフカス、ハザール、クマン、パローツ、アラン人、スラブ人、ルーマニア人、ユダヤ人、ロマ、ドイツ人、アルメニア人など)。ドハーニ街シナゴーグに代表されるユダヤ教改革派は、ユダヤ教徒のハンガリー人であるといってもいい。 フン族もマジャル人の起源のひとつとされており、そのフン族は古代中国の漢王朝を苦しめた匈奴族の末裔とされているため、ハンガリー人は匈奴族の血をひく民族のひとつの可能性がある。
バルトーク・ベーラ作曲・バラージュ・ベーラ(ユダヤ系)脚本のオペラ「青髭公の城」は、サボー・イシュトヴァーン監督、ショルティ・ジェルジ参加の映画化が決定されていた(残念ながらショルティは死去する)。サボーはショルティに「ハンガリーに優れた音楽家が生まれるのはなぜか」と聞かれ、「マジャル性とユダヤ性との混交、そこにハンガリー音楽の特性がある」と述べている。チャールダーシュという言葉を初めに使ったロージャヴェルジ、トランシルバニア民謡を採集しバルトークを引き継いだリゲティもユダヤ人であった。 バルトークのような「純粋な」マジャール性だけでなく、ユダヤ性との混交、それもハンガリー音楽・文化を解く重要なキーワードである。
また、ロマはその国の音楽を守っている、ともいわれる。伝統的なもの、その上のロマ性、などを抜きにしてはハンガリー音楽やルーマニア音楽が成り立たないのと同じである。