フェルマー数
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フェルマー数とは 22n + 1 (n は自然数)の形に書くことができる自然数のことである。n 番目のフェルマー数はしばしば Fn と記される。
この数はピエール・ド・フェルマーが、 n に自然数を代入したとき常に素数を生成する式として提示したものであったが、この主張は後にオイラーによって誤っていることが証明されている。オイラーによる反例は n = 5 という比較的小さなフェルマー数に対して為されたものであっが、実際にフェルマー数のはじめの方のいくつかを計算すると
- F0 = 21 + 1 = 3
- F1 = 22 + 1 = 5
- F2 = 24 + 1 = 17
- F3 = 28 + 1 = 257
- F4 = 216 + 1 = 65537
- F5 = 232 + 1 = 4294967297
- F6 = 264 + 1 = 18446744073709551617
- F7 = 2128 + 1 = 340282366920938463463374607431768211457
という値が得られ、フェルマー数のほとんどが相当に巨大な数となることがわかる。それと同時にこれらが小さな素因数を含んでいないことがフェルマー数の因数の発見を遅らせた要因の一つである。
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[編集] 性質
[編集] 基本的性質
フェルマー数は次の漸化式を満たす:
- Fn = (Fn − 1 − 1)2 + 1,
フェルマー数は全て奇数であるから、4番目の式は相異なるどの二つのフェルマー数も互いに素となることを意味することになる。
フェルマー数は次の合同式を満たす。
- n ≥ 2 ならば、 Fn ≡ 17 or 41 (mod 72)
- n ≥ 2 ならば、 Fn ≡ 17, 37, 57 or 97 (mod 100)
nn + 1 が素数ならば、n = 22m となる m が存在する。よって nn + 1 = F2m+m である。
[編集] フェルマー数の素因数
フェルマー数 Fn の素因数は k 2n+2 + 1, k ≥ 3 の形をしている(Lucas)。フェルマー数はどの二つも互いに素なので、任意の n に対して k 2n + 1, k = 1, 2, ... の形の素数が無限に多く存在することが導かれる。また実際に 3 × 2n+2 + 1 が Fn を割り切る例が存在する。
フェルマー数 Fn の最大の素因数 P(Fn) は
を満たす(Grytczuk, Luca and Wojtowicz, 2001)。
すべてのフェルマー数の素因数全体の集合を S とする。Golomb(1955) は S の元の逆数の和が収束するか否かという問題を提出したが、Krizek, Luca, Somer(2002) は S の元で x より小さいものの個数は
- O(x1 / 2logx)
となることを示し、この問題を肯定的に解決した。
[編集] その他の性質
22m ≡ −1 (mod Fm) より、2 の Fm を法とする位数は 2m+1 で、これは Fm − 1 の約数である。すなわち、フェルマー数は 2 を底とする擬素数である。また、フェルマー数の積
も擬素数である(Cipolla, 1904)。
フェルマー数は累乗数にはならず、多角数にもならない。また、完全数または友愛数にはならず(Luca, 2000a)、二項係数 nCk (n ≥ 2k ≥ 2) の値にもならない(Luca, 2000b)。
Golomb(1963) はフェルマー数の逆数の和は無理数であることを示した。なお、ErdosとStrausはさらに一般的な結果を得ている。
フェルマー数はまた、正多角形の定規とコンパスによる作図の問題とも関係がある。カール・フリードリヒ・ガウスは、正 n 多角形が作図可能になる必要十分条件を求めたが、それは「n が 2の冪であるか、異なるフェルマー素数の積と 2 の冪の積であるとき」というものである。
フェルマー数の性質については、Krizek, Luca, Somer(2001) が詳しい。
[編集] フェルマー素数
フェルマー数が素数であるとき、フェルマー素数という。4番目までは素数なので、フェルマーは、すべてのフェルマー数はフェルマー素数であると予想したが、5番目のフェルマー数は次のように分解できることを 1732年にオイラーが示し、反例が与えられた。
オイラーはフェルマー数 Fn の因数は k 2n+1 + 1 の形となることを証明した。これにより n = 5 の場合には、F5 の因数は 64k + 1 の形をとる。このことを利用して、オイラーは因数 641 = 10 × 64 + 1 を見つけたのである(実際には上で書いたように、k 2n+2 + 1 の形のものに限られる)。
フェルマー数 Fn が素数である為の必要十分条件は
となることである(Pepin)。
また、定規とコンパスによる作図の問題の1つである、定規とコンパスのみを使い正多角形を作図できるかという問題において、正 n 角形で n を素因数分解したときに奇数因子が全てフェルマー素数のどれかであり、なおかつ同じフェルマー素数が2つ以上存在しない場合のみ、作図可能だということがガウス により証明されている。
現在 F5 以降のフェルマー数の中に、素数となるようなものが存在するかどうかは知られていない。また、フェルマー素数やフェルマー合成数が無限にあるかどうかも知られていない。
フェルマー数の素数性、素因数分解に関する情報は外部リンクに挙げたサイトが詳しい。
[編集] その他の未解決問題
フェルマー数は平方因子を持たないと予想されているが、未だに解決されていない。
m = 14, 20, 22, 24 に対して Fm は合成数であることが知られているが、その素因数は一つも知られていない。 k を一つ決めた時に k 2m+2 + 1 が Fm を割り切る現象が無限に多く起こるかどうかも知られていない。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- P. Erdos and E. G. Straus, On the irrationality of certain Ahmes series, J. Indian Math. Soc.(N. S.) 27(1963), 129--133.
- S. W. Golomb, On the sum of the reciprocals of the Fermat numbers and related irrationalities, Canad. J. Math. 15(1963), 475--478.
- A. Grytczuk, F. Luca and M. Wojtowicz(2001), Another note on the greatest prime factors of Fermat numbers, Southeast Asian Bull. Math. 25(2001), 111--115.
- Florian Luca(2000a), The anti-social Fermat number, Amer. Math. Monthly 107(2000), 171--173.
- Florian Luca(2000b), Fermar Numbers in the Pascal Triangle, Divulg. Math. 9(2001), 189--194, [1].
- Michal Krizek, Florian Luca and Lawrence Somer(2001), 17 Lectures on Fermat Numbers: From Number Theory to Geometry, Springer, CMS Books 9, ISBN 0387953329.
- Michal Krizek, Florian Luca and Lawrence Somer(2002), On the convergence of series of reciprocals of primes related to the Fermat numbers, J. Number Theory 97(2002), 95--112.