フィボナッチ数
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フィボナッチ数とは、
で定義されるフィボナッチ数列の各項の数
- 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, 1597, 2584, 4181, 6765, 10946, 17711, 28657...
である。フィボナッチ数列のどの項も、その前の2つの項の和となっている。
目次 |
[編集] 兎の問題
この数列は通称レオナルド・フィボナッチにより考案された次の問題から導かれる。
- 兎の問題
- 1つがいの兎は、産まれて2ヶ月後から毎月1つがいずつの兎を産む。
- 1つがいの兎は1年の間に何つがいの兎になるか?
この条件のもとで、つがいの数は次の表のようになる。
産まれたつがい | 1ヶ月目のつがい | 2ヶ月目以降のつがい | つがいの数(合計) | |
---|---|---|---|---|
0ヶ月目 | 1 | 0 | 0 | 1 |
1ヶ月目 | 0 | 1 | 0 | 1 |
2ヶ月目 | 1 | 0 | 1 | 2 |
3ヶ月目 | 1 | 1 | 1 | 3 |
4ヶ月目 | 2 | 1 | 2 | 5 |
5ヶ月目 | 3 | 2 | 3 | 8 |
6ヶ月目 | 5 | 3 | 5 | 13 |
7ヶ月目 | 8 | 5 | 8 | 21 |
8ヶ月目 | 13 | 8 | 13 | 34 |
9ヶ月目 | 21 | 13 | 21 | 55 |
10ヶ月目 | 34 | 21 | 34 | 89 |
11ヶ月目 | 55 | 34 | 55 | 144 |
12ヶ月目 | 89 | 55 | 89 | 233 |
どの月のつがいの合計も、その前の2つの月での合計の和となり、フィボナッチ数が現れていることがわかる。
[編集] 一般項
- フィボナッチ数列の一般項は次の式で表される:
- ただし、
- は黄金比。
- 次の近似式は Fn の値を0.28以下(n > 4 のとき1 %以下)の誤差で与える。
- したがって、Fnの正確な整数値は以下の式で与えられる。
- ただし、は床関数。
- フィボナッチ数列の漸化式は次のように行列表現できる:
- ゆえに
[編集] 性質
- 隣り合うフィボナッチ数の比は黄金比 φ に収束する。
- 導出:
- とおけば、
- 導出:
- p と q の最大公約数が r であるならば Fp と Fq の最大公約数は Fr である。
- このことより以下を導くことができる。
- m が n で割り切れるならば、Fm は Fn で割り切れる。
- 連続する2数は互いに素であることより、隣り合うフィボナッチ数も互いに素である。
- このことより以下を導くことができる。
- フィボナッチ数の累和や累積について以下の式が成り立つ:
[編集] その他の話題
[編集] 最初の50項
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, 1597, 2584, 4181, 6765, 10946, 17711, 28657, 46368, 75025, 121393, 196418, 317811, 514229, 832040, 1346269, 2178309, 3524578, 5702887, 9227465, 14930352, 24157817, 39088169, 63245986, 102334155, 165580141, 267914296, 433494437, 701408733, 1134903170, 1836311903, 2971215073, 4807526976, 7778742049, 12586269025
[編集] トリボナッチ数
トリボナッチ数とは、次のように定義されるトリボナッチ数列に現れる数のことである。
フィボナッチ数列が「前の2項の和」なのに対し、トリボナッチ数列は「前の3項の和」である。
最初のいくつかの項は、次のようになる。
- 1, 1, 2, 4, 7, 13, 24, 44, 81, 149, 274, 504, 927, 1705, 3136, 5768, 10609, 19513, 35890, 66012, ...
トリボナッチ数列の一般項は次で表される。
ただし、α, β, γ は方程式 x3 - x2 - x - 1 = 0 の3解
である。ただし、
は1の虚の立方根の1つ。
また、上の3つの根のうち、実数解αのことをトリボナッチ定数という。これはフィボナッチ数列の黄金比にあたる定数で、トリボナッチ数列の隣り合う2項間の比は、トリボナッチ定数に収束する。
[編集] テトラナッチ数
テトラナッチ数は、トリボナッチ数列と同様に次のように定義される、テトラナッチ数列に現れる数のことである。
フィボナッチ数列が「前の2項の和」、トリボナッチ数列が「前の3項の和」なのに対し、テトラナッチ数列は「前の4項の和」である。
最初のいくつかの項は、次のようになる。
- 1, 1, 2, 4, 8, 15, 29, 56, 108, 208, 401, 773, 1490, ...
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 中村 滋『フィボナッチ数の小宇宙(ミクロコスモス)―フィボナッチ数、リュカ数、黄金分割』日本評論社 ISBN 4535782814
- R.A.ダンラップ『黄金比とフィボナッチ数』日本評論社 ISBN 4535783705
- 佐藤 修一『自然にひそむ数学―自然と数学の不思議な関係』講談社ブルーバックス ISBN 406257201X
- Thomas Koshy, "Fibonacci and Lucas Numbers (Pure and Applied Mathematics (Wiley))", Wiley-Interscience ISBN 0471399698
- Leonardo Pisano Fibonacci, "The Book of Squares", Academic Press ISBN 0126431302
- Laurence Sigler, "Fibonacci's Liber Abaci: A Translation into Modern English of Leonardo Pisano's Book of Calculation (Sources and Studies in the History of Mathematics and Physical Sciences)", Springer-Verlag ; ISBN 0387407375 ISBN 0387954198