パラジクロロベンゼン
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パラジクロロベンゼン | |
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IUPAC名 | 1,4-Dichlorobenzene |
別名 | |
分子式 | C6H4Cl2 |
分子量 | 147.00 g/mol |
CAS登録番号 | [106-46-7] |
形状 | 白色固体 |
密度と相 | 1.25 g/cm3, |
相対蒸気密度 | (空気 = 1) |
融点 | 53 ℃ |
沸点 | 174 ℃ |
昇華点 | {{{昇華点}}} ℃ |
SMILES | ClC1=CC=C(Cl)C=C1 |
出典 | ICSC |
パラジクロロベンゼン(パラジクロルベンゼン、Paradichlorobenzene、1,4-ジクロロベンゼン)は化学式C6H4Cl2、分子量147の、ベンゼンの二塩化物である。パラ-DCB、p-DCBとも呼ばれる。CAS登録番号は106-46-7。
衣服を食い荒らす虫、カビなどを忌避するための防虫剤や、トイレ、ゴミの容器などの消臭剤として用いられる。防虫剤としてParamoth、Para crystals、Paracideなどの名称で知られている。
[編集] 物性
融点53℃、沸点174℃。常温で、昇華により強い臭気を発する白色の固体である。空気中では固体から気体へゆっくりと昇華する。臭いが強いが故に、空気中に極微量あるだけでも嗅ぎ分けることができる。主な用途は防虫剤およびトイレの消臭ブロックである。
空気中では数ヶ月間で無害化され、水に難溶、土壌中の生物からでは容易には分解されない。水や土壌から蒸発しやすく、植物や魚類の体内に蓄積される。
[編集] 健康被害と対策
防虫剤などのパラジクロロベンゼン製剤は、通常の使用の範囲ではヒトへの健康被害の根拠は示されていないが、高濃度では害を及ぼす可能性がある。家庭での非常に高濃度のp-DCBの使用は、目まい、頭痛、肝臓障害を起こす。一部の症例では、含有製品を数ヶ月から数年にわたり使用していた。
高濃度のp-DCBを(脱臭室で1,000回以上)吸入した労働者が鼻と目に炎症を起こしたとの報告があった。これは特有の甘い香りのためにp-DCBの製品を数ヶ月から数年にわたり常用していた場合である。皮膚の発疹と赤血球の減少が見られた。
アメリカの保健社会福祉省(DHHS)は、p-DCBは発ガン性を持つ可能性があると定めた。人間に対してガンを発生させる直接の根拠はないが、水生動物に高濃度p-DCBを投与した結果、肝臓や腎臓に腫瘍を起こしている。
パラジクロロベンゼンがヒトや動物の胎盤や胎児に到達するかどうかの実験や研究は行われていないが、類似の化学物質と同様の結果になる可能性がある。しかしp-DCBが生命に異常を来すという根拠はまだ無い。母乳中のジクロロベンゼンを検出したという研究はあるが、p体ついては特に測定されていない。
子どもは大人よりもこの物質にさらされるリスクが高く、家庭の防虫剤、トイレの消臭剤の誤飲などの危険がそれである。子どもに対する同物質の影響についての詳細は乏しいが、恐らく大人と同様の影響だと思われる。 p-DCBを含む製品を皮膚に接触させたりしないように注意する。防虫剤、トイレの消臭剤等は幼児の手の届かない所に保存する。家庭用の化学製品は専用の容器の保存する。特に子どもが飲食物と誤解しやすい容器(ペットボトルなど)には保存しないべきである。
パラジクロロベンゼンへの暴露を測定する試験として最も一般的な方法は、p-PCBの分解生成物である2,5-ジクロロフェノールの尿や血液中の濃度を測定するものである。尿中に2,5-ジクロロフェノールが存在すると、1日ないし2日以内にp-DCBに暴露されたことがわかる。p-DCBの血液中の濃度の測定はそれほど一般的ではない。
アメリカの環境省(EPA)は飲料水中のp-DCBの最大許容量を75μg/ℓとしている。
p-DCBはEPAに登録された殺虫剤なので、製造者がp-DCBを殺虫剤として使用する際は、EPAにその旨を通知しなければならない。
アメリカの労働安全衛生庁(OSHA)は、1日8時間、週40時間労働での空気中の最大許容量を75ppmとしている。
[編集] 異性体について
o-ジクロロベンゼン(1,2-ジクロロベンゼン)
m-ジクロロベンゼン(1,3-ジクロロベンゼン)