ハーマン・ホレリス
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ハーマン・ホレリス(Herman Hollerith、1860年2月29日 - 1929年11月17日)はアメリカの発明家。パンチカードを使用し、数千数万のデータから統計情報を迅速に集計するタビュレーティングマシンを開発した。
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[編集] 生涯
1860年2月29日、ニューヨーク州バッファローで、ドイツラインラント=プファルツ州出身の両親(ヨハン・ゲオルグ・ホレリス(1808年 - 1869年)とフランシスカ・ブルン)から生まれた。1875年、ニューヨーク市立大学シティカレッジに入学し、1879年、コロンビア大学鉱山学校で鉱山工学(Engineer of Mines)の学位をとって卒業。 1880年、マンハッタンで鉱山技師となった彼は、1890年にはコロンビア大学でPh.D.を取得した。1890年、メキシコのベラ・クルス出身のルシア・ビバリー・タルコット(1865年 - ?)と結婚し、後に6児を儲けた。発明以外では、彼は3つのものを大事にした。それは、ドイツ人の伝統、プライバシー、猫のビスマルクである。1929年、心臓発作により死去。墓はワシントンD.C.ジョージタウンのオークヒル墓地にある。
[編集] 統計データの電気集計
アメリカ合衆国統計局(当時は国勢調査局)は10年に1度国勢調査を行っていたが、1880年の国勢調査は集計作業が9年もかかっていた。ホレリスは大学卒業後に国勢調査局のジョン・ショー・ビリングズ統計部長に誘われて助手として働いた、そして、この大変な作業を目にしたのである。また、このままでは1890年の国勢調査は10年以内に集計が終わらないことが確実だった。
ホレリスは1882年にMITの機械工学科で過ごした。その間にパンチカードにデータを格納するシステムを試作している。これは、鉄道の車掌が乗車券の様々な場所に穴を開けることで持ち主の状態を表すことからヒントを得たものであった。ジョン・ショー・ビリングズに示唆を受けて、ホレリスはパンチカード上の各位置に穴があるかどうかを電気的に検知して集計する仕組みを開発した(バネ付きの針の並んだ板と水銀の入ったトレーの間にパンチカードを挟んで針が水銀につくと導通して穴があることがわかる)。ビリングズが示唆した鍵となるアイデアは、個々のデータを全て数値に置き換えることであった。ホレリスはパンチカードの所定の位置に数値を記録すれば、それを元にカードを機械的にソートし、所定の桁位置のデータを集計できると気づいた。彼は1889年1月8日の特許395782号で自身のアイデアを以下のように記述している。
ここで、規格化された充分な強度を持った穴あきのシートで制御される電磁石回路によって操作された機械式カウンターによって統計項目を個別または組み合わせて数える。
1888年、国勢調査局は統計作業を効率化するための発明コンテストを行い、ホレリスのシステムが選ばれた。これにより、1890年の国勢調査でホレリスのタビュレーティングマシンが大々的に使われることになった。
[編集] タビュレーティング・マシン社
彼は国勢調査局との契約に基づいてマシンを製作し、1890年の国勢調査は1880年よりもずっと短い期間(約2年)で完了した。1896年、ホレリスはタビュレーティングマシン社を設立した。世界各国の国勢調査局にマシンを貸し出し、パンチカードを販売した。大手保険会社も同様である。システムがうまく動作するよう、彼は世界初の自動カード供給機構、世界初のキーパンチ機(キーボード操作でカードに穴を開ける機械)を開発し、熟練したオペレータなら一時間で200~300枚のカードをパンチすることができるようになった。1906年の Type I タビュレータでは配線盤を備え、組み立てなおさなくても別の集計作業ができるようにした(プログラミングに向けた最初の一歩である)。1890年のタビュレータは固定的な結線であり、1890年の国勢調査用カードしか処理できなかったのである。これらの発明は情報処理産業の基盤となった。
[編集] インターナショナル・ビジネス・マシンズ社
1911年、彼の会社を含む三社が合併して コンピューティング・タビュレーティング・レコーディング社(CTR)が結成された。後にトーマス・J・ワトソンを社長に迎えると、同社はIBMに名前を変更した(1924年)。
[編集] 参考文献
- 『コンピューター200年史 -情報マシーン開発物語-』M.キャンベル=ケリー他(著)、山本菊男(訳)、海文堂(1999年)、ISBN 4-303-71430-5
[編集] 外部リンク
いずれも英文
- ホレリスの特許(1889年~)
- Hollerith page at the National Hall of Fame
- Map to his gravesite 51番
- More on Hollerith and his original tabulator
- "Inventor of the Week" biography at Lemelson-MIT Program site
- MacTutor Biography:Hollerith
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