トンデモ本
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トンデモ本(とんでもぼん)とは、「著者の意図とは異なる視点から楽しむことができる本」という意味であるが、転じて疑似科学(エセ科学)という評価を受けている事象を真正の科学であると主張したり、オカルトを本気で主張している本、さらには単に内容が出鱈目の本の意味で使われることもある。
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[編集] 概要
トンデモ本という概念は、後に「と学会」の副会長を務めることになる藤倉珊が「余桁分彌」(よけた ぶんや、『日本SFこてん古典』の作者であるSF作家横田順彌のもじり)名義で発表した一連のエッセイ(後に『日本SFごでん誤伝』 TDSF、1989 に収録)で提唱した概念である。
提唱者によれば、元来は超科学や疑似科学をつるし上げるような意味はなく、ある著者の1冊の著作における執筆内容が自己矛盾している(そしてそれに気づいていない)さまの面白さや、「今年、地球は滅亡する!」と警告した1年前の本などのように、内容が矛盾していたのにそれを認めない著者の著作などを楽しもうという趣旨で提唱されたものである。この観点からすれば、構想が暴走して常軌を逸した展開を見せる小説のようなものもトンデモ本の範疇に入ることになる。したがって、「トンデモ本 = オカルト本」とは言えないし、提唱者の主張を額面通り受け取ると、必ずしも蔑称ではないことになる。
しかし、内容の矛盾や誤りがあることをもってトンデモ本として取り上げるということは、それらの矛盾や誤りを批判という形ではなく、楽しむという形で取り上げるということであるため、実質的には蔑称として捉えられることが多い。『植物は警告する』(ISBN 4884812913) の著者である三上晃は、その著書がトンデモ本として取り上げられた趣旨を理解していなかったため、当初は注目されたことを喜んでいたが、取り上げられた趣旨を後に理解するに至ったため、馬鹿にされたと認識するようになったのは、その例である。また、と学会の会長である山本弘自身、トンデモ本を楽しむというより、トンデモ本を馬鹿にしたり批判したりする態度で、と学会関連の本を執筆することが多い。
[編集] 意味の転用
トンデモ本にはその性質上、疑似科学に基づいた荒唐無稽な内容の書籍が多く、UFO、超能力、超常現象を扱ったものから、ユダヤ陰謀論に関するもの、さらにはあまりにも科学考証のずさんなフィクションも含まれる。そのため、疑似科学自体がトンデモと呼ばれるようにもなった。さらには、この言葉は、俗に議論の際に、相手の意見を無根拠だと非難する際にまで使用されたり、転じて、アメリカ他一部の先進国での訴訟乱発の風潮を「トンデモ訴訟」と呼んだりする用法がある。
また、宗教的な者やインチキにより金儲け主義により増長された疑似科学に対し、科学知識による実証主義的見解から鋭くメスを入れ批判・反論をすること自体は問題ではないが、科学的合理的解釈をする段階で、恣意的にトンデモ批判に有利な情報や結果のみがその反論や検証に繰り込まれたり、批判の対象自体はデタラメに近くとも、それを科学的歴史的に検証する段階で、頭からその対象の内容がインチキと決め付けた視点から歴史、事実に基づかない実証に欠ける解釈に基づき批判することも少なくない。そのような視点に基づく本も、またトンデモ本と評価されることがある。
[編集] 誤った意味の意味の転用
前述などでも触れられているが、自分のイデオロギーなどと反する場合に、その本を頭からトンデモ扱いすることなどは、誤った意味の使い方である。
[編集] 具体例
「トンデモ」とされる本には、一般にはほとんど相手にされないマイナーなものが多いが、ベストセラーとなって社会現象を引き起こした本も少なからずある。
- 1970年代に一世を風靡した五島勉の『ノストラダムスの大予言』は、読者の青少年層に世界の終末が来ることを確信させ、恐怖や期待を振りまきトラウマを残した。
- 1980年代末には、『萬葉集』は古代朝鮮語で解読でき、この手法で古代日本の起源や謎が解決できると主張する本が10冊以上も出版され、古典文学関係としては異例のヒット作となった。
- 1990年代後半にも、超古代文明や人類の起源に関するグラハム・ハンコックの『神々の指紋』やマイケル・ドロズニンの『聖書の暗号』、大衆的な消費財や食品がことごとく有害だと警告する週刊金曜日の『買ってはいけない』などがミリオンセラーを記録し、広く注目を浴びた。
- 1998年には、小林よしのりの『戦争論』がベストセラーになった。この本をトンデモ本に指定した『トンデモ本の世界R』によれば、『戦争論』は「イデオロギーがどうのという以前に、歴史的に間違いだらけであるうえ、論理が破綻しまくっている」、事実歪曲の多い本である。
- 2000年代には、森昭雄の『ゲーム脳の恐怖』が登場し、「テレビゲームで脳が壊れる」とマスコミで大きく取り上げられるなど反響を呼んでいる。
- 近年では『ダ・ヴィンチ・コード』関連本(『ダ・ヴィンチ・コード』そのものは小説であるが、その内容が事実であるかのように解説している書籍)がトンデモ本である可能性が指摘されている。
- こうした本の他に、『リアル鬼ごっこ』の様に余りにも稚拙であったり、荒唐無稽な小説や漫画も取り上げられる事がある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- TDSF Home Page(「と」書室のコーナーで『日本SFごでん誤伝』をオンライン公開中)