トラベラーズチェック
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トラベラーズチェックとは外国を旅行する際に、多額の現金を持ち歩かなくてもすむように発行される外国旅行者向けの小切手で、日本語では「旅行者用小切手」と訳される。英語ではtraveler's check(または cheque)と書き、略してTCまたはT/Cということもある。
外国旅行者が、旅行中の現金の紛失や盗難による亡失を避けるために利用し、百貨店、レストラン、ホテル、その他様々な支払いに使用できる。海外旅行の一般化により、日本人にも馴染みのものとなっている。所定の手続を踏んでおけば紛失や盗難などの亡失時に再発行が受けられるほか、購入、売却の際は、外貨現金の両替に比べて外国為替相場における為替レートが優遇される(=手数料が安い)ことがトラベラーズチェックのメリットである。外国旅行に際しては、トラベラーズチェック亡失時に備えてクレジットカードを併せて所持することも賢明である。
なお、旅行の添乗員のことをtour conductorといいTCまたはT/Cと略されるのでまぎらわしい。「T/Cつきのツアー」という表現がされることがあるが、この場合、もちろんツアーにはトラベラーズチェックがついているのではなく添乗員がついているのである。
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[編集] トラベラーズチェックの種類とブランド
全ての通貨でトラベラーズチェックが発行されているわけではなく、以下の通貨のものが一般的である。
トラベレックス(トーマスクック)、VISA、アメリカン・エキスプレス、三菱東京UFJ銀行などのブランドが有名である。 世界最初のトラベラーズチェックを発行したのはトーマスクック社で、現在はトラベレックス社に吸収合併されてブランド名として残っている。
トラベラーズチェックは一般の小切手のように1枚の小切手に金額が記載されるのではなく、一定単位ごと(アメリカドルで言えば10ドル、20ドル、50ドル、100ドルなど)の小切手がありそれを組み合わせて購入し、使用する。
[編集] トラベラーズチェックの購入
銀行や郵便局などの金融機関、クレジットカード会社、旅行代理店などで購入できる。購入の際は外国為替相場のうちTTSと呼ばれるレートが適用される。TTSは対顧客電信売りといわれるレートで外国送金を行なう際もこのレートが適用される。外貨現金を購入する際はCash Sellingというレートが適用されるがTTSはCash Sellingよりも有利な交換レートになっている。(詳細は為替レートを参照。)
また購入の際に1%の手数料がかかる。外国で使用するものであるから手数料に消費税はかからない。
日本円のトラベラーズチェックを購入する際は、日本円の金額プラス1%の手数料を支払い、現地で使用する時に、日本円のトラベラーズチェックと現地通貨の交換レートが適用されて両替することになる。現地で利用する際の為替リスクを引き受けることにはなるが、渡航する国のトラベラーズチェックがない場合は日本円の現金-->アメリカドルのトラベラーズチェック-->現地通貨の現金という二重の両替の手間と為替の損を考えれば有効ともいえる。ただし、日本円のトラベラーズチェックは国により、特に田舎では使用できない場合もあるので注意が必要である。逆にアメリカドルのトラベラーズチェックは概ね世界中どこでも通用する。
[編集] トラベラーズチェックの署名
トラベラーズチェックには所有者の署名(ホルダーズサイン)欄と使用時の署名(カウンターサイン)欄の2ヶ所の署名欄がある。購入後すぐに全ての小切手にホルダーズサインをしなくてはならない。使用時に相手の面前でカウンターサインをし、両者の一致によって小切手としての効力を発するほか、ホルダーズサインがないトラベラーズチェックについては亡失時の再発行も行われないので、ホルダーズサインを忘れないことに注意されたい。使用時に身元確認のためパスポートを必要とする場合もあるのでパスポートの署名と一致していることが望ましい。
[編集] トラベラーズチェックの使用
使用する際は、前項で述べたように必ず相手の面前でカウンターサインをしなくてはならない。カウンターサインがない限り小切手として有効ではないが、逆に事前にカウンターサインをしてしまうと盗難・亡失の場合現金をなくしたのと同じで何の補償も受けられない。また、正当な所有者かどうか疑われて再度カウンターサインを面前でさせられることになる。
国により多少の違いはあるが、一般に外国人旅行者がよく利用する施設、たとえばホテルや有名百貨店などではそのまま現金と同様に使用できることが多い。つり銭がある場合は現地通貨の現金でくれる。逆に一般の商店などではそのままでは使用できないことが多く、事前に銀行や両替所で現地通貨に両替をしておかなくてはならない。現地通貨への交換レートはトラベラーズチェックを購入した時と同様に同じ通貨の現金の交換レートよりも有利である。トラベラーズチェックを同じ通貨の現金に両替する場合は手数料をとられる場合が多い。
[編集] トラベラーズチェックの売却
旅行後使い残している時は、銀行で売却して日本円の現金に戻すことができる。売却は購入したところでなくてもよい。売却の際の交換レートはTTBというレートが適用される。購入時と同様に外貨現金の売却レートCash Buyingよりも有利である。ただし、トラベラーズチェック・現金とも売却レートは購入レートよりも低いので(よほど短期間に為替レートの大幅な変動がない限り)通常はいくらか損をすることになる。トラベラーズチェックには有効期限がないので、使い残してもそのまま次の旅行のためにおいておく、あるいはトラベラーズチェックによる外貨預金の預入を取扱っている銀行もあるので、それにあてる、という選択肢もある。