ダイバーシティ
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ダイバーシティは、複数のアンテナで受信した同一の無線信号について、電波状況の優れたアンテナの信号を優先的に用いる技術、あるいは受信した信号を合成し、ノイズを除去する技術のこと。送信に対して適用したものは送信ダイバーシティと言う。
携帯電話やPHSにおいては、アンテナを2系統以上有し、電波状況の優れたほうのアンテナを優先的に利用し、通話の安定性を高める技術のこと。
電波は物体にあたると反射する。たとえば、大きなビルのそばで携帯電話を使うと、直接とどく電波と、ビルに反射してとどく電波があり、2つの電波は僅かに到達時間が異なる。すると、2つの電波が干渉して通信の質が落ちる。
これを防止するため、2本以上のアンテナを使って複数の電波を受信し、最も強い電波を選択するあるいは合成する技術をダイバーシティという。2本のアンテナが1/2波長以上離れていれば、それぞれのアンテナの受信状態の相関はないと言われている。ところで、NTTドコモの携帯電話「mova」が使っている800MHz帯の場合、1/2波長は18cm程度となり上述の条件を満たさないが、実際は地板の不完全さにより、相関は低くなることが報告されている。
携帯電話やPHSのアンテナは通常1本だが、本体内部に複数のサブアンテナが入っているものもある。
一部の携帯電話、PHSに用いられ、同方式を採用した携帯電話やPHSには一般に外部に露出している1本のアンテナの他に、本体内にも複数のサブアンテナを有している。例えば、NTTドコモの携帯電話「mova」では本体に2系統のアンテナを有している。CDMA技術を使った携帯電話ではRAKE受信により、ダイバーシティと同等の効果が得られるため、アンテナは1系統でよい。
この方式は携帯電話やPHSの基地局にも用いられ、特にPHS基地局では、アンテナが複数本見られるなど「ダイバーシティ方式」を用いた基地局が非常に多く存在する。
[編集] ダイバーシティの種類
- 空間ダイバーシティ
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- アンテナ選択方式
- 複数のアンテナを用意し、単に電波が強いほうのアンテナをスイッチで切り替える方式である。
- 最大比合成方式
- 複数のアンテナを用意し、強い電波を拾ったアンテナ同士の位相を揃えて合成する方式である。上述のアンテナ選択方式はフェージング軽減が目的であり、電波そのものが強くなるわけではないが、最大比合成方式ではゲインを得ることが出来る。
- 偏波ダイバーシティ
- 複数の偏波のアンテナを用意し、電波が強いほうの偏波に切り替える方式である。偏波は反射により回転するため、送信波と異なった偏波で受信したほうが良いことがあるためである。また、携帯電話機のようにアンテナの角度そのものが実際に変動する場合にも有効である。
- サイトダイバーシティ
- 複数の送信局から同時送信した電波を受信側で合成する方式である。
- 周波数ダイバーシティ
- 異なる周波数ではフェージングピッチも異なるため、1本のアンテナでダイバーシティ効果を得ることが出来るが、2倍の周波数を占有するため、あまり使われない。
- 時間ダイバーシティ
- 移動している場合、フェージングの状態が時々刻々と変わるため、時間をずらして同じ内容を送信することで、1本のアンテナでダイバーシティ効果を得ることが出来るが、2倍の時間がかかるため、あまり使われない。
- 送信ダイバーシティ
- 受信時に選んだアンテナを送信に使う方式である。送受信の周波数が同じであること、移動速度が遅いことが適用の条件になる。