ダイアトニック
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ダイアトニック(diatonic)とは
- 音楽用語で「全音階」のこと。詳しくは「全音階」の項目を参照。
- 蛇腹(じゃばら)系のリード楽器(アコーディオン、コンサーティーナ、バンドネオン、他)について使われる、特殊な専門用語。クロマチックと対になる概念。本項で詳述。
蛇腹楽器の世界では、ある一つのボタンを押したまま、蛇腹を押したときはド、引いたときはレ、というように、別の音が出る「押し引き異音式」(プッシュ・アンド・プル)を、ダイアトニック式と呼ぶ。普通のハーモニカで、ある一つの穴に空気を吹き込んだときと、吸い込むときで、違う音が出るのと同じ構造である。
これに対して、一つのボタン(ないし鍵盤)を押すと、蛇腹を押しても引いても同じ音が出るようにしてある「押し引き同音式」を、蛇腹楽器の世界では「クロマチック式」と呼ぶ。
蛇腹楽器の場合、外見は全く同じでも、ボタンないし鍵盤の配列がダイアトニックかクロマチックかで、奏法も音楽のフィーリングも全く違うため、事実上、別種の楽器になる。アコーディオンやバンドネオン、コンサーティーナなどでの演奏者は、「ダイアトニック派」と「クロマチック派」に分かれ、それぞれ自分の楽器に強い思い入れをもつ傾向がある。
そのため、例えばバンドネオンを購入して習うような場合、自分のあこがれの名奏者がダイアトニック派かクロマチック派か事前に調べておかないと、あとで失望することになりかねない。
また、例えば一口に「ボタン式アコーディオン」と言っても、フランスやロシアの音楽で使われる大型のものはクロマチック式が多く、アイルランドや中南米で使われるものは小型のダイアトニック式が多い。
なお、ダイアトニック・タイプの蛇腹楽器でも、アクシデンタル・キーがあれば、全音階だけでなく半音階も弾けるので、名称だけから誤解しないよう注意を要する。