コンサーティーナ
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コンサーティーナ アコーディオンの一族に属するフリーリード楽器の一つで、六角形ないし八角形の小型の手風琴(てふうきん)である。欧米の民俗音楽などでよく見かける楽器である。英語名はconcertinaであるが、日本語ではまだ固定した表記が無く、コンサティーナ、コンセルティーナ、コンサルチーナなど様々に表記されているため、ネット検索のときなどは注意を要する。
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[編集] 歴史
1829年にイギリスの物理学者・チャールズ・ホイートストンが発明した。命名の由来は、「演奏会」を意味する「コンサート」に女性的な語感をもつ接尾語「-ina」を付けたもの。 ホィートストンが発明したコンサーティーナは、現在、イングリシュ・コンサーティーナ(英国式コンサーティーナ)と呼ばれるタイプである。その後、ジャーマン・コンサーティーナ(ドイツ式コンサーティーナ。大型の四角いタイプで、バンドネオンの原型となった)や、今日、最も普及しているアングロ・コンサーティーナなど、さまざまなタイプのコンサーティーナが発明され、今日に至っている。
[編集] 楽器の構造
六角形(ないし四角形、八角形、十二角形など)の形状をした左右の箱の側面に、ボタン式の鍵盤(キー)が並んでおり、その間に蛇腹(ベロー)がついている。その蛇腹の押し引きで空気を内部の金属リードに送り、ボタンを押すことによって発音する。ボタンの配列は、蛇腹を押したときと引いたときで違う高さの音が出る押し引き異音(ダイアトニック式)と、押したとき、引いたときに同じ音が出る押し引き同音(クロマチック式)の二種類に大別できる。
ダイアトニック式とクロマチック式では、同じくコンサーティーナという名称であっても、奏法や音楽のフィーリングが全く異なるため、事実上は互いに別種の楽器であるといっても過言ではない。
[編集] コンサーティーナの種類
普通、コンサーティーナと言えば、アングロ・タイプとイングリッシュ・タイプの二種類を指すが、実はそれ以外にもさまざまな種類が存在する。蛇腹楽器の常として、外見は同様の形状の楽器でも、奏法や音色、音楽のフィーリングなどによって、全く別種の楽器になってしまうため、楽器購入や学習にあたっては注意を要する。
コンサーティーナの高級品は、職人の手作りであり、奏者の注文に応じてアクシデンタル・キー(増加鍵盤)を追加するなど、一台ごとにきめ細かい改良が施される。世界に数台しかないという稀少タイプのコンサーティーナも存在する(例えば、フラングロ・コンサーティーナ=仏英折衷式、など)。
ここでは、主な種類の紹介にとどめておく。
- アングロ・コンサーティーナ 押し引き異音
現在、世界で最も普及しているタイプである。1850年代にイギリスのジョージ・ジョーンズ(George Jones)が開発した。アングロ・ジャーマン・コンサーティーナ(英独折衷式コンサーティーナ)とも言う。イングリッシュ・コンサーティーナの形状に、ドイツ式コンサーティーナのボタン配列を採用したことからの命名である。
ダイアトニック式のコンサーティーナは、普通のハーモニカと同様、一台の楽器で出せる半音の数は限られる。例えばC調の一列ボタン式(ボタン数は10個前後)なら、ピアノでいう白鍵に相当する音階しか鳴らせない。C/G調の二列ボタン式(ボタン数は20個前後)なら、半音はF#も出せるようになる。三列ボタン式(ボタン数は30個から40個のあいだ)なら、ほとんどの半音をカバーできる。
押し引き異音式は、出せる半音の数が限られているぶん、奏法は簡単で独習が可能である。そのため、ヨーロッパの民俗音楽などで、よく使われる。また蛇腹を激しく押し引きするため、メリハリのある曲(アイリッシュ・ダンスの曲など)を演奏するのに適している。また、ボタン配列の特性上、旋律だけでなく和音演奏も容易である。 なお、押し引き異音で多くの音を出す場合があるために、蛇腹は比較的長い。
- イングリシュ・コンサーティーナ 押し引き同音
ピアノでいう、黒鍵と白鍵に相当する音階のボタンが20から56まである機種があり、ほとんどの半音(#/b)が出る。押し引き同音で多くの音が早く出せるため、蛇腹は比較的短い。蛇腹操作の特性上、なめらかな曲を弾くのにも向いている。和音も演奏できるが、ボタン配列の特性上、一般には、バイオリンのように旋律部分だけを弾くことが多い。
- トライアンフ・コンサーティーナ 押し引き同音
イングリッシュ・コンサーティーナのボタン配列を、さらに改良して洗練したタイプ。演奏者が少ない希少楽器である。
- デュエット・コンサーティーナ
右手が旋律用ボタン、左手がアコーディオンの左手に似たコード伴奏ボタンになっているタイプ。演奏者が少ない希少楽器である。
- ジャーマン・コンサーティーナ
1830年代に、ドイツで開発された大型の四角いコンサーティーナで、バンドネオンの原型となった(バンドネオンの欧米での俗称「タンゴ・コンサーティーナ」が示すとおり、バンドネオンもまた、広義のコンサーティーナの一種である)。各種のジャーマン・コンサーティーナ の中で代表的なのはケムニッツァ・コンサーティーナ(Chemnitzer concertina)である。このタイプは、日本でもまれに輸入した中古品(骨董品)が市場に出るが、外見がバンドネオンと酷似しているため、しばしば日本では混同されており、要注意である(実際には、ボタン配列や奏法など、全く別の楽器である)。
[編集] 外部リンク
メロディオン&コンサーティーナ ホームページ 楽器の内部構造も写真つきで解説。
コンサーティーナ・レビュー 名器の写真、名盤を紹介。
ダイアトニック・アコとコンサーティーナについて アングロ・コンサーティーナの演奏動画(Real Player)有り。
八角手風琴 Maki Aozasa イングリッシュ・コンサーティーナの演奏が聴ける(mp3)。