スコット・ブラッドリー
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スコット・ブラッドリー(Scott Bradley, 1891年11月26日 - 1977年4月27日)はアメリカ合衆国の作曲家。アーカンソー州ラッセルビル出身。
「ドルーピー」シリーズをはじめとするテックス・エイヴァリー監督の作品群や、初期の「トムとジェリー」シリーズなど、映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー (MGM) が制作した漫画映画のために書いた伴奏音楽で知られる。「トムとジェリー」の各作品冒頭で演奏される音楽 "Tom and Jerry Theme" を作曲したのもブラッドリーである。
ブラッドリーによるMGM漫画映画の伴奏音楽は、基本的にフルオーケストラ(小編成の管弦楽オーケストラにピアノとサックスが加わる)によって演奏される。原則として作品開始から終了まで映像のあらゆる動きに即した音楽を付け、「忍び歩きをする」「階段を駆けのぼる」「大笑いする」「飛び降りる」「酔っ払う」「驚く」「大あわてで逃げる」といったキャラクターのあらゆる行為を、グリッサンドやトリルを多用した楽音によって描写している。
クラシックの音楽家として教育を受けた彼は当時の前衛音楽にも造詣が深く、「猫はやっぱり猫でした」(Puttin' On the Dog, 1944年)でネズミのジェリーが犬の人形の首をかぶって歩くシーンでは、シェーンベルクの十二音技法が使われている。ブラッドリーはその後も緊迫した追跡シーンなどに十二音技法をさりげなく使い続ける。
彼の音楽はときおり挿入される衝撃音・爆発音などの効果音と完全に一体化してキャラクターたちの滑稽な動きを鮮やかに物語り、画面を見なくても音楽を聞いただけで何が起きているかがあらかた想像できてしまうほどである。童謡・民謡・ジャズの流行歌・クラシックの名曲などからのおびただしい引用によって、同一の作品内で曲調がめまぐるしく変化し続けるのもブラッドリー作品の顕著な特徴である。
同様の手法でワーナー・ブラザーズ制作の漫画映画に音楽を提供したカール・スターリングと並び、アメリカン・アニメーションの黄金時代を代表する作曲家である。
[編集] 外部リンク
- スコット・ブラッドリーは行為を批評する - 「ドルーピー」シリーズの一つ「迷探偵ドルーピーの大追跡」(Northwest Hounded Police, 1946年)の一場面に付けられた音楽の綿密な分析。このページを含むサイト「Cartoon Music!」には他にもブラッドリーについての興味深い論考がある。
- Scott Bradley - 「トムとジェリー」のファンサイト "The Tom and Jerry Online: An Unofficial Site" 内にある、ブラッドリー紹介ページ(英語)。ブラッドリーの代表作として、あらゆる行為を楽音化する彼の技法の集大成とも言える「パーティ荒し」(The Two Mouseketeers, 1952年)および、敢えてリストのハンガリー狂詩曲第2番を忠実にたどりながらも随所に滑稽な音を加えていく「ピアノ・コンサート」(The Cat Concerto, 1947年)を挙げている。
- Tom and Jerry & Tex Avery Too! Vol. 1: The 1950s (1952-1958) - ブラッドリー作品をまとめたCDの紹介ページ(英語)。「武士道はつらい」(Touché, Pussy Cat! 1954年)「呼べど叫べど」(Deputy Droopy, 1955年)「悲しい悲しい物語」(Blue Cat Blues, 1956年)など、彼の代表作のいくつかをRealPlayer形式で全曲試聴することができる。
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