ジャコビニ流星群
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ジャコビニ流星群(ジャコビニりゅうせいぐん)は、10月8日から10月10日前後の、主として夕刻に見られる、突発的な流星群である。
ジャコビニ・ツィナー彗星 (21P/Giacobini-Zinner) との関連の可能性が非常に高いため、こう呼ばれる。 「10月のりゅう座流星群」、または「りゅう座ガンマ流星群」と呼ばれることがある。
なお、Giacobiniを「ジャコビニ」と表記することへの異論は少ないが、Zinnerの表記は、さまざまである。 Giacobini-Zinner彗星から、その軌道に沿って前後に最大20m/秒で放出される流星物質が、肉眼で見える群流星の素になっているとされ、それに基づく出現予想もされている。
年により出現に大きな変化があり、ペルセウス座流星群やふたご座流星群のように、毎年必ず見られる訳ではない。
1926年より前には、1911年頃の研究により専門家の間では出現の期待が有ったが明確な記録は無く、それ以後になってから、おそらく初めて出現した流星群である。
1926年に初めて活動が確認された後、1933年にヨーロッパで、1946年にアメリカで、いずれも現地の10月9日夕方以降に、顕著な流星雨として観測された。また1952年にはレーダーでのみ観測されている。
また1985年10月8日には日本でも日暮れ時の薄明かりの中、かなり活発な活動がとらえられ、1998年10月8日22時過ぎ(日本時間)を中心にした数時間、流星群が観測された。他にも弱いながら、活動が観察された年がある。
1972年には、母彗星の軌道と地球軌道がほぼ完全に交差し、かつそこを彗星が通過した後まもなく(約58日後)地球が通過したのにもかかわらず、条件の良い日本で流星雨が観測されず、これは当時大きな謎とされた。 現在では、1957年はじめごろの木星との接近等により、たびたびその強い引力を受け、ダストトレイル(特にその後方部分)が、母彗星の軌道に沿った単純な分布ではなく、軌道内側に折りたたまれた形に急に変化した事が原因だったと考えられている。
最近の予想によると、次回の盛んな出現は2011年10月8日夕方(現地時間)のヨーロッパとされている。しかし、2005年10月9日明け方01時10分頃(日本時間)を中心に、1953年の近日点通過時に放出されたダストトレイルが引き起こしたと見られる弱い活動が、中国および欧州で観察された。
1972年に大流星雨が予想された際は、日本でも大きなブームとなり、その予想が外れたことは新聞、テレビのニュースでも取り上げられた。これをモチーフとした曲として、松任谷由実の「ジャコビニ彗星の日」(1979年、アルバム「悲しいほどお天気」に収録)がある。また、1972年から1976年にかけて連載された少年漫画「アストロ球団」で「ジャコビニ流星打法」なる必殺技が登場することからも、当時この流星群が広く知られていたことがわかる。