カーオーディオ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カーオーディオ(Car Audio)は自動車に搭載されるオーディオ機器のことで「カーステレオ」ともいわれる。またラジオチューナー機能のみのものは「カーラジオ」ともいう。
目次 |
[編集] 歴史
初期のカーオーディオは米国の「ガルビン・コーポレーション」が1930年に製作したカーラジオから始まった。これは、モトローラ5T71型という名前であり、モトローラとは、モーター(自動車)のオーラ(音)という意味である。この会社はのちこの名前を社名にした。同じく米国ゼネラルモーターズ傘下では子会社デルコ・エレクトロニクスが1936年にダッシュボード内に装着したカーラジオを製作する。ラジオによる移動中の情報入手や音楽放送の楽しみはあったがドライバーや同乗者ができるのは好きな放送局を選ぶことだけであった。
しばらくして、自分の好きな音楽を聴きたいときに聴ける仕組みができた。音楽用磁気テープを使用したものとしては、最初に4トラックカートリッジが1964年(開発元のある米国では1963年)に発売される。寸法は後述の8トラックとほぼ同じであるが、ピンチローラーは再生機側に搭載されている。またプログラム切り替えは当初手動のみであった。その後自動切り替え機能を搭載した機種も発売されたが、日本市場では本格的な普及には至らなかった。次に現れたのが初期のカラオケシステムで使用された8トラックカートリッジである。しかし当時のオーディオソースの主流はレコードであり、気に入った歌でも家庭で聞くためのレコードと車で聴くための8トラックカートリッジとそれぞれ別に購入するのが一般的だった。録音用生テープや録音用機器もあるにはあったが、主流は家庭ではレコードプレーヤーとコンパクトカセットであり、その上に録音用8トラック機器の購入というのはよほどの好き者であった。この他にも、70年代にはパイオニアからハイパックというカセットテープ大のエンドレスカートリッジを採用したカーオーディオも発売されたが、元となったプレーテープ規格で最大24分という収録時間の短さや一般ユーザー向けに録音機器が出なかったこともあり、数年の間に姿を消した。
80年代頃になるとFMチューナー内蔵型のコンパクトカセットが主流になる。8トラックと同様に録音済み市販テープも購入し聴くことはできたが、それ以上に自分の所有するレコードやFMラジオなどからのエアチェックによる個人の趣味的な録音による自由な選曲のテープを車内に持ち込めるようになったことが画期的であった。好きな女の子とのデートでかける、自分の選曲を集めたマイテープを作ることが流行るのがこの頃である。
80年代後半になるとCDプレーヤー搭載機種も高級機を中心に登場した。購入した音楽ソースをそのままかけられることは8トラック時代から同様であるが、8トラックが酒場カラオケソング中心であったのに対し、レコードと主役を交代しほとんどすべての音楽ソースがCD形態で販売されたことで車内で聴ける音楽ソースを多様化した。マイテープを作らないのであれば家庭のオーディオ機器がなくとも車のオーディオだけで済んでしまう時代の到来となった。
1990年代になるとデジタル化の波が急激に進み、CDが主流となる一方MDが登場しコンパクトカセットの機能はMDに引き継がれる。純正FMラジオと接続する後付け型CDチェンジャーも売れ出した。一方、DCCやDATを搭載した機種も発売されたが、ごくわずかしか売れなかった。
また、80年代の終わりからそれぞれのメーカーの車名を冠し、CDやイコライザー付きデッキを標準装備したり、スピーカーの数を増やして臨場感あふれる音を実現した「スーパーライブサウンドシステム」「ロイヤルサウンドシステム」(トヨタ)「スーパーサウンドシステム」「ホログラフィックサウンドシステム」(日産)といった高級オーディオシステムが、メーカーオプション(一部車種には標準装備)で用意される車種も増えてきた。
2000年以降になるとカーナビゲーションシステムが普及してきたことで、それまでディスプレイ部分に採用されていたFL管や発光ダイオードに代わって液晶ディスプレイを組み込んだ一体型も多くなり、操作ボタンもタッチパネルが多くなってきた。 また一部機種ではハードディスクドライブを内蔵し、1000曲以上録音(リッピング)できるもの、MP3やWMAの再生に対応したもの、MP3プレーヤーなどが接続できる外部端子を備えた機種も多くなってきている。BOSEやマークレビンソンといった、海外の高級オーディオメーカーのサウンドシステムをメーカーオプションで用意する車種も高級車を中心に多い。
[編集] 自動車用オーディオ機器としての特徴
ドライバーが運転中に使用することを考慮し、ボタンやスイッチの位置を大きくしたりするなど家庭用の据え置き型に比べ操作性に配慮した設計となっている。かなり初期の段階から人間工学やユニバーサルデザインに相当する観点に立った設計がなされていた。また、常に震動にさらされる悪条件でも安易に壊れたり誤動作を起こさないように設計されている。
[編集] 取付
カーオーディオの取付けサイズは、DINの規格のものが多い。1DINとは高さ50mm×幅178mmで、2DINとは1DINと横幅は同じで縦が2個分となる。車側が1DIN規格の場合には1DIN規格サイズの機器1台が、車側が2DIN規格の場合には1DINサイズの機器2台もしくは2DIN規格の機器1台が取り付け可能となる。2005年現在、1DINはCDデッキが主流で、2DINはCDとMDデッキの複合機かカーナビゲーション用のDVDドライブ+CDデッキ(またはDVD2基)+液晶ディスプレイが主流である。最近はDINにこだわらない独自のデザインのコンソールを擁した車種が増えてきているが、この場合、DIN規格の社外品の取り付けには、別途変換キットなどの導入が必要となる。
[編集] カスタマイズ
乗用車のカスタマイズでは外装のエアロパーツやエンジン、足回りなどのチューニングと並んで人気のあるカテゴリーである。カーオーディオ専門のショップも多く、自動車雑誌でもカーオーディオを中心としたものが刊行されている。また東京オートサロンを筆頭とするカスタムカーのイベントでは必ずといってよいほどカーオーディオに凝った車が出展されていることを見れば明らかだろう。
カスタマイズの内容も単にメーカー純正品から高性能・高機能な機材に替えるだけでなく、家庭用の高級オーディオ機器同様に好みの音質を追求する人(サブウーファーを載せて低音を強化する人が多い)、ネオン管や発光ダイオードを音に連動させて光らせることで見た目のかっこよさを求める人、ホームシアターの自動車版を作る人など、楽しみ方はバラエティに富んでいる。SUVやミニバン、ワンボックス車では後席の快適性・娯楽性 (いわゆるリアエンターテインメント)を求めて後席専用のテレビやDVDプレーヤー (かつてはビデオデッキが多かった)、カラオケ用のマイクロフォンミキサーを設置する車もある。
[編集] ラジオチューナー
1970年代まではAMチューナーのみが主流であり、主要車種に設定される「デラックス」グレードに標準装備されることも多かった。1970年代からFMチューナー搭載機種が増え始め、1980年代に入ると電子チューナーも登場した。1990年代後半にはAMステレオ放送対応のチューナーも存在した。また、米国ではXM Satellite Radioといった衛星デジタルラジオチューナーを搭載したものも存在している。
[編集] 使用時の注意点
- 機器を増やす、特にパワーアンプを複数台システムに組み込む場合は、消費電力が増えることでバッテリーやオルタネーターの負担が大きくなるので、大容量のバッテリーに替える、電源回路の組み方を工夫するなどの調整をすること。
- 家庭で使用するオーディオ機器と同様、必要以上に大音量で再生した場合、音が外に漏れ聞こえて近所や他の車の迷惑になるため配慮が求められる。特に早朝・深夜に再生する場合は音量に注意を要する。車内で要求される音量で車外にかなりの音量が漏れる場合は音漏れ対策を施すことも必要となる。
[編集] 主なメーカー
- アルパインweb
- クラリオン(アゼスト)web
- ケンウッドweb
- 三洋電機web
- ソニーweb
- デノンラボ web
- ナカミチ web
- 日本ビクター (JVC)web
- 三菱電機 (旧ダイヤトーン) web
- パイオニア(カロッツェリア)web
- 富士通テン(イクリプス) web
- 松下電器産業(パナソニック) web
- ラックスマンweb
- キッカー(米)web
- ロックフォード・フォスゲート(米)web
- ボーズ(米)web
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- カーオーディオ (carsensor.net)
- モービルエレクトロニクスショー(カーオーディオ関連のイベント)
- Sound Up(交通タイムス社)
- カーオーディオマガジン(芸文社)