カンドンブレ
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カンドンブレ(candomble)は、ブラジルの民間信仰のひとつ。
アフリカの土着宗教(特にヨルバ語族の伝統を継承している)が、奴隷貿易とともにブラジルへ渡来し、カトリックへの強制改宗にともなって独特の発展をとげたもの。1830年に組織化された。
ブラジルの総人口のうち約1.5%(およそ200万人)が信仰しているとされ、信者らはキリスト教会とほぼ同じ頻度でテヘイロ(Terreiro、儀式を行う場所。カンドンブレ教会)に通うという。
カンドンブレという言葉は、プランテーションで働かされていた奴隷たちの宗教的舞踊「カンドンベ」に由来する。
カンドンブレの儀式では、独特の打楽器(パーカッション)の旋律に合わせて聖職者が入神し、その身にさまざまな神を憑依させる。カンドンブレの神々は、オリシャ(Orixa)と呼ばれ、それぞれのオリシャには自然現象や色、曜日、好物などが割り当てられている。その数は無数に近く、正確な数はだれにもわからないとされる。これは各地の精霊信仰や日本の神道における八百万の神にも通ずるものがある。
[編集] 創造神話
世界のはじめ、最高神オルドゥン(またはオルロン)がイファ(Ifa、運命)とオバタラ(Obatala、天)とオドゥドゥア(Odudua、地)を創った。オバタラとオドゥドゥアから2人の子供、オシャラ(Oxala、太陽)とイエマンジャ(Iemanja、海)が生まれた。この2人からほとんどのオリシャが生まれた。そのためこの2人は「偉大なる父」「偉大なる母」と呼ばれる。
[編集] 主なオリシャ
主なオリシャを以下に列挙する。
- オルドゥン(Oludum)/オロルン(Olorum)
- 最高神。天地と運命を創造した。
- エシュ(Exu)
- 神々の伝令。この世とあの世を繋ぐ役割を担う。性欲と生命力を司る。色は赤と黒。月曜日の神。人間関係、仕事、金銭など現世利益的な問題解決を助けるとされる。
- オモル(Omolu)
- 流行病の神。色は白と黒。月曜日の神。
- オグン(Ogum)
- 剣と盾を持ち、体中長い毛に覆われた戦いの神。色は青あるいは緑。火曜日の神。シンボルは鉄剣。
- オシュマレ(Oxjmare)
- 虹の神。色は黄と黒。火曜日の神。
- シャンゴ(Xango)
- 雷、稲妻の神。正義と裁きの神。色は赤と白。水曜日の神。
- イアンサン(Iansa)
- 風と雨の女神。色は赤。水曜日の神。情熱、衝動、勇気、策略を司る。
- オショシ(Oxossi)
- 狩リと森の神。色は主に薄青と緑。木曜日の神。シンボルは弓矢。
- オシャラ(Oxala)
- 太陽神。創造力を司る神。色はうすい空色。金曜日の神。人類を創造した。
- イエマンジャ(Iemanja)
- 海の女神。オシャラ神の妻。色は青。土曜日の神。母性、守護、献身のシンボル。
- オシュン(Oxum)
- 川の女神。富と出産、女性の美を司る。色は金あるいは黄。土曜日の神。
- ナナン(Nana)
- 最年長の水の女神である。色は薄紫。月曜日と土曜日の神。
[編集] 関連事項