カメムシ目
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カメムシ目/半翅目 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | ||||||||
|
カメムシ目(カメムシもく)あるいは半翅目(はんしもく)は、昆虫の分類群のひとつで、口が針状になっているのが特徴である。非常に多様性に富み、カメムシ、タガメ、アメンボ、セミ、ウンカ、アブラムシなど、人間に関わりのあるものも多い。
[編集] 特徴
カメムシ目は、非常に多様性に富み、様々な生活をするものがいるため、全体の形や各部の構造はその群によって大きく異なる。淡水性のものでは水中生活のための構造が発達する。アブラムシやカイガラムシでは、羽根を持たぬ事も多く、単為生殖による繁殖を含む、複雑な生活環を発達させ、また、寄生生活のものでは足や体節構造までも失って、とても昆虫とは思えない形のものもある。
共通する特徴は、口器が細長くなり、左右が重なり合うようにして針状になることである。チョウ目のものもその点は似ているが、カメムシ目のものは口器全体を巻き込むことはせず、頭部から腹部にかけての腹側の中心線に沿って納める。ただし、一部には後述のように摂食において主役を演ずる口針を体内で巻き込むものが知られている。植食性のものでは口器の鞘に当たる口吻は細長く、肉食性のものでは短く、鉤型に曲げるものが多い。内部の口針も食植性のもので非常に長くなっているものが多い。
細長い口器の外側を覆っている口吻は下唇が樋状に変形したもので、内部に口針を収める。口針は針状に変形した大顎と小顎、つまり2本の大顎針と2本の小顎針から形成されている。左右1対の小顎針は内側に2本の溝が刻まれており、これらが完全に密着・嵌合することで内部に2本の通路を持つ管となっている。この通路のうち、背方の通路の中は唾液が通って摂食部に送り込まれ、腹方の通路の中を通って食物が吸引される。左右1対の大顎針はしばしば先端の外側が鋸歯状になっており、小顎針の外側を交互に滑るように前後運動して口針全体が食物の内部に差し込まれる通路を切り開く。口針は口吻の先端から突き出せるようになっている。口吻は口針が摂食対象の内部に刺さっていくに従って折れ曲がったり蛇腹状に縮んだりして、口針をより長く突出できるようになっている。
口針は、食物を摂食対象の非常に奥深くから吸い上げるものの中には口吻よりもはるかに長くなっていることがあり、そのようなものでは頭部の内部に形成された腔所にぜんまい状に巻き込んでいる場合がある。
この口針を用いた食物のとり方は非常に多様で複雑である。植物食のものでは維管束の道管や師管を口針で探り当て、内部を流れる液を摂取するもの、種子の子葉や胚乳といった栄養貯蔵器官、葉のような同化器官内部の柔組織を消化酵素を含む唾液と共に口針で突き崩し、体外消化して吸い込むもの、気孔から口針を差し込んで個々の柔組織を構成する細胞の中身を吸い取るものなどが知られている。
動物食のものでは獲物の体内に麻痺性の毒素を注入して動けなくした後に消化液を注入して内部を溶かして吸収するものが多いが、哺乳類や鳥類といった脊椎動物の血管を探り当て、吸血するものも知られている。
カメムシ目は、大きくヨコバイ亜目(同翅亜目)とカメムシ亜目(異翅亜目)に分類される。
- ヨコバイ亜目(同翅亜目)のものは、羽根が全体に膜状で、その羽根を前後ろを上下に重ねる。静止時に上から見ると、体の左には左側の前羽根が、右側には右側の前羽根があって、両側の羽根は中央背中側でふれあい、左右に下がって屋根状になる。羽根が透明ならば、下側の羽根がそれぞれの前羽根の下に見える。その形は一部のガの止まるときのそれに似ている。セミ、ウンカ、アブラムシ、カイガラムシなどがこれに含まれる。
- カメムシ亜目(異翅亜目)のものは、前羽根の根元側半分が厚くなり、不透明になっている。後ろ羽根は大きく、膜状になる。静止時には、前羽根は左右を交差して、上から見ると、前羽根の根元半分が左右の背面を覆い、先半分は互いに重なって背中側を覆う。下羽根は折りたたまれて前羽根の下に収まる。前羽根の根元側半分の間には、背中面の外骨格が3角に見える。このように、外見的には羽根が背面に収まって、一見コウチュウ目の昆虫のような外見になる。カメムシ、サシガメ、グンバイムシ、ナンキンムシ、アメンボ、タガメ、コオイムシ、タイコウチ、ミズムシ、マツモムシなど様々な昆虫が含まれる。特に、水中生活のものは水生カメムシ類とも呼ばれ、魚介類の天敵として養魚害虫扱いされるものもあるが、多くは遊び相手として子供たちに好まれる。ただし、多くは肉食なので、口針で刺されると麻痺性の神経毒を注入されて激痛が走り、泣く羽目になる。