カエルの為に鐘は鳴る
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『カエルの為に鐘は鳴る』(かえるのためにかねはなる)は、インテリジェントシステムズ開発、任天堂発売のゲームボーイ用ゲームソフトである。1992年9月4日に発売された。メーカー公称のゲームジャンルはアドベンチャーゲーム、またはアクションロールプレイングゲーム。
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[編集] 概要
題名からゲーム内容が連想できない、面白そうでないとユーザーに敬遠され、発売当時はすぐに投売りされるなどセールスは十分ではなかった。そのため他の任天堂発売作品と比較すると地味かつマイナーという位置にある。しかしギャグやパロディをふんだんに盛り込んだストーリーや独特のゲームシステムは、実際にプレイした人々にとっておおむね好評であり、少ないながらも熱烈なファンを生むこととなった。隠れた名作と評される事が多い。
この特徴ある題名は アーネスト・ヘミングウェイの小説『誰がために鐘は鳴る』(「ため」が漢字表記なのは同作品の映画化作品)から取られている。
[編集] あらすじ
サブレ王国の王子とカスタード王国のリチャード王子はライバル同士。サブレ王子は剣術の試合に臨むが、いつも通りリチャード王子に負けてしまった。そんな中2人はミルフィーユ王国が魔王デラーリンによって侵略され、ティラミス姫が捕らえられたという知らせを受ける。それぞれ先を競うようにミルフィーユ王国へ向かうが、サブレ王子はリチャード王子より先に姫と国を救うことができるだろうか?
[編集] キャラクター
- サブレ王国王子 - このゲームの主人公で名前はプレイヤーが付ける。フルネームは"(付けた名前)・デ・サブレ"。お人よしかつ単純であるが情には厚い。経済大国の王子として生まれたためか金銭面の不自由はなく、何でも金の力で解決できると思っている。ちなみにカナヅチ。
- リチャード王子 - キザでクールなカスタード王国の王子。サブレ王子とは幼なじみで良きライバル。剣術の腕はサブレ王子よりも一枚上手。口が悪く、いやな人物に見られがちだが根は優しい友達思いの人物(ゼルダの伝説 夢をみる島にも登場)。
- ティラミス姫 - ミルフィーユ王国を治める姫。絶世の美女との噂がある。聖なる力で国の平和を保っていたが、デラーリンに城を占領され行方不明になってしまう。
- デラーリン - ゲロニアン軍を率いてミルフィーユ王国を侵略した魔王。その正体を知る者は少ない。
- マンドラ - 分厚いメガネをかけた怪しい魔法使い。デラーリンの退治法を知る人物。ペットはハゲワシのポルナレフ。
- ジャム - 王子の全財産を掏った盗賊。初めは王子を軽視していたが後に改心する。
- アルフレド・じんべぇ - じゃぱにーず・びじねすまん。ミルフィーユ王国に眠る金塊を持っていけば、スプリング・ヒルの「春を告げるベル」を直してくれるという。
- アレヲ・シタイン博士 - ナンテンドウの研究員。美食家で、特に寿司には譲れないこだわりがある。「ハイパーグローブ」、「マンモスコントローラー」、「Zの笛とパワードスーツ」を発明する天才(?)科学者。
- 赤ずきん - エスキモー村に住む優しい女の子。厳しい親方に苛められて店を逃げ出してしまう。
- 長老 - エスキモー村の長老。大の人嫌いで、北の岬の小屋に篭ってしまっている。
- へースケ - フーリンに住む金山掘りのプロ。お酒とお金には弱いが有能な職人で「カザンオールスターズ」のリーダー。
- カザンオールスターズ - へースケをリーダーとする金山発掘のプロ集団。異様に戦闘力が高い。メンバーはヘースケ、コータ、マーシー、トディ。
- マドレーヌ - ティラミス姫にそっくりな女の子。いなくなった姫の身代わりにゲロニアンに捕まってしまう。
[編集] ミルフィーユ王国
- ティラミス姫が治める冒険の舞台。エクレア宮殿を中心に火山から雪国まで自然色豊かな国家。
- エクレア宮殿 - ティラミス姫の居城だったが、ゲロニアンに乗っ取られてしまう。このゲームでは段階に応じて何度も宮殿に乗り込み、その都度別のコースを踏破する必要がある。
- 港町シーミズ - サブレ王子が最初に到着する港町。大地震の影響で壊滅的な被害を受けてしまう。
- 城下町アラモード - エクレア宮殿の城下町。宮殿に次いで物語の重要拠点となる。街にはカエルが大勢いる。
- ババロア山 - アラモードからオバケの木の森を抜けた先にある。謎の魔女マンドラが住んでいる。
- ゲロベップ温泉郷 - 無料で入れる温泉がある街。しかも混浴。そのせいで病院は閑古鳥が鳴いている。年に一度、春祭りが開催されるらしい。
- 春を告げる町スプリングヒル - ティラミス姫の記念館「春を告げる鐘つき堂」がある町。だがそのシンボル「春を告げるベル」が大地震の影響で壊れてしまう。
- クロザ島 - スプリングヒルから船で移動する離れ小島。娯楽の殿堂「ナンテンドウ」と保養地のジャングルがある。
- ナンテンドウ - クロザ島唯一の商業施設。町ではなく建物の中。アレヲ・シタイン博士が勤める研究所では様々な発明品が生み出される。食券方式の社員食堂もある。
- ジャングル - ナンテンドウ職員の保養地だったが、ゲロニアンに占拠されてしまう。最奥にはワサビ畑がある。
- メレンゲ氷河 - トンネル……ではなく巨石を抜けた先にある雪国。とても寒いのでカエルやヘビは生息できない。北の岬では長老が隠棲している。
- エスキモー村 - 赤ずきんの店がある小さな村。後にマンモスに踏み荒らされてしまう。
- フーリン - 火山の町。かつてはゴールドラッシュで賑わっていたが、金山がゲロニアンに占拠されてからは荒廃している。
- フーリン火山 - ゲロニアンが占拠している金山。某コピーライターも発掘に勤しんでいる。最奥には伝説の秘剣「スネークキラー」が眠る。
[編集] ゲームシステム
このゲームはアドベンチャーゲーム、アクションゲーム、コンピューターRPGを混合したような内容であり、ゲームジャンルを一言で表現するのは難しい。メーカー側による表記も一定していない。しかし各ジャンルの欠点を切り捨て、物語を楽しませる事を第一としたゲームシステムは、上記ジャンルのいずれか1つを苦手とする人々にも受け入れられた。
ゲームの最終目的はミルフィーユ王国の開放とティラミス姫の救出となる。プレイヤーはサブレ王子を操作し、国中を探索しながら数々のイベントをクリアすることで物語を進めていく。RPGのような経験値の概念は無く、王子の能力向上やストーリー進行はすべてアイテムの獲得によって行われるため、一定の条件を満たせば必ず先へ進める設定になっている。このため、RPGに不慣れなプレーヤーでもほとんど詰まることなく進めることが出来る。一方でアクションでは軽度の運動操作とパズル的な要素を含んだ操作を要求され、適度な難度でアクションが苦手なプレーヤーでもクリアが可能である。
またゲームボーイソフトとしては珍しく、文字表記が漢字交じりとなっている他、随所に4倍角文字が登場する演出がプレーヤーを大いに楽しませた。
[編集] 移動方法
地上となるフィールドと城や洞窟の中となるダンジョンでは、視点及び操作方法が大きく異なる。
- フィールド上はRPGのように斜め上方から見下ろした画面となる。村や町、城、洞窟が用意されており、王子を東西南北(上下左右)へ移動させこれらの目的地へ向かう。フィールド上には敵の姿が見えており、触れると戦闘となる。
- ダンジョン内ではアクションゲームのように真横から見た画面となる。左右への移動、はしご・ツルなどの昇降、ジャンプを駆使し探索を行うが、ブロックを押して足場を作るなどアクションパズルの要素もある。フィールド上と同様に敵が存在し、触れると戦闘となる。
[編集] 敵との戦闘
敵に触れると戦闘シーンとなる。ただし一般的なRPGのようにコマンドを選択する必要は無い。王子と敵が自動的に攻撃と防御を繰り返し、どちらかの体力が無くなると戦闘終了となる。戦闘の途中でボタンを押すことにより「逃げる」「道具を使う」命令のうち、いずれか1つを実行できる。王子の能力が上がると弱い敵は弾き飛ばせるようになる。
勝敗は王子の体力、攻撃力などの能力値、持っている武器と防具、敵の強さにより決定され、攻撃や防御の失敗・成功といった運の要素は存在しない。王子が勝った場合はお金を得ることができる。負けた場合は最後に立ち寄った村や町の病院から再スタートとなるが、お金は減らない。
[編集] 変身
話が進むと王子はカエルやヘビに変身できるようになる。カエル、ヘビ、人間の姿を適宜切り替え物語を進めていく。
- カエル - 高いジャンプ力を持ち、水中での行動が可能となる。虫の敵に触れても戦闘にはならず体力が回復する。ヘビには弱い。水に入ることで変身できる。
- ヘビ - 狭い所を通り抜けたり、敵をブロックにする事ができる。人間には弱い。おんせんたまごで変身。
- 人間 - 基本の姿。一番攻撃力があるが特殊な力はあまりない。カナヅチなのでカエルに変身できない時に水に入るとおぼれてしまう。
[編集] アイテム
- 日記 - かなり重要なアイテム。セーブをするのに必要でゲーム開始直後に手に入れることができる。「日記をつける」でセーブをする。さらに「日記をみる」というコマンドがあり、王子の視点で書かれた日記であらすじを確認することができる。ちなみに日記には日付が振ってあり、それによるとミルフィーユ王国に滞在していた期間は33日。
- マップ - 序盤に手に入れるアイテム。島の地図を見れる。自分の現在地が分かる。城の中で使うと場内の地図となり、まだ行ったことのない場所は黒く表示されている。地名も見られる。
- 回復のワイン - 序盤に手に入れるアイテム。使用すると王子のハートが3つ分回復する。ゲーム後半で6つ分回復するワイン一番絞りを手に入れることができる。
- のこぎり - 使用回数制限アイテム。最大32。木を切ることができる。一部の敵に対して攻撃力が上がる。
- しあわせの果実 - 使用回数制限アイテム。最大32。マンドラが育てていた不思議な果実。食べると気持ちよくなって気絶してしまう。人間に戻るときに使用。
- おんせんたまご - 使用回数制限アイテム。最大32。ゲロベップ温泉特産品。王子が食べるとなぜかヘビに変身できる。ライフがひとつ回復する。
- ツルハシ - 使用回数制限アイテム。最大32。特定の岩を破壊できる。武器としては使用できず。
- ワサビ - 使用回数制限アイテム。最大32。にぎりずしには欠かせない。戦闘中に相手に投げつけることができ、ツーンとなってしばらく行動不能にできる。
- ワープドア - 不思議なアイテム。使用すると最後に使用した入り口にワープする。
- あやしいクスリ - マンドラから受け取る、文字通りのあやしいクスリ。カエルのイラストが書かれているが……。ちなみに「タダ」。
- さらにあやしいクスリ - マンドラから受け取る、文字通りのさらにあやしいクスリ。ヘビのイラストが描かれているが……。ちなみに異様に高い。
- バイリンガエル - エスキモー村の赤ずきんの店にある秘密の帽子。人間のままでカエルと話が出来る。「バイリンガル」との掛詞である。
- いにしえの石板 - フーリン火山に眠る曰くありげなメッセージが刻まれた石板。
[編集] ナンテンドウ製品
- アレヲ・シタイン博士と研究チームが発明したアイテムの数々。
- リストバンド - 小さなブロックや岩を動かせる。
- パワーグローブ - 大きなブロックや岩を動かせる。「ぐんて」ではない。
- マンモス・コントローラー - 文字通りマンモスを自由に動かす機械。
- Zの笛 - パワードスーツ「東京コミックショーZ」を呼ぶ笛。スーツの開発中に吹くと「まーだだよー」と言われてしまうが……
[編集] パロディ
- 前述通り、本作には様々なパロディネタが盛り込まれている。特に芸能ネタなどは、発売当初のメインターゲットだった小~中学生には元ネタを理解しがたいものが多く、後々になるまで気付かなかったプレーヤーも多い。またミルフィーユ王国の地名の多くはお菓子の名前が付けられている。
- パロディ名 - パロディ元 - 解説
- カエルの為に鐘は鳴る - 誰が為に鐘は鳴る - アーネスト・ヘミングウェイの小説『誰が為に鐘は鳴る』。同小説はスペインを舞台にした長編小説で、内容は全く関係がない。
- 港町シーミズ - 清水港 - 清水次郎長で有名な「清水港(しみずみなと)」。
- ゲロベップ温泉 - 下呂温泉、別府温泉 - 日本を代表する有名温泉地の合成。
- ワイン一番絞り - キリン一番絞り - 1990年に発売されたビールの商品名で、通称「一番絞り」。ちなみに「一番絞り」は元々ビール用語で、ワインには用いない。ゲーム中のニュアンスとしてはボジョレー・ヌーヴォーに近いものか。
- ナンテンドウ - 任天堂 - 日本を代表するゲームメーカー。セルフパロディ。
- アレヲ・シタイン博士 - アインシュタイン博士 - 世界的に著名な数学者。ちなみに「アインシュタイン」は「Einstein」という一単語の姓。
- 赤ずきん - 赤ずきん - グリム童話などで著名な童話のタイトルとその主人公。
- フーリン火山 - 風林火山 - 武田信玄の旗指物で著名な用語。出展は「孫子」。
- カザンオールスターズ - サザンオールスターズ - 日本を代表する音楽バンド。さらにリーダーの「ヘースケ」は「桑田佳祐」(ケースケ)のパロディ。
- 東京コミックショーZ - 東京コミックショー - ショパン猪狩を中心とするコミック集団(一応奇術師)。「レッドスネークカモン」はショパンの掛け声でもある。
[編集] 外部リンク
- 任天堂ホームページ カエルの為に鐘は鳴る
- カエルの為に鐘は鳴る同盟(ファンサイト)