オシロスコープ
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オシロスコープ(Oscilloscope)は、一つまたはそれ以上の電位差を二次元のグラフとして表示する電気計測器である。通常、画面表示の水平軸は時間を表し、周期的な信号の表示に適するようになっている。垂直軸は、電圧を表すのが普通である。画面表示は、スクリーンを左から右に周期的に掃引される光点によってなされる。
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[編集] 特徴と用途
[編集] 使用例
オシロスコープは、電気信号のかたち(波形)を表示するための計測器である。縦軸が電圧、横軸が時間で、高速な電気信号の時間的変化をグラフとして表示する。
もっとも古典的な用途は、電気機器の故障解析である。ラジオを例に取ると、回路図を見ながら、混合器、発振器、増幅器といった回路間の接続を見ていく。
それから、オシロスコープのグラウンド(接地端子)を回路のグラウンドにつなぎ、プローブを構成回路の列の中の二つの回路間につなぐ。
もし予期された信号が現れなければ、前段に故障があるとわかる。ほとんどの故障は一つの部分によって起こるので、それぞれの測定で、機器を構成する複数の部分の片側は動作していて、おそらく故障の原因でないことが確認できる。
不良箇所が見つかったら、欠陥箇所をさらに探ることで、熟練した技術者は大抵どの部品が壊れているかがわかる。技術者が部品を交換すると、修理完了するか、少なくともその次の不具合と分離することができる。
別の使用法は、新しい回路のチェックである。新しく設計された回路は、不適切な電圧レベルや、ノイズ、設計ミスなどによって、しばしば誤動作する。デジタル回路は普通クロックによって動作するので、デジタル回路のチェックには二現象オシロスコープが必要である。ストレージスコープは、欠陥のある操作によって起こる、希な電気的現象を捕らえるのに有効である。
もう一つの使用法は、電子機器をプログラムするソフトウェア技術者のためのものである。オシロスコープは、ソフトウェアがちゃんと動作しているかを確認する唯一の手段である場合が多い。
これ以外には磁性媒体を使用する装置の磁気ヘッドの位置決め、信号レベルの均一化調整、ノイズの検出、構内ネットワークにおける外部ノイズの検出など、波形を観測する事により多くの事象をリアルタイムで観察できる為、応用範囲は工場のみならず、広範囲に渡る。
[編集] 説明
一般的なオシロスコープは、小さな画面のある四角い箱で、フロントパネルには沢山の入力端子やつまみ、ボタンがある。 画面の格子目盛りのそれぞれの正方形は、division(区分)と呼ばれる。
測定する信号は、 BNCやN型コネクタのような同軸コネクタで、入力端子の一つに供給される。もし信号源が同軸コネクタを持っていれば、単純に同軸ケーブルで接続できる。そうでなければ、オシロスコープに付属するプローブと呼ばれる専用のケーブルを使用する。
最も単純なモードでは、オシロスコープはトレース(軌跡)と呼ばれる水平線を画面の左から右に繰り返し引く。 設定項目時間軸調整(timebase control)は、線を引く時間を設定する。この設定では、divisionあたりの秒数が校正されている。 もし、入力電圧が0から離れていたら、トレースはそれによって上側または下側に外れる。別の設定項目垂直軸調整(vertical control)が、垂直方向の変位量を設定する。この設定では、divisionあたりの電圧が校正されている。 この結果、時間軸に対する電圧のグラフが得られる。
もし信号が周期的であれば、時間軸を入力信号の周波数に合わせて設定すれば、ほぼ固定したトレースが得られる。例えば、入力が50Hzの正弦波の場合、周期は20msであり、水平スイープ間の時間が20msになるように時間軸が調整されてなければならない。このモードは、連続スイープと呼ばれる。不幸にもオシロスコープの時間軸が完全に正確ではなく、入力信号の周波数が完全に固定でなければ、トレースは浮動し、測定するのが難しくなる。
より固定したトレースが得られるように、オシロスコープにはトリガと呼ばれる機能がある。 この機能では、画面の右端に行った後、左端に戻るまで特定のイベントが有るまで待機し、次のトレースを描画する。
この効果で、入力信号に合わせて時間軸の同期を取り直し、トレースの水平位置変動を防止する。 トリガ回路は、正弦波や矩形波のような周期波形だけでなく、単発パルスのような非周期信号にも対応する。
トリガの種類:
- 外部トリガ, 外部ソースからのパルスを、専用の入力端子に入れる。
- エッジトリガ, 入力信号が、決められた方向から決められたしきい電圧を横切った時、エッジ検出器がパルスを生成する。
- ビデオトリガ, PAL や NTSCのようなビデオ信号から同期パルスを取り出し、すべてのライン、または特定のライン、すべてのフィールド、全てのフレーム、のいずれかによって時間軸トリガを掛ける。このような回路は、波形モニター機器の中に見られる。
- 遅延トリガ, エッジトリガから掃引を開始するまで、特定の時間待機する。瞬間的に動作するトリガ回路は存在しないので、大抵ある種の遅延は含まれるが、トリガ遅延回路は、この遅延を値のわかった調節できる間隔に延長する。
多くのオシロスコープは、時間軸発生器の代わりに外部信号を水平軸増幅器に加えられるようになっている。これはX-Yモードと呼ばれ、二つの信号の位相関係を見るのに有用である。 二つの信号が様々な周波数と位相の正弦波である時、表示される図形をリサージュ図形と呼ぶ。
ある種のオシロスコープには、カーソルと呼ばれる、スクリーン上を動かせるラインがあり、2点間の時間や電圧差を測定できる。
ほとんどのオシロスコープは、二つ以上の入力チャネルを持ち、一つ以上の入力信号を画面に表示できる。 通常のオシロスコープは、垂直軸制御はそれぞれのチャネル毎に独立して持っているが、トリガ回路や時間軸制御は一つしか持っていない。
デュアルタイムベースオシロスコープは、二つのトリガ回路を備え、二つの信号を別々の時間軸で見ることができる。これはまた、"拡大"モードとしても知られる。適当なトリガ設定で複雑な信号を見るのに、"拡大"、"ズーム"、"デュアルタイムベース"を有効にして、複雑な信号の詳細を見るためにウィンドウを動かすことが出来る。
ユーザが見たい現象が時々しか起こらないことがある。こうした現象を捕らえるため、画面の一番最後の掃引を残す、"ストレージスコープ"というオシロスコープがある。
ある種のデジタルオシロスコープは、掃引時間を一時間毎というように遅くでき、チャートレコーダの代わりになる。 この場合、信号は画面の右から左にスクロールする。ロールモード表示などと呼ばれる。
[編集] 使い方のヒント
使い慣れていないオシロスコープで出会うもっともありがちな問題は、トレースが見えないということである。
最近のオシロスコープでは、"リセットオプション"または"オートセットアップ"というようなボタンがある。これは迷った時や、初めて使うオシロスコープで使用する。"beamfinder(ビーム探索)"ボタンがあるオシロスコープもある。これは、掃引サイズを縮めて、トレースがスクリーンに現れるようにするものである。
最初に設定すべきなのは、チャネルを"DC"カップリングにし、オートトリガにすることである。 チャネルの電圧レンジを、ラインが現れるまで上げていく。 時間軸レンジを、観測対象に合わせたスピードに設定し、見やすい大きさになるよう電圧レンジを設定する。
オシロスコープには、チャネルとプローブが動作していることを確認できるテスト出力が装備されているのが普通である。 使い慣れないオシロスコープを使う時、最初にこの信号を観測するのがよい。
テストプローブの中の線材の静電容量は、オシロスコープで高速信号を表示するときに精度を落とす原因となりうる。 もしも波形が歪んでいるように見えたら、たとえば異常なスパイク("リンギング")や、妙なこぶの波形になっていたら、プローブの容量を調整してみるとよい。 多くのプローブ(例えば10xのような電圧分割タイプ)には、小さな調整用ねじが付いているbvxxvb 。 ほとんどのオシロスコープは、プローブ調整用の矩形波テスト出力を備えている。 矩形波の角が四角くなるようにプローブを調整する。
一般的に、オシロスコープのグラウンド接続は、テスト対象の回路のグラウンドにつなぐべきで、そうでないとおかしな結果になりがちである。 オシロスコープ用のテストリードの多くは、端末にグラウンドクリップを装備している。
ACカップリングは、信号の直流分を阻止する。これは、直流オフセットの乗った小さな信号を測定するときに有効である。
DCカップリングは、直流電圧を測定するときに使う。
正しいチャネルでトリガを掛けていることを確認すること。 トリガ遅延はゼロにする。 必要とするイベントでトリガが掛かるまで、トリガレベルを調整する。 最後に、必要とする波形の特徴が表示されるまで、トリガ遅延を調整する。
オシロスコープのプローブは、高価で壊れやすい。静電容量を減らす為、プローブの電線の中の導体は髪の毛より細いものもある。プローブのペン型プラスチック部品は、しばしば簡単に壊れる。プローブを誰かが歩く床に放置してはならない。オシロスコープを共有するなら、個人用のプローブセットを持つことを考えよう。
[編集] 選択法
オシロスコープは一般的に上の特徴に関するチェックリストを持っている。基本的な測定性能は、垂直増幅器の帯域幅である。汎用オシロスコープでは、少なくとも100MHzは必要であるが、オーディオ周波数用ではもっと低くてもよい。
よく使う掃引レンジは、トリガと遅延掃引で、1秒から100ナノ秒である。 デジタル信号用としては、2チャネルが必要で、システムの最高周波数の少なくとも1/5の掃引速度が推奨される。
オシロスコープのもっとも重要な性能は、周波数帯域とトリガ回路の性能である。 もしトリガが不安定だと、表示はぼやけてしまう。 おおざっぱに言って、周波数応答とトリガの電圧安定性がオシロスコープの性能を決める。
デジタルストレージオシロスコープ(高級機種はほとんどこのタイプ)では、サンプルポイント数が測定対象信号に対し、不足している状態では"エリアジング"という問題が起きる。リアルタイムサンプリング方式(通常はこの方式)で、オシロの周波数帯域に対して、サンプリング周波数が4倍以上確保できていない設定で起きる可能性がある。エリアジングを起こしている状態では測定値が不安定になったり、トリガが不安定になり波形が流れるように見えたりする。 エリアジングを防ぐにはサンプリング周波数を十分高く維持する必要があり、サンプリング周波数、必要なメモリ長と時間軸設定はたがいにトレードオフの条件となる。最近はメモリ長は十分長いものが多いが、中古品の場合は確認するほうがよい。 正弦波のような、繰り返しの信号を測定する場合に限り、等価時間サンプリング方式に切り替えることでメモリ長とは関係なく、エリアジングを起こさないようにすることができる。等価時間サンプリング方式のみのデジタルオシロは、通常のデジタルストレージオシロスコープと区別する意味で、デジタルサンプリングオシロスコープと呼ばれている。 デジタルサンプリングオシロスコープでは、帯域幅80GHzくらいまで可能になってきているが、単発現象の測定は不可能であり、高速のものはより高価になってくる。
[編集] 動作原理
[編集] ブラウン管オシロスコープ
最も古くから有る簡素なタイプのオシロスコープで、ブラウン管、垂直増幅器、時間軸発生器、水平増幅器、電源から構成される。このタイプは、現在ではデジタルタイプと区別する意味でアナログオシロスコープと呼ばれる。
ブラウン管オシロスコープが現在の形となる前、ブラウン管はすでに測定器として使われていた。 ブラウン管は、白黒テレビ受像機のものと同じように、真空のガラス容器で作られ、平らな面には蛍光物質が塗られている。 近くから見る測定器なので、スクリーンは直径20cmくらいと、テレビ受像機よりかなり小さい。
ブラウン管のネックは電子銃になっていて、加熱した金属板の前に網(格子)がある構造になっている。 加熱した板(陰極)にマイナス、格子(または陽極)にプラスの電荷が掛かるよう、数百ボルトの電圧が掛けられる。電界が陰極から電子を流れ出させ、弾丸のように加速して陽極を通過し、スクリーンに向かう。 電子ビームが蛍光体に当たると発光し、スクリーンに光点を生成する。 電源を入れた時、ブラウン管はスクリーンの真ん中に一つ光点があるだけだが、この光点は静電的に、または磁気的に動かすことができる。オシロスコープのブラウン管では静電偏向を使っている。
電子銃とスクリーンの間には、偏向板と呼ばれる相対する二組の金属板がある。垂直増幅器は、電極の一組に電位差を発生させ、電子ビームが通過する所に垂直の電界を与える。電界が0であれば、ビームは影響を受けない。 電界が正であれば、ビームは上向きに偏向され、負であれば下向きに偏向される。水平増幅器はもう一方の組の偏向板に同様の働きをし、ビームを左や右に動かす。
この偏向方式は、静電偏向とよばれ、テレビのブラウン管に使われる電磁偏向とは異なっている。 静電偏向は安価で軽いが、小さな管にしか向いていない。
時間軸発生器は鋸歯状派を生成する電子回路である。 これは、ひとつからもうひとつの値に繰り返し変化する電圧で、時間に対してリニアである。二つ目の値になったら、素早く最初の値に戻り、再び増加を始める。 時間軸の電圧は水平増幅器を駆動する。 この働きで、電子ビームを一定の速度で左から右にスクリーン状を掃引し、それから次の掃引の始まりに間に合うようにビームを左に素早く戻す。 時間軸発生器は、信号の期間に合わせて掃引時間を調節できるようになっている。
一方、垂直増幅器は、測定対象から取られた外部電圧(垂直入力)によって駆動される。この増幅器は、MΩまたはGΩ台のとても高い入力インピーダンスで、信号源からはとてもわずかな電流しか取り出さない。 この増幅器は、垂直入力に比例する電圧で、垂直偏向板を駆動する。
垂直増幅器の利得は入力電圧の振幅に合わせて調整できる。正の入力電圧は電子ビームを上向きに曲げ、負の電圧は下向きに曲げ、その結果光点の垂直偏向は入力値を表すようになる。 このシステムの応答は、イナーシャによって指針の反応を悪くしているマルチメータのような機械的な測定器よりずっと速い。
これらのすべての構成要素が働くことによって、電圧対時間のグラフを表すような光の軌跡をスクリーンに描く。 電圧は垂直軸で、時間は水平軸である。
マルチチャネルのオシロスコープは、複数の電子銃を備えているわけではない。一時にただ一つの光点しか表示できないので、一つのチャネルからもう一つのチャネルに掃引毎に切り替えたり(ALTモード)、掃引あたり沢山の回数切り替えたり(CHOPモード)している。
垂直増幅器と時間軸制御は、与えられた電位差がスクリーン状の垂直距離に相当するように、また与えられた時間間隔が水平距離に相当するように校正される。
オシロスコープの電源は重要な構成要素である。 ブラウン管の陰極ヒーターの電源として、また垂直および水平増幅器の電源として、低い電圧出力を備える。 静電偏向板を駆動するのに高い電圧が必要とされる。これらの電圧は、非常に安定していることが求められる。 変動があると、軌跡の位置や明るさに誤差を生じる原因になる。
新しいアナログオシロスコープは、標準設計にデジタル処理が加わってきている。ブラウン管や、垂直・水平増幅器の基本的な構成に変化はないが、電子ビームはデジタル回路で制御され、アナログ波形に画像や文字を加えることができるようになった。このシステムは、次のような拡張機能を含んでいる:
- 入力電圧レンジや時間軸設定の表示;
- 電圧カーソル - 電圧表示付きの可動水平線;
- 時間カーソル - 時間表示付きの可動垂直線;
- トリガ設定や他の機能のメニュー画面
[編集] アナログストレージオシロスコープ
ある種のアナログオシロスコープは、'ストレージ(蓄積)'と呼ばれる拡張機能を備えている。 この機能は、通常1秒以内に減衰するトレースパターンを、数分以上スクリーンに残すことができる。電気的な回路で、スクリーン上のトレースの保存と消去ができる。
[編集] デジタルストレージオシロスコープ
アナログオシロスコープもホビー用には使われているが、デジタルストレージオシロスコープ(DSO)が、現在ではほとんどの工業的用途で活躍しているタイプである。アナログストレージオシロスコープで使われていた、信頼性の低いストレージ手段をデジタルメモリで置き換え、データを劣化なく好きなだけ保持することができるようになった。高速なDSPによってアナログオシロよりも遥かに広帯域な信号測定や、複雑な信号処理も行えるようになった。
垂直入力は、垂直増幅器を駆動する代わりにアナログ-デジタル変換回路でデジタル化され、データ列としてマイクロプロセッサのメモリに保存される。データ列は処理されて表示器に送られる。アナログオシロでは不可能な、単発現象にトリガをかけ波形を止めたり、トリガ条件の前におこった現象を確認することもできる。初期のDSOではブラウン管であったが、現在ではLCDのフラットパネルが好まれる。カラーLCD表示のものも普通になっている。データ列は、処理や保管のためにLANやWANで送ることもできる。 DSOに内蔵された信号解析ソフトは、たくさんの有用な時間軸関係の機能(例えば立ち上がり時間、パルス幅、振幅)、周波数スペクトル、ヒストグラムや統計、残像図、を持ち、沢山のパラメータを、電気通信やディスクドライブ解析やパワーエレクトロニクスといった特定分野の技術者にわかりやすく測定結果を表示する。
デジタルオシロにも弱点はあり、エリアジング、デッドタイム はアナログオシロには存在しないデジタルオシロ特有の問題である。エリアジングはサンプリング周波数の低下に伴う誤表示で、測定対象信号に対しデータポイントが荒すぎる場合に起きる。デッドタイムは、波形をデータ化し取り込んだ後、次の波形を取り込むことができる様になるまでの時間のことで、この間デジタルオシロはたとえトリガ条件があったとしても何も反応することができない。実際に表示できている波形は極めて少ない時間的割合にすぎない。 また、ビデオ信号の表示などに代表される美しい濃淡表現はアナログオシロには遠く及ばない。