イクトゥス
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イクトゥス(イクトス ichthys ichtus ΙΧΘΥΣ)は、弧をなす2本の線を交差させて魚を横から見た形に描いたシンボルである。初期のキリスト教徒が隠れシンボルとして使った。
今日ではジーザス・フィッシュ(Jesus Fish)やクリスチャン・フィッシュ(Christian Fish)とも呼ばれている。
イクトゥスは、ギリシャ語で「魚」という意味だが、同時にΙΗΣΟΥΣ ΧΡΙΣΤΟΣ ΘΕΟΥ ΥΙΟΣ ΣΩΤΗΡ(ギリシャ語でイエス、キリスト、神の、子、救世主)の頭文字を並べたものでもある。
隠れシンボルとして次のように用いられたといわれる。まず、一人の人間が明らかにランダムな直線や曲線を砂の上に描き、その線のうち一本を円弧にする (イクトゥスの半分) 。もし、もう一人が地面に線を何本か描き足す中でイクトゥスの形を完成させれば、二人はお互いがキリスト教徒であると確認することができた。
ミラノ勅令以前のキリスト教徒は、迫害や処刑されるおそれがあったため信仰を公にすることができなかった。
イクトゥスは、聖書の寓話に由来するという節もある。
- 漁師だったペテロが「これからは魚でなく人間を取る漁師になるのだ」とイエスに諭され弟子になる(ルカ 5章10節)
- 二匹の魚と五つのパンをイエスが奇跡をおこして5000人に食べさせたという「パンと魚の奇跡」 (ヨハネ 6章5~13節)
- 神殿税を請求されて困っているペテロに、釣りに行けば捕まえた魚の口に税金分の4ドラクマ銀貨が入っているだろうとイエスが語った箇所(マタイ 17章27節。ガリラヤ湖畔では今もティラピアを「聖ペテロの魚(St. Peter's Fish)」と呼ぶ。)
など聖書には魚にまつわる話が多い。
現代では主に欧米諸国において、車のバンパー・ステッカー、Tシャツ、バッジ、ネックレスなどのアクセサリーや小物にデザインされたり、個人商店や中小企業のロゴ、パンフレット、宣伝・求人広告などに添付され、キリスト教徒であること・キリスト教理念に基づくビジネスであることを公言している。Wikipedia各国版のユーザーボックスなどでも十字架に次いで多く使用されているキリスト教シンボルである。 元来は二本線で描いた形だけだったが、形の中に十字架、ΙΧΘΥΣやJESUSなどが書かれたバリエーションがうまれている。
アスキーアートでは <>< や <')))>< や <º )))>< と表現される。
車やオートバイにつけるイクトゥスと並んで、ナンバープレートも現代人らしい信仰表現の手段である。例えば添付画像に見られるナンバープレートのPS23は、キリスト教徒の間で広く知られている旧約聖書の詩篇23篇(Psalm 23)の略である。
一方でキリスト教徒を揶揄するバッジやバンパー・ステッカーも多く作られた。最も有名なものはダーウィン・フィッシュ(Darwin Fish)であろう。 布教熱心な福音派の保守一派であるキリスト教根本主義者が創造論を信じていることから、それに対抗して作られ、イクトゥスに足が二本生えた形の中にDarwin(ダーウィン)あるいはEvolution(進化)と書かれている。
キリスト教徒には進化論者も多いため、イクトゥスは創造論のシンボルではない。ダーウィン・フィッシュは進化論論争においてアンチ創造論を象徴するシンボルではあるが、必ずしも嫌キリスト教と同等ではない。軽い笑いのネタとして用いられることも多い。しかし、デンマークのムハンマド風刺漫画掲載問題でも見られるように、イクトゥスのパロディーは信仰を持つ人間の神経を逆撫でするのものであろう。