アラトリステ
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『アラトリステ』(El capitán Alatriste)はアルトゥーロ・ペレス=レベルテ作の小説シリーズ名および、それを原作とした映画である。本稿では小説について説明する。
[編集] 概要
著者レベルテは1973年より戦争ジャーナリストとして世界各地の主要な紛争地域を取材。1994年より作家に転身し、数々のヒット作を出した。レベルテがその戦場経験を大いに生かして書き上げたのが、本シリーズである。1996年にスペインにてシリーズ一作目「El capitán Alatriste(邦題:『アラトリステ』)」が発売されると、スペイン国内にて大ヒットを記録。第一期シリーズ5巻までがいずれもベストセラーとなり、2006年には映画化された。
2006年12月には第6巻が発売された。
[編集] あらすじ
ディエゴ・アラトリステ・イ・テノーリオという傭兵の一生を、その従者であったイニゴ・バルボアが語るという体裁の冒険小説である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 登場人物
- ディエゴ・アラトリステ・イ・テノーリオ:本シリーズの主人公である。彼の出自の詳細は不明であるが、1582年頃、現在のスペイン・カスティーリャ・レオン州、レオンの北方にある寒村に生まれたのではないかと考えられている。郷士の次男として生まれたディエゴは13歳の時に家を出ると、年齢を偽って傭兵となり、アウストリア大公アルブレヒトに従ってネーデルラントに赴いたとされる。1609年、バレンシアでイスラム教徒の反乱鎮圧に参加した後、ナポリに渡ってナポリ駐留スペイン艦隊の兵士となる。1613年にはコンスタンティノポリスで乗り込んでいたガレー船が拿捕され、オスマン・トルコ軍の捕虜となるが、同年のうちに解放され、1615年まで引き続きスペイン艦隊に参加する。1615年にナポリで傷害事件を引き起こし、スペイン本国に逃亡。再びネーデルラントに向かってそこで傭兵となり、三十年戦争に皇帝軍として参加する。1620年の白山の戦いで華々しい手柄を立てるも、1622年のフルーリュスの戦いで負傷しマドリードに行く。この時、イニゴ・バルボアを引き取って従者とする。1624年に三度ネーデルラントに渡り、アンブロジオ・スピノラ麾下のスペイン軍に入隊。ブレダ攻城戦に参加する。その後も数々の冒険を重ねた後、1644年、ロクロワの戦いで戦死(イニゴによれば「立ったままで息絶えていた」とされる)。
- イニゴ・バルボア:本シリーズの語り手である。1609年頃、現在のスペイン王国バスク州のオニャテ近郊で生まれたとされる。父ロペ・バルボアはアラトリステの戦友であったが三十年戦争で戦死。その際にアラトリステにイニゴの養育を依頼したことから、アラトリステに引き取られて従者となる。1624年にアラトリステとともにネーデルラントに渡り、ブレダ攻城戦に参加。その後、父やアラトリステと同じく傭兵となる。一時期、アンヘリカ・アルケサルと恋人同士であった。1644年、アラトリステとともにロクロワの戦いに参加。この戦いを生き延びた後、近衛連隊士官(平民出身としては大出世)となる。
- フランシスコ・デ・ケベード(Francisco Gómez de Quevedo y Villegas):実在の人物であり、スペイン近世文学を代表する人物として知られる。本作では、主人公アラトリステの親友の一人として登場する。1580年マドリード生まれ、1645年没。強烈な風刺で知られ、作中にも彼の詩の引用は頻繁に登場する。
- アンヘリカ・アルケサル:本シリーズのヒロイン。両親を早くに亡くした為、伯父である高級官僚ルイス・アルケサルのもとに身を寄せている少女。スペイン王妃付きの女官として王宮に勤めている。希有な美貌と邪悪な内面を持っているとされ、伯父ルイス・アルケサルに協力してアラトリステを亡き者にするため、イニゴを誘惑する。しかしイニゴを利用しながらもイニゴを深く愛していたとされる。
- ルイス・アルケサル:アラゴン出身の高級官僚。1623年にイングランド皇太子チャールズが内密にマドリードを訪問した際、アラトリステを買収してこれを暗殺しようと試みるも失敗。アラトリステに恨みを抱き、つけねらう。
- グァルテリオ・マラテスタ:シチリア島出身の殺し屋。ルイス・アルケサル配下の暗殺者部隊を指揮し、アラトリステをつけねらう。イニゴに対しては優しい一面も見せる。口笛が得意。