アメリカ合衆国副大統領
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アメリカ合衆国副大統領(アメリカがっしゅうこくふくだいとうりょう Vice President of the United States)はアメリカ合衆国の副大統領である。生まれながらにしての合衆国民であり、通算14年以上合衆国に居住する、35歳以上の者に副大統領としての資格がある。
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[編集] 役職
アメリカ合衆国副大統領は、行政府を代表する第二位の官職である。合衆国憲法修正25条第1節の定めるところにより、大統領職が死去・辞任・免職などにより空白になった場合は大統領に昇格し、また大統領が事故・病気などにより職務遂行が一時的に不能になった場合は臨時に大統領職を代行する。さらに上院議長を兼務し、賛成反対同数の場合は均衡を破る一票を投じる権限 (tie breaking votes, 議長決裁権) を持つ。
[編集] 選出方法
2004年現在、大統領選挙に先立ち、大統領候補が夏の全国党大会で副大統領候補を指名、大統領当選とともに自動的に決定される。
副大統領が欠員となったときは、大統領が新たな副大統領を指名し、上下両院過半数の承認をもって任命される。
[編集] 歴代副大統領一覧
[編集] 副大統領トリビア
大統領に昇格した副大統領
- ジョン・タイラー: 1841年4月4日、ウィリアム・ヘンリー・ハリソン大統領病死により大統領に昇格。
- ミラード・フィルモア: 1850年7月9日、テイラー大統領病死により大統領に昇格。
- アンドリュー・ジョンソン: 1863年4月15日、リンカーン大統領暗殺により大統領に昇格。
- チェスター・アーサー: 1881年9月20日、ガーフィールド大統領暗殺により大統領に昇格。
- セオドア・ルーズベルト: 1901年9月14日、マッキンリー大統領暗殺により大統領に昇格。
- カルヴァン・クーリッジ: 1923年8月3日ハーディング大統領病死により大統領に昇格。
- ハリー・トルーマン: 1945年4月12日、フランクリン・ルーズベルト大統領病死により大統領に昇格。
- リンドン・ジョンソン: 1963年11月22日、ケネディ大統領暗殺により大統領に昇格。
- ジェラルド・フォード: 1974年8月9日、ニクソン大統領辞任により大統領に昇格。
大統領職を臨時代行した副大統領
- ジョージ・H・W・ブッシュ: レーガン大統領の全身麻酔を必要とする大腸ポリープ摘出手術に伴い、1985年7月13日、約8時間にわたって大統領職を臨時代行。
- ディック・チェイニー: ジョージ・W・ブッシュ大統領の全身麻酔を必要とする大腸内視鏡検査に伴い、2002年6月29日、約2時間にわたって大統領職を臨時代行。
在任中死去した副大統領
- ジョージ・クリントン: 1812年死去。
- エルブリッジ・ゲリー: 1814年死去。
- ウィリアム・キング: 1853年死去。
- ヘンリー・ウィルソン: 1875年死去。
- トーマス・ヘンドリックス: 1885年死去。
- ギャレット・ホーバート: 1899年死去。
- ジェームズ・シャーマン: 1912年死去。
辞任した副大統領
- ジョン・カルフーン: 1832年、出身地選出の上院議員に空席が生じたためこれを補填するため上院に転出し副大統領を辞任。
- スピロ・アグニュー: 1973年、州知事時代の収賄罪が確定したのを受けて副大統領を辞任。
在任中に次期大統領選に当選した副大統領
- ジョン・アダムズ: 副大統領を二期務めた後、1796年の大統領選で勝利。
- トーマス・ジェファソン: 副大統領を一期務めた後、1800年の大統領選で勝利。
- マーティン・ヴァンビューレン: 副大統領を一期務めた後、1836年の大統領選で勝利。
- ジョージ・H・W・ブッシュ: 副大統領を二期務めた後、1988年の大統領選で勝利。
退任後間をおいて大統領選に当選した元副大統領
- リチャード・ニクソン: 副大統領を二期務めた後、1960年の大統領選に出馬するも敗北、1968年の大統領選に再出馬して勝利。
大統領指名により就任した副大統領
- ジェラルド・フォード: アグニュー副大統領の辞任に伴い、ニクソン大統領による指名と上下両院の承認を得て、1973年に副大統領に就任。
- ネルソン・ロックフェラー: フォード副大統領の大統領昇格に伴い、フォード大統領による指名と上下両院の承認を得て、1974年に副大統領に就任。
二人の大統領の下での副大統領
- ジョージ・クリントン: ジェファソン大統領とマディソン大統領の下で副大統領。
- ジョン・カルフーン: ジョン・クィンシー・アダムズ大統領とジャクソン大統領の下で副大統領。
在任が最も長かった副大統領
- ジョン・アダムズ: 在任二期8年。
- ダニエル・トンプキンズ: 在任二期8年。
- トーマス・マーシャル: 在任二期8年。
- ジョン・ガーナー: 在任二期8年。
- リチャード・ニクソン: 在任二期8年。
- ジョージ・H・W・ブッシュ: 在任二期8年。
- アル・ゴア: 在任二期8年。
在任が最も短かった副大統領
- ジョン・タイラー: ウィリアム・ヘンリー・ハリソン大統領が極寒の中で強行した就任演説がもとでが風邪をこじらせ、間もなく肺炎により死去したことから、副大統領在任わずか31日で大統領に昇格。
最年長の副大統領
- アルバン・バークリー: 1949年1月20日の就任時、71歳。
最年少の副大統領
- ジョン・ブレッキニリッジ: 1857年3月4日の就任時、36歳。
在任中に人を殺傷した副大統領
- アーロン・バー: 1804年7月11日、財務長官アレクサンダー・ハミルトンと決闘を行い、ハミルトンは下胸部に銃弾を受け翌日死亡。
- ディック・チェイニー: 2006年2月11日、友人ハリー・ウィッティングトンを狩猟中に誤射、ウィッティングトンは顔面を中心に150〜200発の散弾を受け緊急入院、14日には軽い心臓発作に見舞われるが、17日には無事退院。
現在存命する元副大統領 (2006年9月現在)
- ジェラルド・フォード: 第40代副大統領。
- ウォルター・モンデール: 第42代副大統領。
- ジョージ・H・W・ブッシュ: 第43代副大統領。
- ダン・クエール: 第44代副大統領。
- アル・ゴア: 第45代副大統領。
副大統領をめぐる憲法上の "隙間"
合衆国憲法修正12条は副大統領に大統領と同様の資格を求めており、また修正22条は大統領の三選を禁止している。しかし大統領を二期務めた者がその後副大統領になることができるかどうかについては、憲法に規定がない。
一般に憲法学者は、修正22条が禁じているのは「大統領に三回以上選ばれること」であって「大統領職を三期以上務めること」ではないので、大統領を二期務めた者がその後副大統領になり、さらにその後大統領に昇格してもう一期務めることは、憲法上は可能だとしている。
2000年の大統領選挙では、共和党のジョージ・W・ブッシュ候補相手に苦戦が予想されていた民主党のアル・ゴア候補に対して、伴走の副大統領候補に退任を控えたクリントン大統領を推す案が取りざたされた。冷めやらぬクリントン人気をもってすれば勝利確実の "ドリームチケット (夢のコンビ)" だと期待する向きも多かったが、脱クリントン色を願うゴア候補はこれに乗らず、結局副大統領候補にはジョー・リーバーマン上院議員を指名、選挙では力及ばず惜敗している。
[編集] 関連項目
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