めしのはんだや
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「めしのはんだや」および「大衆食堂半田屋」は、株式会社半田屋が運営するセルフ方式の定食屋である。店舗は宮城県仙台市を中心に全国に40店ほどある。安さにおいては他の追随を許さず、またほとんどの店が24時間営業であるため、学生の多い街である仙台では「夜の学食」との異名を持つほど親しまれている。因みに、株式会社半田屋は、仙台市できらら寿司2店とびっくりドンキー4店も営業している (以前は吉野家もフランチャイズ営業していた)。 90年代初頭まで、太った男性が一心不乱にどんぶりめしを食らう、というTVコマーシャルを宮城県内で流していた。ラジオ等でながれていた「♪めっし~のはんだや」というフレーズを覚えている人も多い。
目次 |
[編集] 「めしのはんだや」序曲
戦後間もない頃、庶民がお腹いっぱい食事をすることは夢であった。仙台駅前名掛丁の横町(ジャンジャン横町)に誕生した「めしのはんだや」は安くて美味しい物をお腹いっぱい食べることが出来る店としてカフェテリア形式で展開し、多くの仙台市民の胃袋と心を満たした。この一号店は現在でも駅前店として営業を続けており、終戦後の闇市飲食店的雰囲気を伝えている。まさに都市仙台の食の故郷である。
[編集] 「めしのはんだや」と「大衆食堂半田屋」
80年代までは、店舗名が 「めしのはんだや」 ブランドのみで、伝票方式のみの清算方法をとっており、仙台市周辺のみの店舗展開であった。店内は白一色で、長テーブルと丸椅子が並び、まさに定食屋の雰囲気が漂っていた。この頃の客層は、一人暮らしする男子学生や男性肉体労働者や男性単身赴任者が中心であり、一定の支持を受けていた。その学生食堂より安い値段とボリュームあるメニューの内容と量も多く地元米使用で味も良いご飯から、愛着の表現である「えさのはんだや」「配給所」の異名でも仙台市民に愛されていた。いっぽう、郊外店は「ドライブイン食堂」のような雰囲気を醸し出しており、職業ドライバーの利用が多かったが、全体としては勃興してきたファミリーレストランにおされていた。
90年代になり、座席数の多い郊外店の「めしのはんだや」では、カフェテリア方式の導入が始まった。また、ファミリーレストランを意識した清潔な店舗への脱皮が図られ、ソファー型のボックス席の導入も始まる。この変革により、ファミリーなどの新たな客層を手に入れたが、店内はやはり白一色で、定食屋の雰囲気は残ったままであった。この頃、北海道札幌市など他県へも「めしのはんだや」ブランドで出店し始める(一部フランチャイズも開始)。
21世紀になると、内外装にレンガや木をふんだんに使ったおしゃれな雰囲気の 「大衆食堂半田屋」 ブランドで出店を開始 (このブランドでは、カフェテリア方式のみで、伝票方式はない)。インテリアには、籐椅子やソファー型ボックス席を多用し、おしゃれなファミリーレストランの雰囲気を出し、イメージチェンジをはかる。
「めしのはんだや」ブランドでは "安い飯を大量に" をモットーとしていたが、「大衆食堂半田屋」ブランドでは、ソフトクリームやフルーツなどのデザートの拡充、ドリンクメニューの追加、大皿から自分の好きな分だけ取れるおかずの導入、一貫から選べるお寿司の導入など、女性向けの "少量で多種類の食事" に舵を切った。この戦略が当たり、「半田屋」は、デフレの波にも乗って、"安くておしゃれな定食屋さん" として若い女性にも人気の店となり、場所によってはマクドナルドやびっくりドンキー、大戸屋などと同じ土俵で戦っている。学生層やサラリーマン層にもより入りやすい店舗となり、好評である。安くお腹いっぱい食べられる定食屋の良さは失われておらず、従来の男性客層にも評判は悪くない。
「めしのはんだや」として仙台市と札幌市のみの店舗展開だったはんだやは、この 「大衆食堂半田屋」 ブランドの成功により、全国へ出店攻勢をかけることになる。
[編集] 安さの秘訣
「めしのはんだや」と「大衆食堂半田屋」は業態こそ違うが、安くてたくさん食べられるお店という基本コンセプトに変わりはない。お総菜は集中生産方式をとっており、大量仕入れによるコストダウンの努力も低価格に役立っている。食材は各店舗に配送される。その他にも企業秘密のノウハウが存在し、安くてたくさん食べられるお店を実現している。その安さは300円で満腹になれるほどである。
[編集] 「セルフ方式」と「オーダー方式」
はんだやは店舗によって注文・清算方式が分かれる。まず、何を食べるかを選ぶ、「注文」の段階では、従来からの「セルフ方式」店舗に加え、最近では「オーダー方式」の店舗も存在する。「清算」段階で分類すると、「セルフ方式」店舗において、伝票方式とカフェテリア方式とに分かれ、食事と清算の順序が異なる。
[編集] セルフ方式
はんだやは、従来から「セルフ方式」 の店舗がメインになっている。ただし、店舗によって清算方式が伝票方式とカフェテリア方式とに分かれる。
まず、店に入ってトレーを取り、並んでいる単品のおかずから自分の好きなものをトレーにのせ、バックヤードに続く窓口のところに行く。窓口では、ご飯や麺類などの主食を注文する。ご飯はその場で盛り付けて渡されるが、麺類の場合は番号札を渡される。
この後の利用法が伝票方式とカフェテリア方式とで違ってくる。
カフェテリア方式の店舗の場合は、そのままレジに並んで清算し、その後食事をすることになるが、伝票方式の店舗の場合は、食べ物を取り終えた時点でお金を払わずに 空いている席に座り、そのまま食べ始めてよい。食べていると、店員のおねえさん(旧中央2丁目店で確認)が無言ですっと斜め後ろ辺りに寄って来て、食べているものを伝票を書き込む。書き終わると、伝票を斜め後ろからテーブルの上にすっと置き、店員は無言のまま立ち去る。食事がすんだら下膳口に下膳して、伝票をレジに持って行き、清算して店を出る。
「めしのはんだや」 ブランドでは、店舗によって伝票方式とカフェテリア方式とに分かれるが、伝票方式の店舗は現在では名掛丁の駅前本店のみになっており、古くからのはんだや好きからは伝票方式の絶滅を危惧する声もきかれる。また、「大衆食堂半田屋」では、全ての店舗でカフェテリア方式が採用されている。
[編集] オーダー方式
なお、最新の半田屋には、吉野家と同じような「カウンター方式」で「注文をとる」店舗も出来た。セットメニュー(180円、250円、350円)がメインで、ラーメン200円、そば・うどん120円、カレーライス250円などのメニューもある。「セルフ方式」は注文をとる従業員の分の人件費はかからないが、入店から退店までの時間がかかり、客の回転率がよくないという問題があった。そのため、仙台のビジネス街に出店した半田屋で、この「オーダー方式」が導入され始めている。客の回転率を高くして収益性を上げることで、三大都市圏のビジネス街でも戦えるようなデータを集めていると考えられる。
[編集] はんだやの象徴
- はんだや(半田屋)には「はんだや三種の神器」ともいうべきも3つの象徴がある。この「三種の神器」は学生利用者の多い、はんだやならではのユーモアであるとも言われている。
[編集] 「生まれた時からどんぶりめし」
はんだやは、創業以来、「生まれた時からどんぶりめし」 のキャッチコピーを使用している。かわいらしい無垢な幼い女の子が、口を大きく開けてどんぶりめしを頬張る。そんなポスターにこのキャッチコピーが書かれている。店に入ると、そのポスターが上の方に掲げられており、よく目につく。これは、「大衆食堂半田屋」 ブランドでも変わらず続いている。(そのポスターの女の子は社長の娘だと客の間で昔から言い伝えられているが、本当のことは分からない。)
[編集] 「貸借は友を失う」ゲーテ
「めしのはんだや」 ブランドの店に行くと、もう一つ重要なモットーが店内のいたるところに貼ってある。それは、「貸借は友を失う ゲーテ」 だ。小さなお札くらいくらいの大きさに、達筆でその文言は書かれ、食事をしている人の目線の高さで、いくつも壁に貼ってある。「めしのはんだや」 で食事をする時のスパイスとなっている。例え、食事時の数百円の貸し借りでも、それが原因で友を失う最悪の事態もあり得るという警告であり、親しい友人間でも金銭の管理はけじめをつけようという教訓である。仙台男児の大多数はこうして金銭の正しい管理を学ぶ。
[編集] 幻の「めし(大)」
はんだやを語る上で欠かせないのが、めしの存在である。米の名産地である宮城県に立地するチェーンである以上、顧客の米の食味に対する要求水準は高い。はんだやはあくまで宮城県産米の使用を堅持することにより、米にうるさい仙台市民・宮城県民の満足を勝ち得てきた。 はんだやは、創業した戦後まもない頃から、ご飯の盛りが多いことを店の特徴としてきた。戦後60年も経ち、グルメブームを経験した現在において、その盛り具合は異質でさえある。盛りの多さを知らずにたのんでしまうと腰を抜かすので注意が必要だ。
- めし (ミニ) : ご飯茶碗に普通に盛られるくらい
- めし (小) : どんぶりめし
- めし (中) : どんぶり大盛り
- めし (大) : (以下参照)
レジ近くの上の方に掲げられているメニューには、以上のようなの表示があり (但し書きはない)、それぞれ値段が書いてある。「めし (中)」は大学生や高校生の運動部の人なら食べられるかも知れないが、ほとんどの人が挑戦しても残してしまうほどの量だ。ただし、県外の半田屋は名前通りの量を出すところがあるので、必ずしもめし(中)でどんぶり大盛りが食べられるわけでもない。
ところで、メニューにある 「めし (大)」 には、価格が表示されていないどころか、「とても食べられません。(中)で充分です」 と書いてある。伝票方式の場合には「とても食えない。(中)でたくさんです。」と伝票にも印字されている。
開店当初の仙台本町店で、この「めし (大)」を出していた時期がある。 ラーメンどんぶり程の大きな器に山盛りのご飯が出ていた。
[編集] 半田屋の全国展開上の戦略
「めしのはんだや」 ブランド時代は、本社のある仙台市と、札幌市のみに店舗展開をしていたはんだやだったが、仙台市内での 「大衆食堂半田屋」 ブランドの成功により全国展開を始めた。 それは、直営店の場合とフランチャイズ店の2通りでおこなっているが、出店場所に特色がある。
まず、全国展開の初期には、競輪場・競馬場・競艇場などの周辺に出店している。
などがこの例だ。ここで客層や客単価の分析が進み、競馬場等の近く以外でも出店するようになる。
次なる客層を狙い、兵庫県三木市に関西1号店を出店した。店舗は、山陽自動車道・三木小野ICから出てすぐの国道175号沿道にあった。この店舗は、オートバックスとのコラボレーションとして注目を集めた。しかし、何らかの理由で撤退に到っている。
現在は、仙台市・札幌市・名古屋市・広島市を核に、全国の都道府県すべてに出店するかの勢いで攻勢に出ているが、従来のロードサイド単独店以外の出店方式として、若者が集まる中心商業地や駅前に進出したり、郊外大型スーパー等の店子としての出店形式も取り入れている。
- 中心商業地、または、駅前立地の例
- 広島市の紙屋町店
- 仙台市の仙台駅東口BiVi店
- 京都市の二条BiVi店
なお、仙台のビジネス街にある店舗では、吉野家のようなカウンター「オーダー方式」を採用している店舗もあり、他都市のビジネス街に出店し始めるためのデータ収集を開始している。
因みに、食材は中国の大連で作っている。(仙台の企業が中国に進出する時、仙台空港からの直行便がある大連を選ぶことが多い)