黄表紙
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黄表紙(きびょうし)は江戸時代中期の1775年以降に流行した草双紙(一種の絵本)のジャンルの一つ。
恋川春町の『金々先生栄花夢』(1775年刊行)がそれまでの幼稚な草双紙とは一線を画する、大人向けの読み物として評判になった。それ以降の一連の作品をのちに黄表紙と呼ぶようになった。1冊5丁で、2・3冊からなるものが多い。毎年正月に刊行されるのが通例であった。なお、朋誠堂喜三二、恋川春町の「文武二道」を冠する黄表紙は松平定信の文武奨励策を風刺したものとして幕府から圧力を受けた。山東京伝の洒落本・黄表紙も摘発され、京伝は手鎖50日の刑を受けた。文化期頃から敵討ち物が全盛となって長編化し、合巻というジャンルに移行する。
[編集] 金々先生栄花夢
きんきんせんせいえいがのゆめ。恋川春町作・画。上下2冊本で見開きに絵が描かれ、絵の周囲に本文を配する。12の場面からなる。
- 筋書き
主人公の金兵衛が、江戸で成功しようと田舎から上京する途中、目黒不動に参詣する。茶屋で餅を注文し、横になって夢を見る。大金持ちの養子になって、金々先生とおだてられ、吉原や深川で豪遊するが、だまされて金を巻き上げられ、養父からも絶縁されて追い出される。夢から覚めた金兵衛は、一生は夢のようなものと悟り、田舎へ戻る。
[編集] 特徴
上記からも知られるように、筋書き自体はたわいもないようだが、言葉や絵の端々に仕組まれた遊びの要素を読み解くことに楽しみがあった。フキダシの様なものが描かれるなど現代の漫画に通じる表現技法を持つ。