鳥取のふとんの話
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鳥取のふとんの話(とっとりのふとんのはなし)は小泉八雲原作の怪談。『知られざる日本の面影』に所載されており、妻・小泉節子が語って聞かせた鳥取市に伝わる古い昔話を再話したものとされている。
[編集] 物語
鳥取の町に小さな宿屋があった。ある雪の日、この宿屋に一人の男が泊まったが、深夜ふとんの中から聞こえてくる「あにさん寒かろう」「おまえこそ寒かろう」という子どもの声に目を覚まされた。主人はこうした幽霊話を否定していたが、その後もたびたび怪異が起き、とうとう宿屋の主人もふとんがしゃべる声を聞いた。主人がこの怪異を調べようとふとんの持ち主を調べていくと、次のような悲しい話が明らかになった。
そのふとんは、古道具屋が鳥取の町はずれにある小さな貸屋の男から手に入れたものだった。その貸屋には、貧しい夫婦と2人の子どもが住んでいたが、夫婦が子どもを残して相次いで死んでしまった。2人の兄弟は家財道具や両親の残した着物を売り払いながら何とか暮らしてきたが、ついに1枚の薄いふとんを残して売るものがなくなってしまった。大寒の日、兄弟はふとんにくるまり、「あにさん寒かろう」「おまえこそ寒かろう」と寒さに震えていた。やがて冷酷な家主がやってきて、家賃を払えなくなった兄弟を雪の中に追い出してしまった。かわいそうな兄弟はゆく宛もなく、少しでも雪をしのごうと追い出された家の軒先に入って2人で抱き合いながら眠ってしまった。神様は2人の体に新しい真っ白なふとんをかけておやりになった。もう寒いことも怖いことも感じなかった。しばらく後に2人は見つかり、千手観音堂の墓地に葬られた。
この話を聞いて哀れに思った宿屋の主人は、ふとんを寺に持って行き、かわいそうな2人の兄弟の幽霊のためにお経を上げてもらった。それからというもの、ふとんがものをしゃべることはなくなったという。