限外ろ過膜
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限外ろ過膜(限外濾過膜、げんがいろかまく)とは液体を対象とするろ過膜の一種で、孔の大きさが概ね2から200ナノメートル(ナノメートルは1ミリメートルの百万分の一)の膜のこと。孔は逆浸透膜より大きく精密ろ過膜よりも小さい。英語ではUltrafiltlation Membraneといい、その頭文字をとってUF膜とも、直訳をとって超ろ過膜とも呼ばれる。
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[編集] 使い方
限外ろ過膜は通常のフィルターと同様に液体を全量通過させてろ過を行うことも不可能ではないが、孔の大きさが小さいため阻止された微粒子や不純物により短時間で膜が閉塞する。このため、通常は膜の表面に沿って一定方向に原液を流し続け、微粒子や不純物が濃縮された水(濃縮水と呼ぶ)を連続的に排出、または送液側に戻しながら使用することで微粒子や不純物の膜表面への付着を減らしている。この膜表面に沿った流れをクロスフロー、これを使ったろ過膜の使用法をクロスフロー方式と呼ぶ。
[編集] 用途
- 浄水(水道水の製造)分野 :細菌やウィルスの除去
- 工業分野 :蛋白質や酵素など熱に弱い物質の分離または濃縮
- 医療分野 :人工透析(金額ベースで最大の用途)、医薬品や医療用水製造時のウィルスや内毒素(パイロジェン)の除去
- 超純水製造 :仕上げ段階の微粒子除去(逆浸透膜より熱に強く、微量物質の溶け出しが皆無の素材を使えるため。)
尚、ウィルスで現在最も小さいとされるピコルナウィルスやバルボウィルスの大きさは約20nmであるため、孔の大きさを概ね10nm以下としておけば、限外ろ過膜は液体から全ての病原性細菌やウィルスを除去できるものと考えてよい。
[編集] 構造
- 中空糸膜(ちゅうくうしまく) - 直径0.5~30mm程度の太さで中が空胴の糸状に成型し、通常は糸の外側から内側へろ過する(逆のタイプもある)。限外ろ過膜の場合は大半がこの形である。
- スパイラル膜 - 1枚のろ過膜を、強度を保つための網など(サポートと呼ぶ)と重ね合わせ、2つ折りにして袋状に接着した後、縦一直線に切れ目を入れた集水管で袋の口を挟み、これを芯にして伊達巻き状に巻く。伊達巻きの断面方向から加圧し、反対側の断面から濃縮水を、集水管から透過水を得る。
- チューブラー膜 - 中空円筒状で中空糸膜より太いもの。直径は最大10センチ程度のものまである。濃縮水の流速を高くでき不純物の膜表面への付着を防ぎやすい反面、これが仇ともなってエネルギーコストが高くなる上、設置面積が大きくなる。
- 平膜(ひらまく) - その名の通り平らな膜。クロスフロー方式で使用するためには水槽や容器に入れて内を高流速で流動させる必要がありエネルギーコストは高いが、膜の清掃がしやすい利点がある。
[編集] 素材
- 酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン: 逆浸透膜の項を参照
- ポリフッ化ビニリデン
- ポリエチレン
- ポリアクリロニトリル
- セラミック: 硬いため、2005年現在実用化されているのはチューブラー膜のみ