道路交通情報通信システム
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道路交通情報通信システム(どうろこうつうじょうほうつうしんシステム、Vehicle Information and Communication System、略称VICS・ビックス)は、財団法人道路交通情報通信システムセンター(略称・VICSセンター)が収集、処理、編集した道路交通情報を通信・放送メディアによって送信し、カーナビゲーションなどの車載装置に文字や図形(地図など)として表示させるシステムである。高度道路交通システム(ITS)の一翼を担っている。
VICSによって提供される情報としては、渋滞情報、所要時間、事故・故障車・工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車場の位置、駐車場・サービスエリア・パーキングエリアの満車・空車情報などがある。
情報提供のためには、次のような通信・放送メディアが利用される。
- 電波ビーコン 高速道路に設置された電波ビーコン(準マイクロ波:2499.7MHz)により、前方200km程度先までの高速道路の情報を提供。ビーコン数は全国で2,895基(2005年4月現在)。
- 光ビーコン 主要な一般道路に設置された光ビーコン(赤外線)により、前方30km程度先までの一般道の情報を提供。ビーコン数は全国で27,654箇所(2005年4月現在)。
- FM多重放送 各地のNHK-FM放送の放送波に多重化して、都道府県単位の広域情報を提供。放送局数は基幹局53局、中継局465局(2005年4月現在)
なお、路上の発信機は都市部周辺に限られている。また、NHK FMは月に2回、日曜深夜から月曜未明にかけて、機械の保守・点検のために放送を停止する。
NHKFMのFM文字多重放送は2007年3月に終了することになっているが、VICSに関しては今後も継続する。
[編集] 沿革
- 1990年3月 - 警察庁・郵政省・建設省をメンバーとして、「道路交通情報通信システム連絡協議会(VICS連絡協議会)」発足
- 1991年10月 - 「VICS推進協議会」発足
- 1994年9月 - 「道路交通情報通信システムセンター設立準備室」をVICS推進協議会内に設置
- 1995年6月 - 「VICSセンター(仮称)」設立発起人会開催
- 1995年7月1日 - 「財団法人道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)」設立
- 1995年11月 - 第2回ITS世界会議(横浜)でVICS搭載車の試乗会を実施、VICSが実用段階にあることを示す
- 1996年4月23日 - 東京・神奈川・埼玉・千葉4地区で情報提供サービス開始
- 1996年12月17日 - 大阪地区で情報提供サービス開始
- 1997年4月24日 - 愛知地区で情報提供サービス開始
- 1997年11月25日 - 京都地区で情報提供サービス開始
- 1997年12月 - 第3回地球温暖化防止国際会議(京都)に際し、VICS搭載車の試乗会を実施
- 1998年1月12日 - 長野地区で情報提供サービス開始
- 1998年2月 - 長野オリンピック期間中に特別対応
- 1998年3月31日 - 兵庫地区で情報提供サービス開始
- 1999年4月 - 福岡地区(6日)、広島地区(22日)で情報提供サービス開始
- 1999年5月 - 宮城地区(7日)、札幌地区(20日)で情報提供サービス開始
- 1999年11月30日 - 静岡地区で情報提供サービス開始
- 1999年12月21日 - 群馬地区で情報提供サービス開始
- 2000年3月7日 - 岡山地区で情報提供サービス開始
- 2000年4月7日 - 福島地区で情報提供サービス開始
- 2000年5月11日 - 沖縄地区で情報提供サービス開始
- 2000年6月9日 - 宮崎地区で情報提供サービス開始
- 2000年7月 - 岐阜地区(14日)、三重地区(22日)で情報提供サービス開始
- 2000年7月 - 沖縄サミットに際し、VICS情報のパネル展示を実施
- 2000年8月10日 - 山口地区で情報提供サービス開始
- 2000年9月22日 - 茨城地区で情報提供サービス開始
- 2000年12月14日 - 旭川地区で情報提供サービス開始
- 2001年1月19日 - 和歌山地区で情報提供サービス開始
- 2001年2月16日 - 滋賀地区で情報提供サービス開始
- 2001年3月 - 奈良地区(9日)、栃木地区(22日)で情報提供サービス開始
- 2001年5月3日 - 山梨地区で情報提供サービス開始
- 2001年6月18日 - 新潟地区で情報提供サービス開始
- 2001年7月19日 - 石川地区で情報提供サービス開始
- 2001年8月6日 - 函館地区で情報提供サービス開始
- 2001年9月 - 熊本地区(7日)、大分地区(21日)で情報提供サービス開始
- 2001年10月19日 - 室蘭地区で情報提供サービス開始
- 2001年11月16日 - 香川地区で情報提供サービス開始
- 2001年12月7日 - 愛媛地区で情報提供サービス開始
- 2002年1月13日 - 佐賀地区で情報提供サービス開始
- 2002年2月22日 - 長崎地区で情報提供サービス開始
- 2002年3月1日 - 鹿児島地区で情報提供サービス開始
- 2002年5月17日 - 徳島地区で情報提供サービス開始
- 2002年6月27日 - 高知地区で情報提供サービス開始
- 2002年7月17日 - 福井地区で情報提供サービス開始
- 2002年8月21日 - 富山地区で情報提供サービス開始
- 2002年9月19日 - 山形地区で情報提供サービス開始
- 2002年10月4日 - 秋田地区で情報提供サービス開始
- 2002年11月22日 - 青森地区で情報提供サービス開始
- 2002年12月13日 - 島根地区で情報提供サービス開始
- 2003年1月24日 - 鳥取地区で情報提供サービス開始
- 2003年2月 - 岩手地区(14日)、釧路・帯広両地区(26日)で情報提供サービス開始
- 2004年2月13日 - 北見地区で情報提供サービス開始
[編集] VICSの問題点
- FM多重は都道府県単位の情報となっているため、カーナビゲーションで県境を越えたルートを検索 (例:東京→横浜) すると目的地付近の渋滞情報が反映されないことが多い。そのためホンダの純正カーナビ「Honda インターナビ」やパイオニアの一部機種では携帯電話を利用したオンデマンドVICSのサービスを始めている。
- FM多重の中には、カーオーディオのFM受信機能を使用しているものがあり、オーディオのスイッチがOFFになっているときや、ラジオ(民放)を聞いているときは、受信できなくなる。
- 当たり前だが、渋滞が起こってからの情報となるため、その地点に到達した時には、既に渋滞が解消しているケースもある。また、路上駐車や駐車場待ちの列など、車が列になって道路上に停車していることに対し渋滞と判断をするため、実際には渋滞していないケースもあるので、情報には十分に注意する必要がある。