連合赤軍
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連合赤軍(れんごうせきぐん)は、1971年から1972年にかけて活動した日本の新左翼武装戦闘組織。
連合赤軍事件として、榛名山で山岳ベース事件を起こし、逮捕を逃れた者らがあさま山荘事件を起こした。
結成時のメンバー29名の内、12人が殺害され、「超法規的措置」で釈放された坂東国男を除く16人は判決が確定、最高幹部の森恒夫は拘置所で自殺した。
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[編集] 連合赤軍の発足
1971年、学生運動が下火になり、大菩薩峠事件やよど号ハイジャック事件などで最高幹部クラスの逮捕などで弱体化していた共産主義者同盟赤軍派の軍事組織である中央軍の残党と、やや旧左翼的体質を持つ日本共産党革命左派神奈川県委員会の軍事組織である人民革命軍が統合し、統一された「赤軍」(統一赤軍)として7月15日付で生まれた。
赤軍派幹部の一人である森恒夫は当初から党の統一を志向していたが、獄中の日本共産党革命左派神奈川県委員会議長である川島豪らの強い反対で連合赤軍に改称された。
1971年12月20日ごろに新党結成が確認され、翌1972年1月3日、独自の中央委員会(CCと略される。委員長 森恒夫、副委員長 永田洋子、書記長 坂口弘)が結成された。
[編集] 連合赤軍事件
1971年12月31日以降、連合赤軍は、山岳ベース事件とあさま山荘事件の二つの重大事件を起こす。これらは連合赤軍事件と呼ばれる。
山岳ベース事件は、あさま山荘事件などで逮捕された者らの自供により明らかになった大量殺人事件である。これは、総括(詳細は後述)と称して連合赤軍内部で粛清が行われたもので、集団リンチを加えて12名を殺害、死体を遺棄したもの。
あさま山荘事件は、警察の捜査網から逃れるために山中に潜伏していた連合赤軍メンバーが起こした篭城事件で、銃器で武装した若者らは9日間にわたり警察とにらみ合った。この模様はテレビで中継され、社会に強い衝撃を与えた。
[編集] 「総括」とリンチ
連合赤軍は、しばしば総括(そうかつ)と称して各人に政治的な反省を迫ることがあった。これはやがて、本人の自覚を助けるとして、周囲の者が総括をしている者に対し、意見や批判を行うものに発展した。
連合赤軍においてはこれが破綻し、リーダーの森恒夫らは総括に暴力を用いるようになった。一人の人間に対し、仲間全員が暴力を用いて厳しい反省を強要するようになり、実質的なリンチと粛清が展開されるようになった。被害者も政治的指向から激しい暴力を伴うこの行為に必ずしも抵抗せず、暴力はさらに激しくなって死に至ったものとみられる。
リンチは非常に凄惨で、激しい殴打を伴った。女性は逃亡を防ぐためとして髪を切られていたし、被害者らの死因は殴打による内臓破裂や、氷点下の屋外にさらされたための凍死であった。アイスピックやナイフで刺された後に絞殺された者もいる。遺体はすべて全裸で土中に埋められ、証拠隠滅が図られた。
[編集] 連合赤軍服務規律
[編集] 第一章 三大規律
- 党員は綱領と規約を承認し、「党派斗争」を行う能力をもつ。
- 党員は自力で組織を建設する能力をもつ。
- 党員は技術を扱う能力をもち、政治K察に対し攻撃的に組織を防衛する。
[編集] 第二章 六大原則
- 党は自立した革命家の集団××である。
- 指導、被指導は自立した革命家相互の分業関係である。
- 家族、財政は党に一元化される。×××よって行われる。
- 自由な討論の保障と行動は完全に指導によること。
- 党の財政を作る能力を持つこと。
- 党決定、規約に違反した場合、最高、死に到る処罰を受ける。
(中略)
[編集] 第十四章 彼女
- 彼女の開発・製造・運搬・保管は自力更生を原則とする。
- 一切の彼女は部長の所属とし、通常各課に貸与されているものとする。
- 保管は居住と分離して行い、いついかなる時にも商×体制へ直に移行できる様にする。
- 防衛的彼女は家具の一部として改良し居住地に保管しておく。
- 彼女開発に関する基礎学習、訓練実験を課の責任で行い、蓄積する。
- 材料、製品、兵站等を開発し蓄積する。
- その成果は質、量、所在などは部長に報告し、徴発に応じる。
(中略)
[編集] 第十七章
- 処罰の系列は、指揮系列と同じである。各隊内で小ブル、ルンプロ思想と斗争せよ。
- 処罰の実施は、出来る限り隊内で解決し、上級機関の承認を得て行う。不服のあるばあい、上級機関に提訴することができる。
- 処罰は、ある種の政治責任であり、処罰されたら革命から逃亡するという思想と日々、闘え。
- 逆に処罰は、反革命に転じた場合を除いて絶えず党に復帰するべく、党を支持する層として、党の成熟度に応じた政治指ドを行え。
- 処罰は、三段階ある。イ、自己点検・自己総括 ロ、権利停止 ハ、除名 (除名においては、死、党外放逐がある。他は、格下げ処分を行う。イ、ロにおいては軍内教育、除隊処分、他機関での教育を行う)
- 処罰は、事件の起こり次第、速やかに規律に照らして行う。上級の政治指ドや路線に責任を転稼し曖昧にすることは厳禁。 それ自身も処罰の対象。
- 再び正規の隊員として採用する場合は、隊内で資格審査をし、上級機関に承認をうること
[編集] 連合赤軍に関連した作品
- 小説
- 立松和平『光の雨』新潮社 ISBN 4103336072 1998年
- 高木彬光『神曲地獄篇』角川書店 ISBN 4041338425 1978年
- 映画
- 『光の雨』 高橋伴明監督、2001年。
- 『突入せよ! あさま山荘事件』原田眞人監督、2002年
[編集] 参考文献
- 永田洋子『獄中からの手紙』彩流社 ISBN 4-88202-261-3 1993年
- 坂口弘『あさま山荘1972(上)』彩流社 ISBN 4-88202-252-4 1993年
- 坂口弘『あさま山荘1972(下)』彩流社 ISBN 4-88202-253-2 1993年
- 坂口弘『続 あさま山荘1972』彩流社 ISBN 4-88202-338-5 1995年
- 坂東国男『永田洋子さんへの手紙』彩流社 ISBN 4-88202-060-2 1984年
- 植垣康博『連合赤軍27年目の証言』彩流社 ISBN 4-88202-697-X 2001年
- 植垣康博『兵士たちの連合赤軍』彩流社 ISBN 4-88202-699-6 2001年(新装版)
- 大泉康夫 『氷の城 連合赤軍事件・吉野雅邦ノート』 新潮社 ISBN 4-10-422401-4 1998年